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2026年3月6日金曜日

司書教諭とのティーム・ティーチングで、自分に合う本を選ぶことから

 関西大倉中学校高等学校・堀内誠太郎先生の実践(WW/RW便り: 堀内先生の実践)紹介の第4弾です。

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 「読書家の時間」を始めた当初は一人で35〜40名の生徒を相手にしていましたが、なかなか十分には見切れませんでした。ミニレッスンのあいだは問題ないのですが、「読み浸る時間」に入ると、読む本を忘れてきた生徒や手に取った本に集中できない生徒が本棚に集まっておしゃべりをするのです。一人で授業をしていると、それらの生徒への対応に追われ、座って本を読んでいる生徒にはほとんどカンファランスができないという状況でした。生徒にはパフォーマンス課題としてブックトークをしたりレポートを書いたりしてもらうのですが、カンファランスができればもっと読む力を引き上げられるのに、と悔しい思いをしていました。

 そうした状況を学校に訴え、2024年度から常勤の司書教諭を採用してもらいました。今は国語科教諭と司書教諭の2人体制で「読書家の時間」にあたっています。国語科教諭は生徒の読む力を引き上げること、司書教諭は生徒が自分に合う本と出会えるようにすることをそれぞれミッションとして役割分担をしています。具体的には、司書教諭に以下のような仕事をお願いしています。

  • 中高生に適したレベル、内容の本(0類から9類まで)を教室内に並べること

  • ミニレッスンでブックトークをすること

  • 本を持ってきていない生徒、読む本を替えたい生徒が自分に合う本と出会えるようにサポートすること

  • (手が空いたら)生徒が読書記録をきちんとつけられているかを確認すること

  • 国語科通信「こといろ」に本の紹介記事を載せること

 当然ながら、ティーム・ティーチングの体制が整ったことで、「読み浸る時間」の集中度が高まりましたし、生徒の読書量も増えました。課題として、主な授業担当者が担うべき仕事まで司書教諭に甘えてしまわないように注意が必要だと感じています。


 このような環境で、私たちは数人の国語科教諭と司書教諭がチームになって、中学1・2年生の2年間、「読書家の時間」を進めています。なお、人数規模については、1クラス35名、今年度は1年生が5クラスで175名、2年生が4クラスで140名、計315名です。各学期の目標は以下の通りです。


1年生1学期 自分に合う本を選ぶ

   2学期 小説を読み深める①「描写」「人物像」

   3学期 ノンフィクションに親しむ

2年生1学期 小説を読み深める②「語り手」「主題」

   2学期 複数のノンフィクションをつなげて読む

   3学期 読み手としての「私」を語る


1年生1学期 自分に合う本を選ぶ

 これから「読書家の時間」が始まります。まずは私たち教員が自己紹介として「読み手としての私」を語ります。1年生1学期の目標は、「クラス全員が、自分で選んだ本を少なくとも一冊読了して、読書記録をつける 」ことです。ミニレッスンで以下の内容を行いながら、読書家としての習慣を身についていってもらいます。

Lesson.1 図書館を探検しよう 

 まずは学びの場となる図書館への親しみを深めてもらうべく、本探しゲームを行います。司書教諭が作成したミッションカードに書かれた本を広い図書館全域から制限時間内に探し出すゲームです。本を探すことで、小説は作家の名前順に並んでいること、ノンフィクションは請求番号の順に並んでいること、単行本と文庫本の違いなどについて学ぶことができます。

 ちなみに、文化祭の日には図書委員がこれと似た「図書館脱出ゲーム(★1)」を実施しており盛況を博しています。

Lesson .2 読みたい本を見つけよう 

 クラス全員が自分に合う本を探すに際して、あてもなく一斉に本棚の前に群がってもなかなか選べるものではありません。今回は博報堂が主催する読書推せん文コンクール「お気に入りの一冊をあなたへ」(https://www.hakuhodofoundation.or.jp/okiniiri/library/)のライブラリーから自分が読みたいと思える本を5冊以上見つけ、授業冊子の「読みたい本リスト」に記入してもらいます。書けた生徒から、今見つけた読みたい本を探しに行きます。

Lesson .3 チェックインしてゾーンに入ってみよう 

 前回の授業で読みたい本リストに加えた本の中から一冊選び、授業冊子にあるチェックイン表に日付、書名、開始ページの3点を書いてもらいます。教員が確認しやすいように、チェックイン表のページを開いたままにしておくように指示します。

 生徒はこ静寂の中で20〜30分間黙々と読むということを経験します。「シーン」という音が聞こえてきそうなほどの静寂の中で、作者や主人公との豊かなおしゃべりを楽しむということを経験してもらいます。

Lesson.4 読書記録をつけてみよう 

 チェックインと並んで習慣化してほしいのが、読書記録をつけることです。この日のミニレッスンで教科書教材「デューク」を読み、Googleスプレッドシートで読書記録をつけてもらいます。読書記録につける項目のうち、ジャンルと評価は生徒が自分で判断することになります。「デューク」のジャンルを「家族小説」「ファンタジー小説」としている生徒に「どうやってそう判断したの?」と聞いたり、「8」「9」などの高い評価をつけている生徒に「どこがおもしろかった?」と聞いたりしてクラスに共有することで読みが深まります。

 ミニレッスンの後は、読み浸る時間に入ります。前回学んだチェックインを実践してもらいます。

Lesson.5 「読書家の時間」のルールを確認しよう 

 授業冊子にある「読書家の皆さんに期待すること」と「読書家の時間のルール」を3〜4人のグループ内で一つずつ読み上げ、「一番守りにくいもの」についてあえて話し合ってもらいます。その後クラス全体で「守りにくいもの」を共有し、不安や不満を表に出してもらった上で、あらためてそのルールを守ることの意義を説明します。

 授業の目標やルールというのは、本来なら最初のガイダンスで扱うべき内容ですが、あえて後ろに持ってきています。「読書家の時間」のサイクルを経験した後の方がイメージしやすいからです。(★2)

Lesson.6 ジャンルを知ろう(小説とは何か) 

小説とノンフィクションの違いを理解できていない生徒は意外と少なくありません。そこを確認するところから始めます。フィクションのジャンルは、青春小説、恋愛小説、家族小説、ミステリー小説、SF/ファンタジー小説、サスペンス/ホラー小説、歴史小説、近代小説、古典/伝承/詩歌、その他の小説、という分け方にしました。それぞれのジャンルにどんな作品があるかを紹介します。

Lesson.7 ジャンルを知ろう(ノンフィクションとは何か) 

ノンフィクションのジャンル分けは十進分類に基づいて、請求番号を見れば誰でもわかるようにしています。 こちらも各ジャンルにどんな本があるかをミニレッスンで簡単に紹介していきます。小説に比べてノンフィクションは「むずかしそう」「おもしろくなさそう」と敬遠されがちですが、表紙が見える状態にして紹介すると興味を持つ生徒は少なくありません。前回の小説と合わせて一通りのジャンルについて説明し終えたので、これで生徒たちが読み終わった本を読書記録に記入する準備が整いました。読了または中断で本を手放すときは必ず読書記録をつけるということを習慣づけていきます。

Lesson.8 書き出しの一行を味わおう

本を選ぶとき、「なんとなく」「タイトルが気になったから」「表紙がオシャレだったから」という理由で選ぶ生徒が少なくありません。それらは本を手に取るひとつのきっかけではありますが、それだけだと自分に合う本をなかなか選べずにゾーンに入れない場合もあります。そこで、ミニレッスンで自分に合う本を選ぶための材料をいくつか紹介します。帯や裏表紙に書かれた紹介文やあらすじを参考にすること、ページをパラパラとめくって分量や難しさを確かめること、そして、書き出しの一行を読んでみることなどです。書き出しの一行については、ウェブサイト「Kakidashi」(http://kakidashi.com/)からおもしろそうだと思う本を見つけるというワークも行います。この日の「共有の時間」には、今日自分が読んだ本の書き出しの一行を抜き出してロイロノートで提出してもらいます。みんなの回答を共有して、書き出しの一行を読んで最も読みたくなった本を授業冊子の「読みたい本リスト」に加えてもらいます。

Lesson.9 オススメの本を紹介しよう 

自分の選んだ本を1冊読了することができたら、それを紹介してもらいます。本を読むことが自分ひとりの中で完結するのではなく、読書家同士がつながることによって読みが深まったり新しい本に出会えたりするのだということを経験してもらうのがねらいです。授業内の「共有の時間」に紹介しあうことに加えて、読書推せん文コンクール「お気に入りの一冊をあなたへ」に応募する文章を執筆してもらいます。このコンクールは字数制限が250~300字と短いところが魅力です。読み書きが苦手な生徒でも挑戦できる分量なので、学年全体で取り組むにはうってつけです。また、推薦する相手を明確にし、特定の読み手に対して文章を書くという形式も特徴的です。生徒たちは「けんかをして気まずくなった友達」「去年亡くなったおじいちゃん」「織田信長」「10年後の自分」などに向けて本をオススメしていました。


 1年生1学期は、このようにスモールステップを踏みながら読書家としての習慣を身につけ、本を読むことの楽しさを体感してもらいます。


★1  図書館脱出ゲームは文化祭中の図書館イベントで、図書委員が運営しています。指示書に書かれたヒントに沿っていろんな本の中から文字を一つずつ集めていくと、ある本のタイトルになります。本のタイトルを当てられたら脱出成功です。参加者には図書委員が手作りした栞をプレゼントしました。2025年度の文化祭では2日間で900名近くが来館して賑わいました。

★2 生徒への期待とルールについては、『イン・ザ・ミドル』の92〜97ページを参照ください。

2026年2月6日金曜日

「読書家の時間」の環境

 関西大倉中学校高等学校・堀内誠太郎先生の実践(WW/RW便り: 堀内先生の実践)紹介の第3弾です。

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 本稿では、本校における「読書家の時間」をどのような環境で進めているかをまとめます。授業を行う空間である教室の環境、生徒の学びを支える授業冊子と読書記録という道具、そして人的環境として司書教諭との連携、以上3点について記します。

教室環境

 本校では2022年に新たな大規模図書館が完成しました。この図書館で「読書家の時間」をやり始めた当初は、図書館のどこから本を探してきてもいいし、どこで読んでいてもいい、という形にしました。しかし、これは失敗でした。5万冊近くが並んでいる本棚から自分に合った1冊を選ぶというのは生徒にとって難しすぎました。また、教師が図書館全体を見渡すことができないので、本を読むのに消極的な生徒が教師の死角に集まっておしゃべりに興じるようになり、私は図書館のあちこちでモグラたたきをしているような状態になりました。

 そこで、本棚も読む場所も限定しました。図書館内部に大きめの教室があるのですが、今は本を選ぶのも読むのもその教室内で完結する形にしています。教室内の本棚に、「読書家の時間」に適した本を集めて並べました。学期によって小説限定にしたりノンフィクション限定にしたりするので、それに合わせて教室内に並べる本も入れ替えています。ミニレッスンの内容に合わせて「『平家物語』特集」「『子どもの権利』特集」などのコーナーも特設しています。また、昨年度の生徒がブックトークした本を並べたり、書いたレポートを展示したりして、先輩から後輩へと学びやオススメ本が伝わるようにデザインしています。

 机と椅子は全て前向きに並べて、静寂の中で読み浸る時間を過ごせることを優先しています。生徒がよりリラックスした姿勢でゾーンに入れるように、教室内に畳を敷いたりソファを置いたりするかは、今後の検討課題です。

授業冊子(紙)と読書記録(Googleスプレッドシート)

 「読書家の時間」をやっていく中で、日常的に書かせたいのが「チェックイン」と「読書記録」です。「チェックイン」は、各生徒のその日の活動を教師が把握するため、「読書記録」は生徒自身が自分の読書傾向や読書量を把握するために書きます。この2つを生徒はよく混同して、こちらが「チェックインして」と指示したら読書記録をつけ始める生徒がいるので、たびたび注意する必要があります。

 この2つをどういう形で書いてもらうかについてはかなり慎重に検討しました。いちいち書くという行為を面倒くさく感じる生徒は少なくありません。できるだけ生徒にとって負担が少なく、かつ我々がチェックしやすい形を模索した結果、紙の授業冊子(紙)と読書記録(Googleスプレッドシート)の2つを使う形にしました。

 まず、授業冊子の中には、次のページがあります。時にはノートに書かせたいこともあるのですが、冊子の他にノートも持たせるのは煩雑なので、冊子の中にノートのページもできるだけ多く入れて、1冊で完結するようにしました。

  • 読書家の皆さんに期待すること

  • 「読書家の時間」のルール

  • ジャンル一覧表

  • チェックイン表(4ページ分)

  • 読みたい本リスト

  • ノートのページ(20ページ分)

  • 各学期の自己評価シートを貼るページ

冊子の表紙には10,000ページを目指してキリ番を達成したらシールを貼る場所を作っています。10,000ページ達成者にはキラキラの大きなステッカーを貼って祝福します。この冊子は毎回授業終わりに回収し、次の授業の始めに返却します。生徒は「読書家の時間」に参加するためにホームルーム教室から図書館へと移動してくるので、ホームルーム教室に置き忘れてくるリスクを避けるためです。この冊子の中で最もよく使用するのはチェックイン表ですが、チェックインをするのは授業のときだけなので、生徒が冊子を教室に持って帰らなくても特に困ることはありません。こちらがチェックしやすいように、チェックインしたらそのページを開いたままにして「読み浸る時間」に入るようにしてもらっています。私は彼らのチェックイン表を見ながら「前回読んでいた本はどうしたの?」「読書記録はつけた? 評価は10段階でいうといくつ?」などと話しかけてカンファランスしていきます。


 もう一つの書くべきもの、読書記録については紙ではなくGoogleスプレッドシートを使用しています。それには次のようなメリットがあります。

  • 生徒各自の端末からアクセスできるので、授業内でも授業外でもどこでも記入できる(特に長期休暇中の読書に最適)

  • 本のジャンルはプルダウンで選べるようにしているので、生徒にとってわかりやすい

  • 累計ページ数は数式によって割り出されるので、読んだページ数を足し算することに時間を取られない

  • 教師もいつでも生徒の読書記録を見ることができる

読書記録を紙に書いてもらっていたときは、面倒くさくて書きたがらない生徒がそれなりにいましたが、スプレッドシートを使うようになってからは全ての生徒が(時間さえ取れば)読書記録をつけるようになりました。

 読書記録は生徒が自身の読書量・読書傾向を把握するためのものですが、これを見ることで教師も、何冊読んでも評価がすべて「8(同じ数字)」の生徒、ジャンルを理解していない生徒、中断ばかりで1冊も読了できていない生徒など、声をかけるべき生徒を見つけることができます。



2025年12月5日金曜日

「読み手としての私」を語る

  関西大倉中学校高等学校・堀内誠太郎先生の実践紹介の第2弾です。

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 2024年度の3学期、2年間の「読書家の時間」の集大成として、2年生には「『読み手としての私』を語る」と題したレポートに取り組んでもらいました。レポートは以下の4章から成ります。


第1章 「読書家の時間」と出会う前(つまり小学生のころ)の自分がどんな読み手だったか

第2章 読み手としての自分を成長させてくれた本と、成長したポイント(1冊目)

第3章 読み手としての自分を成長させてくれた本と、成長したポイント(2冊目)

第4章 今後「自立した読み手」として読書にどんな価値を見出し、どんな読書生活を送っていきたいか


 このレポートの中で、生徒たちは次のような成長ポイントを挙げていました。


成長ポイント①〈読むことの価値に気づいた〉

  • 本を読むことで、人の気持ちを理解できるようになる、と気づいた

  • 本を読むことで、知らなかった世界に出会える、と気づいた

  • 本を読むことで、前向きな考え方ができるようになる、と気づいた


成長ポイント②〈読み方が上手になった〉

  • 人物同士の関係を整理して読めるようになった

  • 場面の展開についていけるようになった

  • 描写から想像して読めるようになった

  • タイトルの意味を考察できるようになった

  • 他の本に書かれている内容と比較しながら読めるようになった


成長ポイント③〈選書や読書習慣が良くなった〉

  • ノンフィクションも読むようになった

  • 長編小説を読み切れるようになった

  • 授業以外でも読むようになった

  • 自分で本屋に行くようになった

  • 友達が薦めてくれた本を読むようになった


 ある生徒のレポート全文を掲載します。


第1章 小学生時代の「読み手としての私」

 小学生時代、私は本に対していいイメージがありませんでした。読書は時間を取らないといけないので、面倒臭く、本を読むことのメリットは分かりませんでした。読むとしても、映画のノベライズ本ぐらいでした。

第2章 「読み手としての私」の成長(1冊目)

 知念実希人『祈りのカルテ』

 この本で私は知らないことを知る楽しさを知り、本を読む量が今までよりも十倍近く増えたきっかけになりました。例えば、この本は医療系のフィクションで病名が出てくるのですが、その中で「醜形恐怖症」という病気が挙げられています。「醜形恐怖症」は、日常に支障が出てしまう精神病の一つです。このような精神病は見た目だけの判断は難しいということを知りました。だから、知らず知らずのうちに見た目だけで判断してしまう私たちはもっと発言に気をつけるべきだと学びました。このように、知らないことを知る楽しさを知ったことで、今までよりも読む本やジャンルを増やすことができました。

第3章 「読み手としての私」の成長(3冊目)

 湊かなえ『母性』

 この本で、読んだ本について友達と話せるようになりました。この本は、娘を愛することができない母親と、母からの愛を求めて、愛されたいと願う娘のそれぞれの視点が描かれている物語です。友達とは、娘の視点のストーリーで共感し合うことができました。例えば、「無償の愛」についてです。「自分たちってやっぱり無償の愛が必要だよね」「愛がなかったら存在する意味を感じなくなっちゃうよね」と意見交換し合うことができました。このように、本は話すきっかけになることに気づきました。本さえあれば、相手の好みや人柄が分かるので、小学生の時には分からなかった、本を読むことのメリットを、この本で感じることができました。

第4章 「自立した読み手」として

 本を読むことの価値は、視野や考え方を広げることにあると思います。『祈りのカルテ 再会のセラピー』で知らないことを知る楽しさを知ったり、『母性』で友達と読んだ本について話せるようになったりしたことで、読む本が増え、その分作者の視点や考え方に触れることが多かったので、小学生のころの私と比べて、私自身の世界観が豊かになったと感じることができました。今後の「読むこと」との向き合い方は、今までのように楽しむために本を読むだけでなく、勉強するために本を読めるようになりたいので、本を買うときの選択肢にノンフィクションも入れられるようにしたいです。


 本を読むのが苦手な生徒も少なからずいましたが、全員がそれぞれに読むことの価値を見出し、自分にとって価値ある2冊の本を紹介してくれました。生徒たちの書いてくれたレポートは、日々迷いながら「読書家の時間」を実践している私の背中を力強く押してくれました。このレポートは下級生が読めるように図書館に掲示しています。そのようにして、先輩から後輩へ、読むことの価値と魅力的な本が伝えられていく文化を育んでいきたいと思っています。


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 生徒たちの成長ポイントと関連して、『「読む力」はこうしてつける』の第1章「読むとは」では、

   1 読むことが可能にしてくれることは?

   2 読むことを通じて身につけさせたいことは?

   3 そもそも、なぜ読むの?

   4 あなたによって「読む」とは?

の4つの切り口で、読むことを教える立場にある先生たちの考えをまとめていますのでご覧ください。

2025年11月14日金曜日

「作家の時間」実践記録:かんくら文学賞

  大阪府にある中高一貫校、関西大倉中学校高等学校で国語を教えている堀内誠太郎先生が実践紹介をしてくれました。かんくらでは中学1・2年生を対象に「作家の時間」「読書家の時間」を実践しているそうです。堀内先生は今年度は高2学年の所属ですが、中学の「読書家の時間」も4クラス受け持っています。

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 本校では「作家の時間」は文章のジャンルを指定する形で進めています。1学期は詩と小説、2学期はエッセイと弁論大会の原稿、そして3学期は集大成として「かんくら文学賞」に応募する作品の執筆です。

 「かんくら文学賞」とは、我々が創設した校内の文学コンクールです。出版の機会を作り出し、生徒たちが書き手として(読み手として)他者とつながることを目的として設けました。この文学賞には「詩歌」「小説」「エッセイ」の3部門があり、生徒はどの部門の作品を書くかを選ぶことができます。多くの生徒が意欲的に取り組んでいますが、「短くて楽そうだから」という理由で詩歌部門に流れてしまう生徒が一定数いるのは毎年悩みの種です。3学期をまるまる使って俳句を一つ書いただけで終わってしまう生徒もいます。次年度に向けて、「詩歌の場合は3学期の間に5つ以上書く」というような条件をつけることも検討しています。

 作品に与えられる賞は作家大賞、編集者大賞、先輩大賞、天川賞の4種類です。作家大賞は、同じ作家仲間である中学1・2年生の生徒の投票により選出されます。この賞があることが、互いの作品を共有する役割を果たしています。生徒たちには選んだ作品に対するファンレターを書いてもらい、それらは全て作品と併せて成果冊子に載せます。

編集者大賞は、「作家の時間」を担当する数名の教員が選考会を開いて選出します。中学生からはなかなか票が集まらないけれど大人の目から見て素晴らしい作品を評価するためのものです。教員は選評を書き、それも成果冊子に掲載されます。

先輩大賞は、「作家の時間」を修了した中学3年生の有志が選考会を開いて選出します。本校では中学1~2年生の2年間しか「作家の時間」は行っていません。執筆から遠ざかってしまう3年生に選考に加わってもらうことで、「作家の時間」での学びを継続してもらいたいという狙いがあります。選考会で議論することで、3年生の読む力を向上させたいというのも狙いの一つです。3年生にも選評を書いてもらい、これも成果冊子に掲載します。

「天川賞」はプロの小説家である天川栄人先生が選ぶ賞です。本校で文章教室を開いていただいたときにお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。プロの作家さんが選考に加わってくださるということで、生徒たちの意欲も俄然高まります。天川先生はすべてのノミネート作品に対して良いところを見つけてコメントをくださるので、生徒たちの大きな励みになっています。

応募締め切りの後、教員たちは自分の担当クラスから「詩歌」「小説」「エッセイ」部門それぞれのノミネート作品を1作ずつ選び出します。まずは「作家大賞」、「先輩大賞」、「編集者大賞」の順に選考していき、一人でも多くの生徒に受賞の喜びを味わってもらうため、各賞がそれぞれ別の作品に与えられるようにしています。(ただし天川賞だけは別で、他の賞と重なってもいいことにしています。)

受賞作品とノミネート作品を併せて製本します。製本が完成する頃には彼らは次の学年に進んでおり、新たな作家となる新入生が入ってきています。新入生に先輩たちの書いた受賞作品を読んでもらい、ファンレターを書いてもらいます。「先輩大賞」の存在と、新入生からのファンレターによって、この文学賞が縦のつながりを生み出す装置になるように工夫しています。

今年度の実施に向けて今検討しているのは、テーマを設けるか否かです。今は特にテーマを設けずどんな内容を書いてもいいことにしていますが、あまりに自由すぎると書くことを見つけにくい生徒もいるように感じます。「道」「手」「生」といったような、多義的な漢字一字で毎年テーマを決めるのもいいかもしれません。書きたいことがある生徒の邪魔にはならず、書きたいことが見つからない生徒にとっかかりを与えてくれるような、そんなテーマを模索しています。