ライティング・ワークショップの新年度の計画を考える中で、「自ら選択したジャンルで書く」という時間(ユニット)を確保しておくのはいかがでしょうか?
そんなことを思ったのは、アメリカでは、ライティング・ワークショップが広まり始めた1980年代と比べて、「いろいろなジャンルをバランスよく」学べるように、詩、回想録、説明文、意見文、フィクションなど、ジャンルを土台にした「ユニット」がきっちり組まれるようになってきている印象を受けるからです。ジャンルごとのユニットがしっかり組まれていることのプラス面が大きいのはよく分かります。しかしながら、ジャンルごとのユニットが連続するために、ライティング・ワークショップが「窮屈」になっている印象を受ける時もあります。
ライティング・ワークショップでは、「自ら選んだ題材について書く」という「選択」が大切にされています。教師が設定したユニットでジャンルごとに学び、あるジャンルを学んでいるときは、そのジャンルだけしか書けない場合、子どもたちの選択の幅は、そのジャンル内に限定されることが続くことになります。
それぞれに好きなジャンルや大きな飛躍を遂げるジャンルは、子どもたちによって異なります。次から次へと、自分があまり好きになれないジャンルが続くと、夢中になって取り組めない子どもたちが出てくることもあるでしょう。そこで、時には、教師が決めたジャンルという枠を外して、「どのジャンルで書くのか」も子どもたちが自ら決める時間を設けてみるのはいかがでしょうか。
このところ読んでいる『Writing Clubs』(★1)でも、ジャンルごとのユニットの学びが年間を通して土台にあります。しかし、時折、「ジャンル」という枠を外すユニットを設けることで、子どもたちの書きたいという意欲を、再度、うまく引き出し、それがライティング・ワークショップへの新たなエネルギーにもなっているようです。
ジャンルごとのユニットをきっちり組み立ててきた教師にとっては、複数のジャンルに共通するミニ・レッスンを考えることは、悩ましく思えるかもしれません。でも、例えば、「メンター・テキストを使った題材探しの方法」「書き手がどのように自分の下書きを読み直し、書き直すのか」「どうやって焦点をはっきりさせるのか」「具体的に描くことでより良い言葉の選択ができること」(『Writing Clubs』104ページ)など、複数のジャンルに共通するミニ・レッスンのテーマは、いろいろありそうです。
*****
この本の題名であるWriting Clubsからも分かるように、リーディング・ワークショップにおいてブッククラブで学ぶ時間があるように、ライティング・ワークショップでも、ライティング・クラブで学ぶ時間を組み入れることも可能です。この本はそのやり方を紹介しています。上記のように、子どもたちがジャンルを選ぶユニットは「ジャンル・クラブ」と名付け、協働で学ぶ時間も取り入れています。
これまでに、リーディング・ワークショップにおいてブッククラブを行ったクラスなど、子どもたちが協働で学ぶ経験がうまく機能してきたクラスでは、それを「ジャンル・クラブ」に応用してもいいかもしれません。
ブッククラブで読みたい本の候補から、ブッククラブをうまく作れたクラスであれば、同じような方法で、ライティング・ワークショップの「ジャンル・クラブ」で扱いたいジャンルをいくつか選び、子どもたちをグループ分けしてみる、というイメージです。
*ちなみに『Writing Clubs』の著者たちは、ライティング・ワークショップでクラブを作る際、参考になる情報やインプットを、常に子どもたちより得て、その情報を活用して、クラブを作っています。「ジャンル・クラブ」の場合は、「読むのが好きなジャンルは?」 「書くのが好きなジャンルは?」 という質問をしています。また、子どもたちが選ぶジャンルの選択肢それぞれについて、8~10冊程度のメンター・テキストを準備し、子どもたちは、それぞれのジャンルのメンター・テキストを、ざっと見て、それぞれのジャンルについて、気づいたこと、このジャンルで書きたいかどうか、そのジャンルへの希望の強さ(第1希望、第2希望)などをメモしたりしています(『Writing Clubs』105-111ページ)。それぞれのジャンル・クラブは、そのジャンルが好きな子どもたちが集まることが魅力ですから、それができるように何らかの手立ては必要です。
クラブのメンバー分けが終わった後は、クラブメンバーと一緒に、メンター・テキストから、そのジャンルの特徴として気づいたことに名前をつけ、なぜそのことが大切なのかをメモする(『Writing Clubs』111-112ページ)という時間も経て、それらを自分の作品に活かしていきます。
『Writing Clubs』では、「自ら選んだジャンルで書く」以外にも、「自ら選択した作家から学んで書く」というユニットも紹介されています。これも、ジャンルごとのユニットが続いて単調になってしまう時に、ジャンルという枠を外す一つの方法として考えてみてもいいのではないかと思います。もちろん、リーディング・ワークショップでの「作家について学ぶ」というユニットと関連させることもできそうです。
*****
★1著者はLisa EickholdtとPatricia Vitale-Reilly、Stenhouse より2022年に出版。この本は、2023年3月11日土曜日の投稿「書き手の目で読む 〜メンター・テキストを使う二つのタイミング」でも紹介しています。