2012年5月25日金曜日
本を借り出した場所に返却できるようにする~学習者に問題を投げかけて一緒に考える~
新学期の初めには、新学期の初めに適した本の配置があると思います。
そして5月も下旬に近づいてくると、新たなユニットの学びに併せて、本の配置を一部変えておられる先生もいらっしゃるかもしれません。
いずれにせよ、「借りた本を、借り出した場所に返却する」ことを、学習者がしないと、先生が授業に併せて一生懸命考えた本の配置も、台無しです。
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私は、RWを始めてしばらくしてから、本の一部を、著者別、テーマ別、難易度別などに分けて、透明のファイルボックスに入れるようになりました。
学習者をイメージしつつ、私なりに考えて分類しているのですが、本を借り出したファイルボックスに、本を返却するシステムが、長い間、うまく作れないままでした。
一部の本に色別のシールを貼って、分類し、ファイルボックスにも色分けしたシールを貼っておいたりもしましたが、結局、違うボックスに本が返却されたりして、効果はいまひとつです。
今学期は、自分の名前の書いた厚紙を用意して、借りた場所にその厚紙を置いてもらうことにしました。
ところが、本の間に厚紙が入ってしまって、その厚紙をさがすのに時間がかかっています。
「自分の厚紙が見つからない」と学習者は困ったり、イライラしたりすることもあります。さがす時間ももったいないです。
簡単に見つけられるように、もっと大きな厚紙を用意するしかないのか、あるいは、このシステムも駄目なので、やめたほうがいいかとも思い始めていました。
この前、「さがす時間がもったいないよね」と愚痴っぽく言ってしまったのですが、それに対して、一人の学習者が、「それぞれのファイルボックスに、クリアー・フォルダを入れておいて、厚紙はそこにまとめていれたらいい」と言ってくれました。
たしかに、こうすれば、本の間に入ってしまった厚紙をさがす必要はありません。私には目から鱗でした。
そして、この学習者は、「もっといいやり方があるのに」と、少し前から思っていたけど、私がそれを言える雰囲気をつくっていなかったのだろうとも思いました。
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上のエピソードから、「学習者に問題を投げかけて、一緒に考え、一緒につくっていく」ことを、私がしていないことにも気付きました。
前にこのRWWW便りも時々書いているShinlearnさんから、以下のようなコメントをいただいたことがあります。
WWやRWの枠組みがあると、基本的には子どもたちがその枠組みの中で
主体的に考え、話し合い、教え合い、助け合い、そして判断し、行動
する時間を最大限とっています。
特に、「ひたすら書く/読む」時間はそうですが、これを続けている
と、おそらく徐々にミニ・レッスンや共有の時間でも子どもたちが
いろいろとやり方を提案してくるようになりそうです。
「やらされている」というよりも、「いっしょに授業を作り出して
いる」感覚が強いので、よりいいものにするために提案をすること
が当たり前とさえ思えるのではないかと思います。
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私は、いつも試行錯誤で、なかなかうまくいかないときもあります。でも、少なくとも、目指したい方向・原則が自分で抑えられれば、その方向で、問題解決方法を考えたいと思います。
実はRWではない他のクラスでも、今週、ワークシートの管理など、ちょっと煩雑になってきて、時間がもったいないと思うことが出てきました。
今回、いい解決を学習者から教えてもらったことで、他の問題についても、目指したい方向・原則をもう一度考えてから、アプローチしようと思い始めています。
2012年5月18日金曜日
付箋の使い方のミニレッスン
前年度、4年生の教室で、同じ本を選んだ数人ずつのグループを作ってブッククラブを進めていた時のことです。ブッククラブは、グループで決まった範囲を話し合うこと、それを事前に予読する部分で構成されています。
子どもたちがブッククラブで友だちと話し合ってみたいなと思ったところを読み直して、テキストに基づいて話し合いが深まるようにするというメインのねらいから、ミニレッスンで付箋の使い方について深めました。1回目のミニレッスンでは本を読んでいる時に出てくる疑問や自分の考えを付箋に書いてみようという内容でした。今回はStill Learning to Read(まだ読むのを学んでいる)という本に載っている付箋の使い方を元に、様々な付箋の使い方をミニレッスンで扱いました。以下の流れで授業をしてみました。40分の授業として時間配分をしています。前年度の小学校は一コマの時間が40分でした。
① ミニレッスン 5分
様々な付箋の使い方を教えました。
Still Learning to Read(115ページ)にはどのように優れた読み手が付箋を使うのかということで以下のようにあります。
・疑問解決の手がかり/糸口に印をする。
・新しい登場人物に印をつける。
・最も重要な登場人物の記述や態度、考え方・判断に印をつける。
・おもしろいところを付箋にメモする。
・設定(時・場所・登場人物)が大きく変わるページに印をつける。
・目標設定
・お話したいところに印をつける。
・自分の思考の証拠に印.をつける。
・重要だと考えたところに印をつける。
・よく分からなかったテキストのあるところに印をつける。
これらをKP(紙芝居プレゼンテーション)法を使いモデルを示しながら、付箋には様々な使い方があることを子どもたちに提示しました。KP法はB4などの紙をパワーポイントのスライドのように使い、黒板やホワイトボードにそのスライドとなる紙を貼りながら説明するという方法です。
目標設定に関してはブッククラブで4回に分けて読んでいるので、それぞれの目標のページに付箋を貼らせています。クラスの子たちには「ブッククラブで読んでくる目標のページに付箋を貼っているでしょ。これが目標設定に使う方法で、もうすでにみんな実践していることだね」と話しました。
また今回の付箋の使い方に関連する方法として、自分の本を読んでいる時には、ページの角を折って印つけ、後で読み直すことがよくあることを、実際に自分がその時に読んでいた本を見せて伝えました。
最後に付箋を貼ったページをとなりの人と紹介し合うという共有の方法を説明しました。
② インディペンデント・リーディング(ひたすら読む時間) 30分
子どもたちは、以上の方法を使って実際に本を読み付箋を貼ります。
③共有の時間 5分
付箋を貼ったページをとなりの人と紹介し合ってペアトーク。付箋を貼った理由も話すように促がしました。
【振り返り】
この後、付箋で印をつけたところを読み直す姿がしばしば見られるようになりました。ブッククラブの話し合いの時だけではなく、ブッククラブの読書ノートを書く時にも付箋で印をつけておいたページを読み直すことがとても役に立ちます。
前年度は付箋の使い方のミニレッスンは2回しかできませんでしたが、短いミステリーなどを扱い付箋を貼って読むところを実際にモデルで示すなど、3回、4回とミニレッスンを続け、付箋を使って読むスキルを深めていくことができると思いました。また練習を続けてないと付箋を使った読み方が身につかないので、一気に様々な方法を教えるのではなくて、もう少し分けて教えてもいいのではないかとも思いました。
出典:
Franki Sibberson & Karen Szymusiak,
Still Learning To Read, Stenhouse
Publishers 2003
2012年5月11日金曜日
カンファランス
今年度も1ヶ月が過ぎ、WW&RWの実践は順調に進んでいますか?
その核となるのは、なんといってもカンファランス。
以下、2010年8月29日に実施したWW研修会で甲斐崎博史さんが担当したカンファランスのワークショップから、その「極意」を紹介します。
まず、カンファランスは「子ども自身の感想を聞いたり、寄り添ってその作品についておしゃべりする」ことと捉えることです。
そのために、
1.いい読み手になる
2.寄り添う
3.共に考える
の3つを押さえます。カンファランスの技術はもちろん大事ですが、その前段としてこれら3つのスタンスを押さえるだけでカンファランスの効果はかなり上がります。
これらによって、以下のような環境や関係が築けます。
・ 子どもたちは安心でき、
・ クリエイティブな環境ができ、
・ 子どもたちは相談できる/悩みを聞いてくれる相手だと思ってくれる。
カンファランスの具体的な進め方★としては、上記のスタンスを押さえながら
1)いいところは具体的にほめる (よく読めば必ず一つや二つはあるはず!)
2)わからないところ/もっと知りたいことは質問する。
3 ) 改善する必要があるところは、(1)質問するか、(2)選択肢を提供するか、(3)提案する(否定したり、命令することは避ける)
カンファランスをする際の視点としては、
・カンファランスの前にしたミニ・レッスン
・指導要領、評価規準
・その子の抱える課題
・どんな書き手を目指すのか
・勇気づけ、意欲づけ、動機づけ
・作家のサイクル、表記、構成、題材、文章表現
などです。
なお、個別のカンファランスでは、必ず(無理に)改善点を質問の形で提示する必要はないことや、さらに上記の1)や2)もなしに「見守る、観察する、待つ」という接し方も「あり」であることも紹介されました。「見守る、待つ」は、教師にとっても生徒にとっても極めて能動的な接し方と捉えることができるからです。
以上は、WWのカンファランスについて書いてきましたが、RWの場合も、スタンス、作り出す環境や関係、進め方、視点など、ほとんど変わりません。詳しくは、『リーディング・ワークショップ』の第6章をご覧ください。
★ ここでは「大切な友だち」のアプローチ(『作家の時間』の69~73ページ)も、そのまま使えます。小学校中学年以上なら「大切な友だち」を練習して身につけることで、教師によるカンファランスと引けを取らないぐらいに効果的なピア・カンファランスができてしまいます。
「極意」の最後は、生徒たちを「カンファランスの対象」としてだけでなく、「カンファランスし合える人」と捉える方が、生徒にとっても、教師にとっても、そして社会にとってもプラスということです。
2012年5月4日金曜日
ミニ・プロジェクトから生まれる新しいミニ・プロジェクト
前回のRWWW便りへのコメントをありがとうございました。
→ 前回のRWWW便りにコメントをいただいたおかげで、読みたい本がまた増えました。
Shinlearnさんのコメントから、ライアル・ワトソンに興味を持ち、少し検索してみて、『思考する豚』を、地元の図書館に予約を入れました。(→ この本を書いた人でいいのでしょうか?)
豚つながり???で、少し前に読んだ A Day No Pigs Would Dieという本も思い出しました。(『豚の死なない日』という題名で邦訳も出ています)。この本を教えてくれた人は「泣いた」とおっしゃっていたように思いますが、いい本でした。この本の続編があるのに、それをまだ読んでいないことも思い出しました。続編も近いうちに読みたいです。
また、てるさんのコメントを読んで、 ジョージア・ハード(Georgia Heard)の本も新たに2冊注文しました。
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みなさんのGWのミニ・プロジェクトはいかがお進みでしょうか。
今回は、前回のRWWW便りで紹介した、私のミニ・プロジェクトの中間報告です。
私は昨日の午前中は、満員電車ぐらい混雑した新幹線の自由席のドアの近くに立って、ミニ・プロジェクトの本を1冊読みました。好き嫌いは分かれる本かもしれませんが、私は相当好きだったので、こういう本に出合えて、嬉しかったです。(その本は、下に書いているシンシア・ライラントの『優しさ』です。この本のおかげで、あっという間に目的地に到着しました)。
ミニ・プロジェクトに着手してみると、そこから新たに取り組んでみたいミニ・プロジェクトが生まれてくる感じです。
さて、中間報告ですが、前回のRWWW便りに書いた、私自身の5つのミニ・プロジェクトのうち以下の4つに着手しました。
○ 「愛する人との死別」というテーマが出てくる本の紹介文の下書きを始めました。
○ シンシア・ライラントは、今までに40冊ぐらい読んだ作家で、GW中にもっと読みたかった児童文学の作家4名ぐらいのうちの一人です。今回は、英語版が入手しにくかった以下の3冊の邦訳を、地元の図書館から借りてみました。
『優しさ』
『人魚の島で』
『わにになった子ども』(絵本)
3冊とも、「あたり」(?)でした。お薦めです。『優しさ』と『わにになった子ども』はかなり雰囲気が違います。
→ このミニ・プロジェクトから新たなミニ・プロジェクトを思いつきました。それは、シンシア・ライラント、イブ・バンティング、ジェイン・ヨーレンなど、著作が多くて、しかもその著作の範囲が多岐に渡る作家を何人か選び、「私ならこの一冊」みたいな紹介文を学習者向けに書く、ということです。(私は英語を教えているので、英語の学習者向けに書きたいと思っています。この3名は、邦訳されているものはまだ少ないのですが、英語ですと、特にライラントとバンティングには多々あります)。
○ 読書ノートにメモしそこなった本は、かなりメモできました。
○ 作家ノートについて書いてみたい文があるので、その下書きを始めました。
GW中の私のミニ・プロジェクトの中で、まだ着手していないのは「英語という教科でのRWWWについて学んでいる仲間たちに、おススメ本の題名(特に読んだことについて話し合うことについて書かれている本)を共有する」です。この週末にできるといいのですが。。。
GWもあと少しです。皆様もご多忙だと思いますが、読書ノート/作家ノートと共に過ごす楽しい時間もお取りになれますように! そして、GW中に出合ったいい本やいいプロジェクトがありましたら、ぜひ、コメント欄などで教えてください。
★ 以下、上で登場した本情報です。
ライアル・ワトソンの『思考する豚』 福岡伸一 訳 木楽舎 2009年
Robert Newton Peck 著 A Day No Pigs Would Die, Knopf より1972年
上の邦訳 『豚の死なない日』 ロバート・ニュートン・ペック著 金原瑞人訳 白水社 1996年
以下の3冊の著者はすべてシンシア・ライラントです。
『優しさ』 桐山まり訳 新樹社 1991年
『人魚の島で』 竹下文子訳 偕成社 1999年
『わにになった子ども』(絵本)ダイアン・グッド絵、こしばはじめ訳 新樹社 2008年
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