2010年8月23日月曜日

番外編: WW出版事情

 WW(ライティング・ワークショップ)に関する本は、日本語でまだ2冊しか出ていません。『ライティング・ワークショップ』(ラルフ・フレッチャー他著)と、それをベースに日本での実践をまとめた『作家の時間』(プロジェクト・ワークショップ編著)です。
 正確には、2.6冊ぐらいと言うべきかもしれません。★
 0.6冊には2冊の本が含まれています。0.1冊分ぐらいは『アメリカの表現教育とコンピュータ』(入部明子著)の中に、WWとしてではありませんが、1970年代から90年代の初頭にかけてのアメリカの作文教育としておおざっぱに紹介されています。
 もう一冊は、正直読んでいませんので、0.1か0.9かわかりません。単純に間をとって0.5にしただけです。本のタイトルは『作文カンファレンスによる表現指導』(木村正幹著)で、カンファランスの仕方の紹介および自分の実践が紹介されています。★★

 それでは、本家のアメリカではどうか、ですが、1983年★★★に最初の本Writing: Teachers & Children at Work, by Donald Gravesが出版されて、1990年ごろからは、翻訳したくなるような本が毎年少なくとも10冊ぐらい出版され続けています。★★★★
 最近の傾向としては、WW全体を扱ったものよりも、作家ノート、メンター・テキストの使い方(本物の作家の作品をミニ・レッスンやカンファランスに使うこと)、小学校低学年でノンフィクションを書く、カンファランスの仕方、修正の仕方、評価を指導にいかに活かすかなど、WWの諸要素を扱ったものに移行しているのが特徴です。
 これは、実践する先生たちのニーズに応えていると同時に、実践している執筆者たちの関心がそういうところに向いている表れだと思います。(この状況は、RWにも同じように言えます。)
 とにかく、それらを読んでいると、WWが進化し続けているのが伝わってきますし、書いている人たちが楽しんで学び続けていることも伝わってきます。そして、その奥の深さも感じさせてくれます。さらに、新たに実践する/書く人たちもドンドン増えていることもです。(他にも、いろいろと気づかせてくれることはあるのですが、「書くこと」以外なので秘密にしておきます。)

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★ 子どもを対象に限定した時は、です。
  大人が対象なら、https://sites.google.com/site/writingworkshopjp/teachers/osusumeで紹介している『あなたも作家になろう 』と『魂の文章術 』がお薦めです。

★★ このように、全体の一部だけを切り取って導入するのは、日本の大きな特徴のようです。RW(リーディング・ワークショップ)の領域では、有元さんがブッククラブを、足立さんがリテラチャー・サークルを紹介しています。
 府川源一郎編著の『読解力UP!小学校全体で取り組む「読書活動」プラン』(明治図書)という本があります。この中には、RWの要素がすべて含まれています。しかし、すべてバラバラでやっているので、残念ながら子どもたちの読む力はつきません。教師はやった気になれ、子どもたちも何かをした体験は記憶に残るかもしれませんが。
 トータルに扱うことが大切なのですが、ブツギリ(単元/教材/言語活動)・アプローチが大好きな日本にとって、これは一番苦手なことのようです。しかし、ある意味では、RWもWWも、難しいことはないわけです。すでに活動としては日本にも存在しているわけですから。そもそもの目標は何か、主役は誰かを設定し直せれば、いいだけなので。
 RWの翻訳本と、府川さんの本を比較読みしてみると、おもしろいかもしれません。

★★★ 実は、この本が出るまでには、15年ぐらいの助走期間があります。この点に興味のある方は、『アメリカの表現教育とコンピュータ』(入部明子著)を読んでください。また、pro.workshop@gmail.comに連絡をいただけると、その本では物足りないところを情報提供します。

★★★★ ということは、現時点でのWWに関する英語と日本語の情報格差は、100対1以上あるということになります。そして、今のままでは広がる一方です。

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