アトウェルの著作はこれまで邦訳がでていませんでしたが、この夏、『イン・ザ・ミドル』第3版の邦訳が三省堂より出版されました。
私は1998年に出た第2版で、初めてこの本を読み、その後、何度読み直したかわかりません。第2版は書き込みだらけで読みにくくなり、同じ本の2冊目を購入しました。生涯で10冊しか本が読めないとすると、私にとっては、必ずその10冊に入るぐらい、何度も何度も読んでいる本です。
今回、出版された『イン・ザ・ミドル』第3版の邦訳は、3名による共訳です。その訳者の一人として、この本の出版に関われて嬉しいです。今日は『イン・ザ・ミドル』を、私なりに紹介します。
私は1998年に出た第2版で、初めてこの本を読み、その後、何度読み直したかわかりません。第2版は書き込みだらけで読みにくくなり、同じ本の2冊目を購入しました。生涯で10冊しか本が読めないとすると、私にとっては、必ずその10冊に入るぐらい、何度も何度も読んでいる本です。
今回、出版された『イン・ザ・ミドル』第3版の邦訳は、3名による共訳です。その訳者の一人として、この本の出版に関われて嬉しいです。今日は『イン・ザ・ミドル』を、私なりに紹介します。
初めて読んで以来、どうしてこんなに何度も何度も読み直したのだろうかと考えました。
◆ 読み直すときは、授業のことを考えているときです。自分の教えることがうまくいかないとき、迷うとき、『イン・ザ・ミドル』での様々な場面を思い出します。この本の中で、アトウェル自身、紆余曲折を経て、学び続け、よりよい教育を追及してきた様子が、失敗も含めて具体的に紹介されているからです。そして、その結果、どういう改善をしたかも、ひたすら具体的に描かれています。それを読み直していると、対象となる生徒が異なるので、アトウェルの改善策をそのまま真似はできないものの、そこから自分ができることの方向性が見えてきたことが何度もあります。
➡ 例えば、読んだものについての生徒とのノートのやりとりについて、「全員の生徒と毎週やりとりをしようとすると、その用紙が山のようになり、疲れきってしまいます。私も疲労困憊し、ある時点で、この量を半分にすることにしました」(291ページ)とあり、その後、アトウェルは、より効果的でよりよい方法を考えだします。私も、提出物の量に疲れ切ってくると、この箇所を思い出し、もっと現実的かつ効果のあることは?と考えたりするわけです。
◆ 失敗があっても、よりよいものを追求していくアトウェルの教室は、教える教科や学年が異なっても、「こうありたい学びの姿」を見せてくれます。ちょっとした描写に、教師はこんな教室をつくりたいのだ、そしてそれは可能なのだ、と励まされることが多々あります。
➡ 例えば1章、最初は「グレイヴスたちの研究成果は私の現場では役にたたない、と周囲に息巻いていました。ニュー・ハンプシャーから来た研究者は、現場を何も分かっていない人たち。あんな人たちが推奨する無秩序な状態なんで、7・8年生の国語教師の経験があれば賛成できるはずがないのです」(28ページ)と批判的に見ていたアトウェルです。
でも、批判しながらもライティング・ワークショップに取り組み始めた頃について、「クラスの中によく書ける生徒がポツポツいる、という状況が一変しました。全員の生徒がクラスメイトや私とのカンファランスで助言を求め、集中して長い時間、創作に取り組むことができるようになったのです」(30ページ)とか、「しかし、こうした問題があっても、私は毎朝教室に行くのが待ち遠しくなりました。次に生徒が何をするのかを見るのが楽しみだったからです」(30ページ)等々を読むと、目指したい教室のあり方が具体的に見えてきます。
◆ 授業開きの準備、ミニ・レッスンを考えるときやカンファランスを行うときのヒント、評価の方法など、具体的な情報が多いです。
◆ 生徒が書いた作品もあります。生徒の書いた回想録や詩は、思わず引き込まれます。この本に生徒が大きく貢献していることも、アトウェルの授業を雄弁に語っている気がします。
◆ アトウェル自身、考え続けることを、よりよいものを求めるのをやめない教師です。そして、自分自身がよりよい読み手、書き手であり続け、そこから得たことを生徒に「譲り渡し」ていきます。これも、私の目指したい教師像です。そして「譲り渡し」をするために、教師自身がよりよい書き手、読み手になっていけるような本です。
なお、原書は600ページを越しますが、今回は著者の了承を得て前半の抄訳で380ページ強、8章構成の本となり、章のタイトルは以下のようになっています。(詳しくは、出版社からのプレスリリースもご参照ください。(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000048.000014647.html)
1章 教えることを学ぶ
2章 ワークショップの準備
3章 ワークショップ開始
4章 書き手を育てるミニ・レッスン
5章 読み手を育てるミニ・レッスン
6章 一人ひとりの書き手を教える
7章 一人ひとりの読み手を教える
8章 価値を認める・評価する
巻末資料には日本の教室で使えそうな資料も掲載しました。
訳者3名のうち、訳者前書きを書いた、現役の国語教員でもある澤田にとっては、『イン・ザ・ミドル』は「教師人生の羅針盤」(11ページ)とのことです。実感として、分かります。そして、私にとっても、この本は、羅針盤であり、かつ、航海を続ける(模索を続ける)力をくれる本でもあります。
皆様の夏の読書リストにぜひ加えてください!
訳者3名のうち、訳者前書きを書いた、現役の国語教員でもある澤田にとっては、『イン・ザ・ミドル』は「教師人生の羅針盤」(11ページ)とのことです。実感として、分かります。そして、私にとっても、この本は、羅針盤であり、かつ、航海を続ける(模索を続ける)力をくれる本でもあります。
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