2021年6月6日日曜日

プロジェクト/探究学習のなかの国語の役割

 『プロジェクト学習とは』の訳者の池田匡史さん(兵庫教育大学大学院)が、以下の紹介文を書いてくれました。

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 教科横断的な学びの必要性が訴えられたり、実際に展開されたりしている際、国語科を専門にする立場から不安になることがあります。それは、「生徒が言語活動の経験をしているから、国語科の要素が入っているだろう」という認識が広がってしまわないかということです。これはたとえば、学校全体の取り組みのなかで、なにかを追究するというとき、「プレゼンテーションをしているから国語科の要素がある」というような認識のことを意味しています。プレゼンテーションの場が設定されること自体はよいことです。しかし、その言語行為そのものを教える場や、うまく行うための支援の機会や場が担保されていることは重要なことです。このことを考慮に入れないと、過去(このばあい、とくに戦後初期)の過ちを繰り返すだけの営みとなってしまいます。現代における教科横断的な学びといえる『プロジェクト学習(以下、PBL)』でも、それは考慮しなければならない事柄です。ただ、この問題は意外に難しい面もあります。

 たとえば「○○の歴史」といった学習テーマの追究をしようとするPBLを想定してみましょう。生徒が、その歴史を明らかにすることに集中している過程において、読み書きそのものを教えようとすることは、生徒の思考過程をずらしてしまう恐れがあることは否めません。せっかく、生徒が歴史を解き明かすことに集中しているときに、別のことに目を向けさせることになるのですから、無理もないでしょう。その一方で、読み書きそのものを教える機会を担保することも、また重要です。このバランスをいかにとるのかということが、重要になってきます。

 本書で紹介されている事例では、その工夫も垣間見えます。プロジェクトの初期段階で、読み手としての能力が異なる生徒たちが一緒に読み聞かせをし合ったり、先生がすぐれた読み手のモデルとして音読をしたりする場面を組み込んでいることが窺えます。

 また、同じ学習テーマを扱いつつも、その教材として難易度別にアレンジされた文章を生徒に応じて用いるという手立ても採用されています。これは生徒一人ひとりをいかす教材選択であり、支援ということができるでしょう。難易度別になっているため別々の教材を用いているものの、ある学習テーマを追究するというめあてはクラスで共通しているため、PBLの活動として、誰一人学習のめあてから逸れてしまうということがないのです。このような教材選択が可能となるのは、学習テーマがはっきりとしているPBLという学習方法だからこそといえるでしょう。(PBL特有ということではなく、PBLを念頭にしない場でも学習テーマを設定することの価値が見えてきますね。)

 PBLという枠組みのなかに、国語科の要素がどのように捉えられているのか、また自分だったら何をどう組み込んでいくのか。本書をそのような目で見ることで、読み書きを教えるということへの自らの思考を活性化させてくれます。


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 世の中は、教科でブツ切りになっていません。教科で区切られているのは学校の中だけです。教えやすさではなく、学びやすさの観点から考えたら、教科横断/プロジェクト(探究)学習の方がはるかに身につく学びが実現します。(教科ベースでは、暗記と覚えたことを忘れる悪循環が繰り返されるだけかも!? 「学校ごっこ」=「正解あてっこゲーム」をやり続けるだけですから。)

 その意味でも、早くRWWWへの移行(まさに、国語科の中でのプロジェクト/探究学習といえます)や、『教科書をハックする』に書かれている「テキストセット」「学ぶために読む」「学ぶために書く」や、生徒一人ひとりをいかす教え方(『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』で紹介されている)や、『あなたの授業が子どもと世界を変える』で紹介されている実践を日本でもはやく実現したいです。(それらが実現できずに、教科書をカバーする授業が続くことは、学びの質と量が極めて低調な状態が続くことを意味しますから!)


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