『「考える力」はこうしてつける』(ジェニ・ウィルソン他著、新評論から来月に増補版が発売予定)と『In the Middle』(Nancie Atwell著、三省堂から6月に発売予定。日本語タイトルは未定)の2冊の親和性が極めて高いことに気が付きました。★
両方とも、類まれなる実践紹介の本ですが、同時に、常に改善修正している舞台裏も見せてくれている本です。(いいところだけ見せてくれて、失敗や舞台裏まで見せてくれる本は、極めて稀です!)言葉を換えると、実践者が実践を通して常に成長し続けていることを紹介してくれています。力点のおき方は違いますが。
両方とも、ほぼ毎日WWとRWの授業を時間割の中に位置づけられています。『「考える力」はこうしてつける』は、すべての教科領域での考えること、振り返ること、新たな目標を設定して取り組むことなどにフォーカスしているのに対して、In the MiddleはあくまでもWWとRWにフォーカスしている違いがあるだけで、そのアプローチの仕方は変わりないと思います。
ある意味では、両者のアプローチは、以下の2つの図に集約されるかもしれません。
(出典は、一つは、『「考える力」はこうしてつける』の16ページと、もう一つは、吉田の手製です。)
従って、このアプローチが効果的であることは、二人の実践者によって(それも、オーストラリアとアメリカという異なる環境下で!)証明されているわけです。まだ、これらのサイクルを自分のものにされていない方は、早速、日本でもやり始めてください。そして、その報告をお聞かせください。(あるいは、自分はこういう形でやっている、という異なるアプローチも大歓迎です!)
★ 私が、教師ががんばって教えるのではなく(その中心は、教科書をカバーする授業です)、子どもたちが主体的に学び、「自立した学び手」を育てる方法を探し始めたのは、1995年からでした。★★そして、1996年にたまたまオーストラリアのブリスベンにある教育専門の本屋さんで見つけたのが『「考える力」はこうしてつける』でした。当時は、ライティング・ワークショップも、リーディング・ワークショップの存在も知りませんでした。(この本は、そのことについては一言も述べていないのです。時間割の中で、それを毎日していることが分かる以外は。ですから、当初、私も「単に読み・書きの指導を分けて毎日やっているんだ」としか思いませんでした。)
その2~3年後、アメリカの教育シーンからいろいろ情報を収集している中で、ライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップが読み・書き指導の分野で盛んに行われていることを知り、その傑作として評判の高かった『In the Middle』を購入しました。(当時は、まだWWとRW関係の本も、いまほどたくさんは出ていませんでした。In the Middle以外に、一緒に購入していたRegie RoutmanやKathy Shortなどの本も、これに負けないぐらいの厚い本ばかりでした。何でこんなに厚い本ばかりなんだろうと思ったものです。日本の普通の教育書の4~5倍はありますから。)その厚さに圧倒されて、2000年までは読めませんでした。
★★ 文科省の、いま風の表現になると「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」ということになります。しかし、「新しい学力観」「生きる力」「総合的な学習の時間」「指導と評価の一体化」等、すべて言葉だけは存在しますが、実態はほぼゼロの状態が続いていますから、これも例外ではないことが最初から想像できてしまいます。本気度は感じられませんし(単なる作文でしかないことが伝わってきてしまいますし)、教科書アプローチを続ける限りは、基本的に無理なことが分かっています。換言すると、現場レベルで不可欠な、具体的な方法の提示も、継続的なサポートが得られる仕組みもないので、なかなかいい実践は期待できない、ということになります。ここでも、いつもの「ボタンの掛け違え」が!