2025年12月5日金曜日

「読み手としての私」を語る

  関西大倉中学校高等学校・堀内誠太郎先生の実践紹介の第2弾です。

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 2024年度の3学期、2年間の「読書家の時間」の集大成として、2年生には「『読み手としての私』を語る」と題したレポートに取り組んでもらいました。レポートは以下の4章から成ります。


第1章 「読書家の時間」と出会う前(つまり小学生のころ)の自分がどんな読み手だったか

第2章 読み手としての自分を成長させてくれた本と、成長したポイント(1冊目)

第3章 読み手としての自分を成長させてくれた本と、成長したポイント(2冊目)

第4章 今後「自立した読み手」として読書にどんな価値を見出し、どんな読書生活を送っていきたいか


 このレポートの中で、生徒たちは次のような成長ポイントを挙げていました。


成長ポイント①〈読むことの価値に気づいた〉

  • 本を読むことで、人の気持ちを理解できるようになる、と気づいた

  • 本を読むことで、知らなかった世界に出会える、と気づいた

  • 本を読むことで、前向きな考え方ができるようになる、と気づいた


成長ポイント②〈読み方が上手になった〉

  • 人物同士の関係を整理して読めるようになった

  • 場面の展開についていけるようになった

  • 描写から想像して読めるようになった

  • タイトルの意味を考察できるようになった

  • 他の本に書かれている内容と比較しながら読めるようになった


成長ポイント③〈選書や読書習慣が良くなった〉

  • ノンフィクションも読むようになった

  • 長編小説を読み切れるようになった

  • 授業以外でも読むようになった

  • 自分で本屋に行くようになった

  • 友達が薦めてくれた本を読むようになった


 ある生徒のレポート全文を掲載します。


第1章 小学生時代の「読み手としての私」

 小学生時代、私は本に対していいイメージがありませんでした。読書は時間を取らないといけないので、面倒臭く、本を読むことのメリットは分かりませんでした。読むとしても、映画のノベライズ本ぐらいでした。

第2章 「読み手としての私」の成長(1冊目)

 知念実希人『祈りのカルテ』

 この本で私は知らないことを知る楽しさを知り、本を読む量が今までよりも十倍近く増えたきっかけになりました。例えば、この本は医療系のフィクションで病名が出てくるのですが、その中で「醜形恐怖症」という病気が挙げられています。「醜形恐怖症」は、日常に支障が出てしまう精神病の一つです。このような精神病は見た目だけの判断は難しいということを知りました。だから、知らず知らずのうちに見た目だけで判断してしまう私たちはもっと発言に気をつけるべきだと学びました。このように、知らないことを知る楽しさを知ったことで、今までよりも読む本やジャンルを増やすことができました。

第3章 「読み手としての私」の成長(3冊目)

 湊かなえ『母性』

 この本で、読んだ本について友達と話せるようになりました。この本は、娘を愛することができない母親と、母からの愛を求めて、愛されたいと願う娘のそれぞれの視点が描かれている物語です。友達とは、娘の視点のストーリーで共感し合うことができました。例えば、「無償の愛」についてです。「自分たちってやっぱり無償の愛が必要だよね」「愛がなかったら存在する意味を感じなくなっちゃうよね」と意見交換し合うことができました。このように、本は話すきっかけになることに気づきました。本さえあれば、相手の好みや人柄が分かるので、小学生の時には分からなかった、本を読むことのメリットを、この本で感じることができました。

第4章 「自立した読み手」として

 本を読むことの価値は、視野や考え方を広げることにあると思います。『祈りのカルテ 再会のセラピー』で知らないことを知る楽しさを知ったり、『母性』で友達と読んだ本について話せるようになったりしたことで、読む本が増え、その分作者の視点や考え方に触れることが多かったので、小学生のころの私と比べて、私自身の世界観が豊かになったと感じることができました。今後の「読むこと」との向き合い方は、今までのように楽しむために本を読むだけでなく、勉強するために本を読めるようになりたいので、本を買うときの選択肢にノンフィクションも入れられるようにしたいです。


 本を読むのが苦手な生徒も少なからずいましたが、全員がそれぞれに読むことの価値を見出し、自分にとって価値ある2冊の本を紹介してくれました。生徒たちの書いてくれたレポートは、日々迷いながら「読書家の時間」を実践している私の背中を力強く押してくれました。このレポートは下級生が読めるように図書館に掲示しています。そのようにして、先輩から後輩へ、読むことの価値と魅力的な本が伝えられていく文化を育んでいきたいと思っています。


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 生徒たちの成長ポイントと関連して、『「読む力」はこうしてつける』の第1章「読むとは」では、

   1 読むことが可能にしてくれることは?

   2 読むことを通じて身につけさせたいことは?

   3 そもそも、なぜ読むの?

   4 あなたによって「読む」とは?

の4つの切り口で、読むことを教える立場にある先生たちの考えをまとめていますのでご覧ください。

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