2021年5月14日金曜日

絵本の紹介

  2月26日、3月26日の投稿に引き続き、今回もここ数年に出版された絵本を中心に、最近のお気に入りを紹介します。

・『セミ』ショーン・タン (著)、岸本佐知子 (翻訳)、河出書房新社 2019年 

久しぶりの衝撃。ショーン・タンの差し出すストーリーには、いつもドキッとさせられます。絵の持つ力にも感銘を受けます」と、時々、投稿をお願いしている吉沢先生がこの絵本の印象を語っていました。独特の世界観がなんとも魅力的なショーン・タン。彼の絵本『セミ』が、2019年に出ていたことに、最近まで気づきませんでした。もっと早く読みたかったです。このセミに対するひどい扱いがあまりにみごとに描かれていて、感情が揺さぶられます。そして、最後まで一気読み。最後まで読むと、頭の中にはいろいろな質問が浮かび、何度も読み直したくなります。「深い質問」を考える絵本としても良さそうです。

(なお、ショーン・タンと言えば、2011年アカデミーの短編アニメーションを受賞した『ロスト・シング』が有名です。こちらも、何度か読んだ絵本ですが、いまだに消化不良?感というか、まだ理解すべきことがありそうな感じが、私の中には残っています。)

・『いろいろ いろんな かぞくの ほん』メアリ・ホフマン(著)、ロス・アスクィス (イラスト)、 杉本 詠美 (翻訳)、少年写真新聞社 2018年

 題名を見た時には、単純に家族の構成人員のいろいろなパターンを出して、それを一つひとつ肯定する、そんな本かと思いました。開いてみると、最初の文が「ちょっと むかしの ほんに でてくる かぞくは、たいてい こんな かんじだった」で始まります。そして、その後も「学校、ペット、食べ物」など、幅広いトピックで、家族の構成人員「以外」の具体例もどんどん出してくれます。この本を読んだ後、私はこの著者の本をもっと読みたくなり、読み始めています。

・『わたしに手紙を書いて―日系アメリカ人強制収容所の子どもたちから図書館の先生へ』 シンシア・グレイディ (著)、アミコ・ヒラオ (イラスト)、松川真弓 (訳)、評論社 2020年

 実話に基づいた絵本です。「日系」という理由だけで強制収容所に送られた、そういう史実を学ぶだけでも価値があると思います。また、ここに登場する図書館の先生は、読書が心の糧であることも、読書以外にも、日々生きていくのにいろいろな必要があることもよくわかっていて、図書館に来ることができなくなった子どもたちを支えます。自分の置かれた場所で、自分にできることを続ける、そんな姿を見せてくれます。

・『「いたいっ!」がうんだ大発明―ばんそうこうたんじょうものがたり』 バリー・ウィッテンシュタイン (著)、 クリス・スー (イラスト)、 こだま ともこ (訳)、光村教育図書 2018年 

 こちらもノンフィクション。一人で手当てできる救急絆創膏が作り出されたプロセスを、温かく描いています。

・『おれ、ピート くいたい』マイケル・レックス (著)、ひさやま たいち (翻訳)、評論社 2020年 

 パターンが続く時は、パターンが「どう崩れるの」と思いつつ読むことが多いです。この絵本の崩れ方と修復?の仕方は面白かったです。英語ですと、 Eat Peteが繰り返されて、リズム感抜群です。英語の読み聞かせは以下でどうぞ。

https://www.youtube.com/watch?v=qOUYfb4jr8Q

→ 上記の絵本とのつながりのある絵本を考えていて浮かんだのが、「友だちになる」というテーマから、少し古いですが『ペンギンさん』ポリー・ダンバー (著), もとした いづみ (翻訳) フレーベル館 (2007年)。ポリー・ダンバーからは、お洒落なセンスを感じます。『ペンギンさん』は好き嫌いは分かれる本かもしれません。

・『みずうみにきえた村』 ジェーン・ヨーレン(著)、バーバラ・クーニー (イラスト), 掛川 恭子 (翻訳)、ほるぷ出版; 新版 2020年

 先日、図書館に行った時に、1996年にでた『みずうみにきえた村』の新版が、2020年に出ていることに気づきました。ということは、少なくとも25年は読み継がれている本なんだと、しみじみ思いました。故郷に住めなくなることに思いが行きます。著者のジェーン・ヨーレンは、英語では信じられない冊数の本を出版しています。『みずうみにきえた村』以外で邦訳されているものとして、『つきよのみみずく』そして、人気絵本「きょうりゅうたち」のシリーズがよく知られています。

・『あしたは きっと』 デイヴ・エガーズ (著), レイン・スミス (イラスト)、 青山 南 (翻訳) BL出版 2019年

 最近、はまりつつあるデイヴ・エガーズ。彼が文章を書いた絵本ということで興味津々でした。「今」という時間が「明日」という時に向かって開いていることを感じます。

 ここからは少し脱線です。

 デイブ・エガーズの名前を初めて知ったのは、『イン・ザ・ミドル』の中です。ヘレナという子どもの「これから読みたい本」リストの中に、エガーズの『驚くべき天才の胸もはりさけんばかりの奮闘記』(文芸春秋, 2001年)がありました。英語のペーパーバック版で496ページあります。『イン・ザ・ミドル』に出てくる子どもたちは、中学校1、2年生の年代なので、彼らが読んでいる本やこれから読みたい本には、驚かされることが時々あります。その後、デイブ・エガーズのTEDトークでさらに興味を持ち、ネット社会のディストピア?を描いた『ザ・サークル』やその他の本を読み始めました。デイブ・エガーズは、現在、私のミニ・プロジェクト(?)になりつつあるので、ミニ・プロジェクトが一段落すれば、改めて報告の投稿ができればと思っています。


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