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2026年3月13日金曜日

ブッククラブ運営のコツと手順

  前回のブッククラブについての記事(https://wwletter.blogspot.com/2026/03/blog-post.html)を書いたあと、しばらく私は興奮が冷めませんでした★0。子どもたちが読書の楽しさを発見していく姿を思い出し、その記憶に浸っていました。教師として、本当に幸せな日々でした。でも同時に、その「良い日々」の前にあった時間も思い出したのです。生徒たちがブッククラブで深い話し合いができるようになるまで、5か月間トレーニングを続けたあの日々。思い通りにいかなくてイライラしたこと、焦り、「この子たちは本当にできるようになるんだろうか」と不安になったこと。あれは、正直つらい日々でした。

私の投稿に寄せられたレベッカ・アルバー先生のコメントは、まさにその気持ちを代弁してくれていました。彼女は教師たちにこうアドバイスしています。「あきらめないで。」本当に、その通りです。

もう一度強調しておきたいのですが──最初の6年生(日本の中1に相当)のクラスをブッククラブに参加できるように育てるまでに、5か月かかりました。そして、その成功はまさにこの準備期間のおかげだったと、私は確信しています。(教師としての私の信念のひとつ:準備しすぎ、ということは絶対にない。)★1

 

土台づくり

では、その5か月間に何をしていたのでしょうか。私は、生徒たちのスキル、態度、人間関係に細心の注意を払いながら、ゆっくりと、慎重にこの仕組みへと導いていきました。そして、弱い部分があれば何度も立ち返って教え直し、補強しながら、少しずつ手を離していきました。そのときに取り組んだことの一部を紹介します。

1. まず、生徒たちに「読むことの意味」を考え、語らせることから始めた。

多くの生徒は学年相応のレベルよりずっと低い読みの力で、小学校時代にすでに読書から遠ざかってしまっていました。また、「読書をする人=自分とは違うタイプの人」というイメージをもち始めている子もいました。まずは、彼らを“読書に引き込む”必要があったのです。そこで私はこう問いかけました。「なぜ読むの?」すると、生徒たちは100個以上の理由を挙げてくれました。そのリストは一年中教室に掲示され、何度も話し合いのきっかけになりました。★2

2. 私自身が「読み手であること」を、生徒たちに日常的に語った。

私は、生徒たちにいつも「自分にとって読むとはどういうことか」を話していました。いつ読んでいるのか、どこで読んでいるのか、ブッククラブでどんな話をしているのか、週末に古本屋をどうやって巡っているのか──そんなことを、折に触れて共有しました。読んでいる本の一節を読み聞かせることもありました。意図的に、読書の楽しさや、気分転換になること、問題解決や人生の困難に向き合う助けになること、そして読書からどんな学びを得ているのかを伝え続けたのです。

3. 生徒たちと似た背景やルーツを持つ著名人の文章を紹介した。

また、読書が人生をどう変えたかについて書かれた記事やエッセイを、生徒たちに紹介しました。それらは、生徒たちと同じような背景や民族性を持つ作家や著名人によるものでした。Malcolm X、Luis Rodriguez、Oprah Winfrey★3 をはじめ、多くの人々が「文学が自分の人生をどう変えたか」を語っています。そうした文章は、生徒たちにとって強い共感と励ましになりました。

 4. 生徒たちと似た背景やルーツを持つ著名人の文章を紹介した。

また、読書が人生をどう変えたかについて書かれた記事やエッセイを、生徒たちに紹介しました。それらは、生徒たちと同じような背景や民族性を持つ作家や著名人によるものでした。Malcolm X、Luis Rodriguez、Oprah Winfreyをはじめ、多くの人々が「文学が自分の人生をどう変えたか」を語っています。そうした文章は、生徒たちにとって強い共感と励ましになりました。

 

立ち上げのプロセス

ここまで読んで、イメージがつかめてきたでしょうか。読書の楽しさや読解スキルの育成にたどり着くためには、まず子どもたちの“読みたい気持ち”を広げる土台づくりが必要でした。私は、生徒たちがこのチャレンジングな活動に前向きに取り組めるよう、時間をかけて働きかけ続けました。同時に、必要なスキルも教えていきました。

1. 毎日読み聞かせをし、子どもたちが話す時間をつくった。

私は毎日読み聞かせをしました。(絵本が大好きなのは、短くても意味がぎゅっと詰まっていて、話し合いにぴったりだからです。)

読み聞かせのあとには、子どもたちが自由に話せる時間を設けました。その際、私は次のような力を引き出すための質問を工夫しました★4。

  • 自分の経験と結びつけて考える
  • 行間を読み取る
  • 先の展開を予想する
  • 言葉づかいや表現に注意を向ける

ブッククラブでは、子どもたち自身が“問いをつくる名人”になることがとても大切です。そのための土台を、日々の読み聞かせの中で育てていきました。

 私は、ペアで話し合う活動のときにも、生徒たちにフィードバックをしていました。話している様子をそばで聞きながら、その場で具体的に「どうやって相手と対話を深めるか」について指示を出したのです。

2. 私が求めるスキルを、何度も“見せて”教えた。

私は、生徒たちに求めるスキルを、繰り返し自分でモデルとして示しました。誰かの発言にどう応じるか、テキストから根拠を見つけて共有する方法、相手に敬意を払って異なる意見を述べる方法──こうしたことを、実際にやって見せたのです。ときには、生徒の一人と私がペアになって、会話そのものをモデルとして見せることもありました。また、言い出し方(センテンス・スターター)や会話の枠組みを掲示し、いつでも参照できるようにしました。モデルを示すことは欠かせません。(これは、どんなスキルを教えるときにも当てはまります。)

生徒自身にも「よい話し合い」をモデルとして示してもらいました。ブッククラブが始まってからも、私は定期的に──ときにはその場の判断で──素晴らしい話し合いをしているグループのまわりにクラス全体で“フィッシュボウル”をつくるようにしました。みんなでその会話を見て、聞いて、「なぜこの話し合いはよかったのか」を一緒に振り返る時間をつくったのです。子どもたちは、私たちが望む姿を“目で見て”理解する必要があるのです。

3. 読書や話し合いの指導と並行して、コミュニティーづくりや対立解消の活動も行った。

ブッククラブが「安心して挑戦できる場」になるためには、生徒同士の関係づくりが欠かせません。そこで私は、クラスのつながりを育てる活動や、意見のぶつかり合いを解決する練習を継続的に行いました。人間関係の土台があってこそ、子どもたちはリスクを取って発言できるようになるのです。

4. その一方で、この年齢向けの小説を片っ端から読み、クラス用の図書コーナーを充実させた。

私は、この年代の子ども向けの小説を読めるだけ読みました。そして、生徒たちにとって手に取りやすく、興味をもてる本を集めて、小さな図書館をつくりました。ブッククラブで本を選ぶ段階になったとき、自分が提示する本に100%自信をもてることが必要だったからです。同時に、生徒たちの読者としての姿──どんなジャンルが好きなのか、読みのレベルはどれくらいなのか──をしっかり把握しておく必要もありました。

5. 4か月ほど経ったところで、4人グループをつくり、クラス全員で同じ“とびきり面白い”小説を読んだ。

毎日、私は短いミニ・レッスンを行い、ブッククラブの重要な要素をモデルとして示しました。たとえば、

  • 話し合いをどう始めるか
  • ファシリテーターの役割とは何か
  • 誰かが参加していないとき、どう対応するか

そのうえで、生徒たちをグループに送り出しました。とにかく、たくさん、たくさん、たくさんの“ガイド付きの練習”★5を重ねました。

 

そして最後の1か月間、私はブッククラブの魅力を全力で語り続けた。

この方法を身につけたらどんなに楽しいか、どれだけ自由に読めるようになるか、どんなワクワクが待っているか──私は毎日のように話し、生徒たちをその気にさせました。誘惑し、惹きつけ、ワクワクさせる。そんな1か月でした。

 

いよいよスタート

そして1月(日本では、9月に相当)の終わり、ついに最初のブッククラブを始めました。もちろん、ところどころうまくいかない場面もありましたが、全体としてはとても良いスタートでした。子どもたちは一緒に読むことにワクワクしていて、この方法をもっと良くしていこうという意欲も見せてくれました。

 ブッククラブについては、まだまだ語りたいことがたくさんあります。これまで、どうやって子どもたちをブッククラブに導いたか、そしてなぜ誰もが試す価値があるのかをお話ししてきましたが、まだ伝えきれていないエピソードがたくさんあります。★6 その間に、読者のみなさんにもぜひ教えてほしいのです。
生徒たちをブッククラブに慣れさせるために、どんな工夫をしましたか?
どんな課題がありましたか?
うまくいかなかった場面を、どう乗り越えましたか?

 

出典: https://www.edutopia.org/blog/literature-circles-setting-up-getting-started-elena-aguilar

★0ここでの「私」は、『教師のためのアート・オブ・コーチング』の著者のエリーナ・アギラーさんです。彼女は2000年以降ぐらいはコーチングに注力していますが、その前はこの記事から分かるようにブッククラブを含めたリーディング・ワークショップやライティング・ワークショップ、そして探究学習などに力を注いでいたことが分かります。繰り返しますが、生徒対象にこれらの実践をすることと、教師対象にコーチングをすることは根源の部分で同じと言えます。(それが、日本の教員研修がまったくと言っていいほど機能しない理由でもあります!)

★1皆さんは、この段落を読まれてどのような感想をもたれましたか? 「暢気な取り組みをしているな~!?」「準備に5か月もかけられて羨ましい!」 そもそも、教師(ないし、教科書)が計画した単元案や授業案(指導案)通りに授業が進むことなんてあるのでしょうか? それは、たとえ進んだとしてもあくまでも計画をこなせただけで、生徒たちが身につく形で学んでいるか否かはまったくの別物なのでは。後者の場合の多くは、学べていない責任を生徒たちに押し付ける形で・・・ いずれにしても、教師対象の研修にしても、生徒対象の授業にしても、サイクルを回し続けることが鍵です!(記事|noteを参照)

★2これと同じ問い「そもそも、なぜ読むの?」に対する8人の小学校教師の回答が『「読む力」はこうしてつける』の41~3ページで紹介しています。また、「読むことが可能にしてくれることは?」「読むことを通じて身につけさせたいことは?」「あなたにとって『読む』とは?」の3つの問いにも、この本の第1章で答えています。

★3自分のテレビ番組で、ブッククラブをしたり、たくさんの本を紹介していました。

★4ここで扱っているのは、優れた読み手たちが使っている読む際に使っている方法で、『「読む力」はこうしてつける』でそれらについて詳しく紹介されています。

★5少人数の生徒に対して教師がガイドする指導については、『読書家の時間』の初版の第6章、および『「学びの責任」は誰にあるのか』の第3章をご覧ください。これができるようになると、教え方の幅が広がりますし、生徒も身につける形で学べるようになります。

★6ブッククラブの魅力については、『読書がさらに楽しくなるブッククラブ』を参照ください。小学1年生でも楽しく取り組めている事例を紹介されています! また、このブログでも過去に何回もブッククラブについては紹介していますので、左上に「ブッククラブ」を入力して検索してみてください。

2026年3月2日月曜日

教室でのブッククラブ(=読書サークル/読書クラブ/読書会)がもたらす力  (2月27日分)

 6歳の息子が、ついに本格的に本を読み始めました。あふれんばかりの本棚から次々と本を手に取り、これまで何度も聞いてきた物語を自分で読んでいる姿を見るのは、本当に胸が躍ります。今では、休み時間に友だちを誘って一緒に本を読むために、本を学校へ持って行きたいと言っています。彼いわく、その名前は「読書クラブ」だそうです。

「私も昔、ブッククラブに入っていたことがあるよ」と私(エリーナ・アギラー)は言いました。ブッククラブとは、友だち同士で同じ小説を読んで、夕食を食べながら感想を語り合う会だと説明すると、息子はすっかり気に入り、誰を誘うか、いつ集まるか、何を読むか、そして何を食べるかまで、すぐにアイディアを出し始めました。

 けれど、私がすっかり「ノスタルジーの穴」に落ちてしまったのは、教師としてブッククラブを運営していた頃の経験でした。7年生の子どもたちが小さなグループで集まり、読書会をしている教室を歩き回っていたあの感覚を思い出すと、今でも胸が高鳴り、目がうるむような気持ちになります。

登場人物の行動をめぐって白熱した議論を交わしていたこと。
ページの間から飛び出すほど貼られた、メモでいっぱいの付箋。
「もう時間だよ」と声をかけると、「あと数分だけ!」と懇願してきた子どもたち。

 ブッククラブの時間、私の教室は学びと情熱と喜びで震えていました。

 

なぜブッククラブなのか?

これから、ブッククラブの「どうやって」「いつ」「どこで」「何を読むか」といった実践的な情報を紹介していきます。でもその前に、幼稚園から高校までのすべての教室で、何らかの形でブッククラブを取り入れるべき理由をお話しさせてください。

 

理由その1:ブッククラブは協同的な学びの場になる

ブッククラブは、生徒同士が読んでいる本や文章を理解し合い、意味づけを助け合う場になります。子どもたちは互いを「学びの資源」として活用する方法を身につけ、より自立した学習者へと育っていきます。もちろん、協同的な学びの場として機能させるためには、教師が意図的にそのように育てていく必要があります。適切な助言やモデルの提示、サポートなしに、自然と協働が生まれるわけではありません。

 

理由その2:ブッククラブは、子どもたちに学びの選択肢を与える

ブッククラブでは、複数の本の中から自分が読みたいものを選ぶ機会が与えられます。また、どのグループで誰と一緒に読むかについても、子どもたち自身が意見をもつことができます。学校では、子どもたちが自分で選ぶ機会が圧倒的に不足しています。選択の機会は、より夢中になれ、自分から読みたくなり、そして「選ぶ力」★を育てる貴重なチャンスにつながります。

 

理由その3:ブッククラブは楽しい。なぜなら“人とつながる体験”だから。

ブッククラブは、子どもたちにとって楽しい活動です。その理由のひとつは、とても社会的な体験であること。学校生活の多くの時間とは対照的に、ブッククラブではたくさん話し、意見を交わし、時には議論したりもします。自分の経験や気持ちを教室にもち込み、仲間と共有することが歓迎されるのです。読書は、少なくとも“ときどきは”楽しくなければいけません。もし読書の体験を楽しいものにできなければ、子どもたちは私たちの手を離れたあと、その習慣を続けようとはしないでしょう。

さらに、私たちが喜びや楽しさを感じると、その場所やそこにいる人たちとのつながりが強まります。私が中学生を教えていたとき、彼らが学校に“つながり”を感じ、仲間と前向きな学びの関係を築くことは欠かせないことでした。多くの都市部の教育委員会と同じように、カリフォルニア州オークランドでは中退率が非常に高いのですが、研究によれば、子どもたちが学校を離れる主な理由は、その場所やそこにいる人たちとつながりを感じられないことだといいます。

だからこそ私は、ブッククラブのような仕組みが、子どもたちを学校につなぎとめる「居場所」になり得ると考えています。子どもたちが教室にいなければ、学習基準を身につけることも、テストで力を発揮することもできません。ブッククラブは、その「教室にとどまる理由」をつくる手助けになるのです。

 

理由その4:ブッククラブは、読書が苦手な子にも大きな力を発揮する。

ブッククラブは楽しくて、子どもたちが自分で選べて、しかも協同的に学べる仕組みです。だからこそ、読書が苦手だったり、読むことに抵抗があったりする子どもたちにとって、とても力になる体験になります。ブッククラブは、もともとグループごとに違う本を読み、レベルもテーマもさまざまです。読書が苦手な子は、自分に合ったレベルの本を選ぶことができますし、教師はそのグループに直接サポートをしたり、読み慣れた子を加えたりして支えることもできます。

 

 ここから少し細かい話になりますが、大事なポイントがひとつあります。子どもたちには、さまざまなジャンルの本を選べるようにすることが必要です。「ブッククラブ」といっても、フィクション(物語)だけを読むという意味ではありません。私のクラスでは、読書が苦手な子(特に男の子たち)は、むしろノンフィクションを好むことが多くありました。(このテーマについて深く掘り下げた本として、Reading Don't Fix No Chevys: Literacy in the Lives of Young Men ★★があります。)

 

ブッククラブの「誰が・何を・いつ・どこで」を明らかにするための情報源

もちろん、ブッククラブを「楽しく、協同的に学べる場」にするためには、教師がやるべきことがたくさんあります。ありがたいことに、質の高いブッククラブを運営するための情報源はたくさんあります。
 まずは、次のようなものを参考にしてみてください。

  • 何年か前に(何と、2006年!です)、私自身がブッククラブについてのウェブサイトを作りました。網羅的なガイドではありませんが、始めるためのアイディアはいくつか載せています。

http://gallery.carnegiefoundation.org/collections/quest/collections/sites/aguilar_elena/literature_circles.htm

  • おすすめの本は、Harvey Daniels の古典的名著 Literature Circles です★★★。

 

読者のみなさんへ:
みなさんのクラスでのブッククラブの経験をぜひ聞かせてください。
なぜ、どのようにしてブッククラブを始めたのか。
どんなことが起きたのか。
どんな課題があったのか。
このテーマについては、まだまだ語りたいことがたくさんあります(もしかしたら、また別のブログ記事で書くかもしれません)。

 

 その間に、私は息子の初めてのブッククラブのために「緑色のスープ」を作りに行ってきます。彼らが最初に読むのは、あのドクター・スースの名作『みどりのたまごとハム』(松岡享子訳、偕成社、1979年)。息子は「動物を食べることの倫理」について議論するつもりらしいのです。廊下に隠れてこっそり聞くのが今から楽しみです。

 

★これは、「何は大切で、何は大切でないかを見極め、その判断のもとに行動する力」としてのクリティカル・シンキングの核心部分につながる。「批判的」や「複眼的」な部分は主要な部分ではないと理解していた方がいいでしょう。

★★この本、とてもいい本です! 邦訳がないのが残念!! 紹介者自身が、小学校~大学院とまったくと言っていいほど本を読まなかったので、このような本の必要性を痛感します。男子生徒の多くは、読むこととは関係のない世界の住人とさえ言える部分があります。そして、国語の教科書や国語の授業で生涯にわたって読める人はつくり出せません(そのことは、最初から目的に設定されていませんし!)。

★★★残念ながら邦訳がないので、『読書がさらに楽しくなるブッククラブ』が読めます。パート2では、多様なブッククラブの事例が具体的に紹介されており、パート3では、ブッククラブの5W1Hに答えています。(また、なぜ「ブッククラブ」の名称にこだわったのかも。基本的に、教師と生徒が一番ピンとくる名前を使ってください。)

 なお、この投稿は、ブッククラブではなく「リテラチャー・サークル」で書かれていますが、紹介者の判断で「ブッククラブ」に変更しています。理由は、構成メンバーに役割をもって読ませるのがリテラチャー・サークルの最大の特徴ですが、それは「理解のための方法」を学んでいる最中の小学生レベル(それも、低学年)なら許されるかもしれませんが、中学年以上で役割に固執して読ませるのはかわいそう、としか言いようがないからです。ちなみに、『読者がさらに楽しくなるブッククラブ』では小学1年生ですらブッククラブでやれてしまうことが紹介されています。

 なお、この記事(https://www.edutopia.org/blog/literature-circles-how-to-and-reasons-why-elena-aguilar)の執筆者は『教師のためのアート・オブ・コーチング』の著者のエリーナ・アギラーさんです。この記事からも分かるように、彼女はコーチになる前の約15年間は国語の教師をしていました。実のところ、アメリカ等でコーチ職についている人のほとんどは国語出身です。その理由は、授業でライティングやリーディング・ワークショップで生徒をサポートしていることと、教師や管理職にコーチングを通してサポートすることはほぼ同じと言えるからです。日本にはまだ「コーチ」という職種はありませんが、数(十?)年後には当たり前になります! その時に職種変更を可能にするためにも、いまからライティングやリーディング・ワークショップに取り組み始めた方がいいかもしれません。もちろん、職種変更を考えなくても、子どもたちのためにはもちろん、自分のためにも従来の国語の授業をやり続けるよりも、ライティングやリーディング・ワークショップをしたほうが何倍も得るものがあります(そう言いきれる理由には、どんなものが含まれるか想像できますか?)。

 

2026年1月9日金曜日

『教師のためのアート・オブ・コーチング』の著者のエリーナ・アギラーという人について

  エリーナさんが、教師になったのは1994年のことです。

 当初、教師になるつもりはなかったそうです。大学院に進むために、お金がなかったので学校で代用教員になり、それで教えることの楽しさに開眼してしまったそうです(そして、大学院に行くことはやめました!)。

 彼女がなったのは、英語(日本での国語)の先生です。彼女がどこかで書いていたり、語っている記録を見出すことはできませんでしたが、1990年代は、彼女が先生をしていたカリフォルニア州も含めて全米で普及しつつあったのがリーディングとライティング・ワークショップ(RW&WW)なので、大なり小なり影響されていた、ないし実践していたことは想像がつきます。(彼女がつくり出したトランスフォーメーショナル(変革)コーチングとの関連性についてはあとで触れます。)

 自分にとって、教えることは楽しくてしかたがなかったのですが、生徒たちが彼女に尋ねた質問の一つは、なんと「先生は来年もここにいますか? 学年の終わりまで残りますか?」でした。彼女は「もちろん残るよ」と答えましたが、生徒たちは「多くの先生はそうじゃないんです」と言ったのです。そこで彼女は、教師の離職率の高さ、そして教師が抱える圧倒的な負担やストレス、燃え尽きの問題をすぐに理解しました。これは、1990年代の半ばないし後半のことです。

 教師になって最初の数年間、彼女もコーチングを受けたそうです。「それは、とても技術的で、授業の指導法に焦点を当てたものでした★1。しかし私が本当に必要としていたのは、『このすべてプレシャーをどうやって乗り越えるのか』、つまり感情や日々の圧倒的な負担をどう扱うかというサポートでした」と回想しています。

それから約15年後★2、私は自分が設立に関わった学校でコーチになりました。そこで私たちが特に懸念していたのは、やはり教師の高い離職率でした。私が開発したコーチングの方法は、ある意味で私自身が教師時代に受けたコーチングを土台にしています★1。つまり、授業改善や生徒のエンゲージメントに焦点を当てるインストラクショナル・コーチング★3の要素を含みつつ、直感的に「信念」や「あり方」に関するコーチングを始めたのです。なぜなら、そこにこそ燃え尽きやストレス、圧倒的な負担感、そして感情についての対話が生まれるからです。感情は美しく、前向きで励みになるものですが、同時に困難も伴います(引用は、https://www.youtube.com/watch?v=mjrEfCJgO0w の動画より翻訳。その動画ではインタビューされているエリーナさんを見ることもできます)。

 さて、このブログの読者にとっての関心事であるRW&WWとエリーナさんが実践している変革コーチングの親和性についてですが、次の表のようにまとめられます。

テーブル

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。

 この表は、https://projectbetterschool.blogspot.com/2015/03/blog-post.html にある表の一番右側と共通性が多いと思いませんか?

 また、『教師のためのアート・オブ・コーチング』に付けられた解説「アメリカを中心にした欧米諸国におけるコーチングの歴史とその普及の経緯」の424ページで紹介されているもう一つの表(出典は、Responsive Literacy Coaching: Tools for Creating and Sustaining Purposeful Change, by Cheryl Dozier, 2006, Stenhouse Publishersの11ページ)を見ると、コーチが柔軟に個々の教師にニーズに応えながら(教師が同じことを対生徒で行うことと対比しながら)学びをつくり出す理論的な枠組みが示されています。

 これら3つの表から読みとれることは、日本の授業と教員研修が、まだそのような形では行われている割合は極めて少ない、ということです。

 理想的には欧米各国のように各学校にコーチを配置することですが★4、過度期には、管理職、指導教諭、主幹教諭、教科主任や学年主任などが、コーチング・スキルを身につけて若手教師を中心に同僚にコーチングをしたり、ピア・コーチングをしたりすることが現実に考えられるし、求められています。

 インストラクショナル・コーチングが始まったアメリカの歴史を振り返ると、出発点はRWとWWの普及だったことは間違いありません。その成功によって、優れた実践者をコーチとして採用して普及を図ったのです。その成功が、次の段階では算数・数学を中心に他教科やICTなどのコーチにも広がりました。

 すでに表に示したように、RWとWWとコーチングの間にある親和性は大きく、授業で日々カンファランスをしていた優れた教師たちの多くが、優れたコーチになっていきました。その意味では、RWやWWを実践するということは、いいコーチになるための準備もしていると言えるわけです★5。逆に言えば、RWやWWの実践をしていないでコーチになることのハードルは、かなり高いと言えるでしょう。練習の量がものをいいますから!

 

★1 彼女もコーチになった当初は、行動だけに焦点を当てて教師をコーチングしていたそうです。しかし、それでは数か月後には元に戻ってしまうことが多いと彼女は指摘しています。例えば、協同学習を導入することに同意して、何度も練習して実践できるようになったのに、何か月後かにその先生の教室を訪ねてみると、「なぜ生徒が列に並んでいるのか」「なぜ教室が静まり返っているのか」といった場面に出くわします。そこで彼女は「静けさ」や「生徒の発言」に関する教師の信念を掘り下げる必要性に気づいたそうです。その信念が選択にどう影響し、生徒にどう作用するのかを理解することが、真の変容につながるからです。

 この点は、授業にそのまま応用できてしまうと思いませんか? 教師ががんばってたくさんの知識やスキルを詰め込んでも(あるいは、生徒本人がそれらを一時的に詰め込んだとしても)、残念ながら、それらが生徒たちの中にあまり残らないことを誰もが知っています。

それでは、定着する学び、生徒であれ教師であれ、心底理解して、変容する学びはどのようにつくり出すことができるのでしょうか? 少なくとも現在、日本で行われている教員研修や授業は、そのことをほとんど考えずに行われていると言えないでしょうか? 要するに、「ごっこ遊び」レベルの研修であり、授業が続き、リアルな当人たちが使いこなせるレベルの研修や授業ではないということです。

 https://projectbetterschool.blogspot.com/2025/12/blog-post_21.html および

https://projectbetterschool.blogspot.com/2025/12/abd.html を参照ください。

★2 彼女が、コーチとしての取り組みを始めたのは2003~4年ごろという情報もあるので、15年後ではなく、10年後が正しいかも? 『教師のためのアート・オブ・コーチング』は彼女のコーチとしての約10年間の経験をまとめたものであり、コーチになったばかりの人(2003~4年当時の自分)が知っておきたいことをまとめた本です。

★3 これについては、『インストラクショナル・コーチング―授業と学校を変革する教師の最強パートナー』ジム・ナイト著、図書文化、2026年2月刊行予定を参照ください。

★4 https://projectbetterschool.blogspot.com/2024/09/blog-post.html

   https://projectbetterschool.blogspot.com/2024/04/blog-post.html

★5 それと比べて、日本でいいと評価される授業を教室で実践し続けることは、必ずしもいい研修会や協議会等での講師になることは保証していません。依然として、「話した(教えた)のに、覚えてないの」的なアプローチが主流ではないでしょうか?