ここ数ヶ月、心の片隅に残っているTEDトークのうちの一つが、作家であり、編集者でもあるデイブ・エガーズの、「デイブ・エガーズのTED wish: ある学校で」です。これを見ていて、「ライティング・ワークショップで教える先生は、デイブ・エガーズの素敵な学校の体現者みたい!」と思いました。
(https://www.ted.com/talks/dave_eggers_my_wish_once_upon_a_school)(日本語字幕でも視聴できます)
エガーズは、「毎日やりたいと思っていたことは マンツーマンの指導です ゴールは生徒みんなに1対1で向き合うこと」だと言っています。そして、1対1で生徒に向き合うには、「仕事の時間を何倍にも増やして、先生のコピーを作らないと無理」、つまり学校では人手が足りないと思ったエガーズは、自分で学校外にそういう場を作ってしまいます。
「本当に必要なのは多くの人の手だ。もっと人数がいる。1対1で、時間をかけて、専門知識を持って、生徒たちと向き合える、英語のスキルのある人が要るのだ」という考えたエガーズは、「物書きや編集者、ジャーナリストや大学院生、助教授など、日中は比較的自由な時間があって、言葉としての英語について興味がある人」と、指導を必要としている生徒をつなぐ場を作ろうと決めたのです。
最初は、「何週間待っても誰も来ない」ところからスタートし、やがて、「学習センターであり出版センターであり、我々が執筆センターとも呼ぶもの」ができ、それが軌道に乗り、さらに発展していくところまで、ユーモアたっぷりに語られます。
「学習センターであり出版センターであり、我々が執筆センターと呼ぶもの」の中で行われていることと、ライティング・ワークショップの教室で行われていることには、以下のように、かなりの部分で共通点があるように思いました。
・個別指導の実施、つまり、それぞれの子どもにとって必要なサポートが個別に提供される
・教えるのは先輩の書き手(物書きや編集者、ジャーナリストや大学院生、助教授など)
・本当の読者に向けた出版の機会もある。 → エガーズは、「今では本作りに夢中といったところです。ずっと残るものを作ると知ったとき、本屋の棚に置かれると知ったとき、生徒たちはこれまでにないほど熱心に取り組みます」と語り、何百時間もかけて第5稿 第6稿まで作ること、そして「一旦そのレベルに到達して、そのレベルで書けるようになると、もはや後戻りすることはありません。完全に変化します」とも述べています。
エガーズの取り組みとライティング・ワークショップの相違点は、クラス全体を対象としたミニ・レッスンがないこと、また「教師」の役割を多くのボランティアで担っていること(このTEDトークによると、登録ボランティはどんどん増えて、1400名)などが考えられます。
このTEDトークを視聴しながら、ライティング・ワークショップを実施する、ということは、(学校内では不可能だと思われていた)「学習センターであり出版センターであり、我々が執筆センターと呼ぶもの」を、ある意味、教室内に作り出していることに近いように感じました。
子どもたちが、学校「外」で夢中に取り組む読み書き、それを教室内で実現し、しかもそれを一人の教師で運営やサポートしている、と思うと、すごいことなんだと思います。ライティング・ワークショップに取り組むことは、今まで教室内で不可能だと思われていたことを実現していることでもあるのかもしれません。
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このTEDトークや絵本その他から、デイブ・エガーズに興味を持ち始め、私はここしばらく、時々、彼の絵本や小説(ネット社会のディストピア?小説『ザ・サークル』や、『かいじゅうたちのいるところ』←同名の有名な絵本の、エガーズ版小説)などを読んでいます。デイブ・エガーズは、私のミニ・プロジェクト?の一つになりつつあり、かなり先になりそうですが、ミニ・プロジェクトとして、改めて報告できればと思います。