「思考のレッスン」スピンオフ④です。
たまたま『須賀敦子全集・別巻』を読んでいたら、丸谷さんのことについて書いていたところがありました。
「豊富な知識が本の楽しさを倍加する」という須賀氏と向井敏氏との対談の中でです。
このタイトルは、まさに優れた読み手が使っている読み方の一つである、「つながりを見出す(それも、①自分と、②他の本と、③世界と)」そのものです。詳しくは、『「読む力」はこうしてつける』(特に、37ページ)を参照ください。
この対談の中で、以下のように書かれていました。
27 丸谷さんは作家、随筆家、文芸評論家として隠れもない名声の持ち主だけれども、書評家としてもめざましい業績を上げてきた人です。昭和30年代のはじめごろから今日(亡くなる)まで、じつに30年以上にわたって倦むことなく書評にかかわり、ほんの片手間仕事と見られていた書評を本格的に取り組むに価する高レベルの仕事に引きあげるのに力をつくしてきた。
それに反応するかたちで、須賀さんが「私がイタリアから日本に帰ってきたころ、丸谷さんの小説『たった一人の反乱』を読んで、あ~これでやっと、現代小説理論の視点で作品を書く人が日本にも出てきたな、と非常に安心したことがありました」 ~ 私には、こういう視点はまったくなく、単純におもしろい内容の小説と思って読んだだけでした! ~ と言ったあとに、
28 取りあげたれた本の分野の広さに驚きました。そして、それぞれの切り口の鮮やかさが印象に残りました。また、本を読む楽しさと同時に、書評も読んで楽しいものだという点を大事になさっている。
たとえば、『チェッリーニ わが生涯』というルネサンス時代に生きた人間の回想と『ベスト オブ 丼』を両方とも読んでみたいと思わせてしまう。
和歌、俳諧、近代詩、訳詩、持論など、詩歌の分野に属する本にことに力を入れている。
そして、丸谷さんの場合は、自国の文学と他国の文学(主には、英文学でしたが、広く外国文学)を広く読んでいた。しかも、丸谷さんの場合は現代文学だけでなく、ずっと早くから古典に目を向けていた。それも、情緒からでなく、方法論の観点から。
書評の話に戻ると、
29 丸谷さんは最初の三行で人を惹きつけなきゃいけないと、よく言うでしょう。その例が、小津次郎の『シェイクスピア伝説』の書評の書き出しです。
このあとは、池内紀(『モーツァルトとは何か』)と池澤夏樹の本に、話は移行していきますので、省略。 ~ ちなみに、前者の『モーツァルトとは何か』はおもしろかったです!!
追伸: 以前、丸谷さんは文学について百科事典的な知識を持っているのでは、と書きましたが、昨日、それを証明している本を読みました。なんとタイトルも連載で紹介した「思考のレッスン」にひっかけた『文学のレッスン』です。こちらも、インタビュー形式になっていますから、読みやすいです。
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