2014年の出版から8年を経て、今年6月30日に改訂版が出た『改訂版 読書家の時間』。まず、執筆に関わったメンバーのうち3名から、以下、3名それぞれの「20秒ぐらいのブックトーク」をお届けします。
(1)
教師の立場からすると、「読書家」としての日々の生活が、そのまま授業に活かせる学び方が「読書家の時間」だと思っています。週末に図書館に行き、教室の子どもたちの顔を思い浮かべながら読み聞かせ・考え聞かせ用の絵本を探すことが楽しくなります。
(2)
本を読むことって楽しいですよね
でも、教科書だけが唯一の読書の子どもも実際に多くいます
そんな子どもたちの楽しみの一つになるように
本を読むことがとっても楽しいことであることを伝えてあげたいです
好きなことが何かあれば、
誰でも本が好きになります
その好きなことを一緒に探して
好きなことについて書かれている本をそばに置いて
友達や先生と一緒に読めば
本が大好きになるかもしれません
それが読書家の時間です
(3)
生徒に、教科書の小説教材へ「主観でいいから」点数を付けてみようと投げかけました。7点以上が友達にこの小説を紹介してもいいと思える点数です。あるクラスでは、7点以上をつけた生徒が5人ほどでした。もっとも人数が多かったのは6点です。次に、教科書以外で7点以上の点数を付けられる本がある?と聞くと全員の手があがりました。読むこと、書くことのサイクルを回していくには「動機」が必要です。子どもたちの伝えたいという思いを支え、思いの言語化のお手伝いをする。そんな授業をやってみませんか?どうやって?ぜひ本書をお読みください。
*****
今回の投稿のために執筆メンバーとやり取りをしているときに、「授業の手法だけを真似されても、よくある『手法のショッピング』で終わってしまい、自分には(自分の学校や生徒には)合わなかった、という結論を出されて捨てられてしまう」というコメントがありました。
『改訂版 読書家の時間』には、(クラスの中でのお薦め本を知るための)本の紹介スピーチ、「がんばりフォルダー」、本の紹介文・カード、(本について話し合うための)ペア読書、読書パートナー、ブッククラブ、ITを活用したGoogleスプレッドシートのブッククラブ等々、教室で実際に行われている活動例がたくさん出てきます。
でも「手法集」ではありません。
ある執筆メンバーは、「国語の授業が教科書で完結することなく、日々の学校生活に『読むこと』が根付いていく。本を通して児童・生徒がつながっていく」と語っていました。そのような読み手のあり方や読むという文化が土台にあります。
『改訂版 読書家の時間』の中で紹介されている実践は、読み手や読むという文化を見据える中で、結果として出てきたともいえます。逆にいうと、「国語の授業が教科書で完結することなく、日々の学校生活に『読むこと』が根付いていく。本を通して児童・生徒がつながっていく」ような手法や活動を、それぞれの教師が見出せれば、本の中の紹介例にこだわる必要はないように思います。
執筆メンバーからは、改訂版での本リスト(★1)を活用してほしいという声もよく聞きます。それは「どんな本でもOKではないし、どんな本でもうまくいくわけではない」からです。そして「実際に教室で紹介したり、授業で使ったり、児童・生徒が教室で楽しく読んできた本などを旧版からパワーアップして『本リスト』に追加したので、気になるタイトルは書店や図書館で手に取って読んで欲しい」と言います。教師が読む楽しさを知ることも、紹介されている活動例を成功させる土台になります。
紹介されている実践の土台にあるものは、ほかにもあります。
前回の投稿「不安な心に『も』寄り添う『作家の時間』と『読書家の時間』」で、新刊『不安な心に寄り添う』が紹介され、『不安な心に寄り添う』が「「読書家の時間(RW)」や「作家の時間(WW)」の実践と重なる部分が多い」と書かれていました。
この投稿と共鳴していますが、「(国語という)教科に限定されずにワークショップでできること」に目を向けると、そこからも、手法のショッピングの先にあるものが見えてくるように思います。(「手法を賢くショッピングするためのガイドラインになるようなもの」と言い換えても良いかもしれません。)
それぞれの教科に限定されずにワークショップでできること、その一つは、一人ひとりの子どもを認めることであり、一人ひとりの子どもの「心理的安全性」を培いながらの学びです。
次のような文章が「終わりに」に出てきます。
「『子どもを認めるーーこれが私がワークショップをはじめた理由でもあり、現在でも魅せられている理由です(オンライン掲載の旧第9章「教師の変容」参照。)ワークショップを通して、子ども一人ひとりの好きなものや体験を知ることができたほか、勇気を出して表現してくれた子どもを認めることができたからです」(『改訂版 読書家の時間』216ページ)
「心理的安全性」とは「率直に発言したり懸念やアイディアを話したりすることによる対人関係のリスクを、人々が安心して取れる環境のこと」です(この引用は『恐れのない組織』49ページからの引用で、『改訂版 読書家の時間』217ページで紹介されています)。
「何かができるようになるためには、今できていない自分に気づく必要があります。ところが、マイナスイメージばかりを自らにあてがっている子どもは、今の自分を見つめることに耐えられない程の不安やストレスを抱えています」(『改訂版 読書家の時間』218ページ)
ワークショップは、このように、一つの教科に限定されない考え方をもっています。そして、それは以下にあるように、教え方の枠組みでもあります。
「ワークショップは、メソッドではなく『フレームワーク(枠組み)』と考えています。子どもたちの多様性を認め、主体性を保ち、自立的な学習者を育てていくための学習という捉え方、指導の考え方です」(『改訂版 読書家の時間』219ページ)
*****
★1 前にも紹介していますが、改訂版の本リストには、従来の項目に加え、以下の項目が加わっています。その中で「中学生の思考を動かす絵本」以外はオンライン版資料となっており、以下のURLよりアクセスできます。
「中学生の思考を動かす絵本」
「中学生の教室でよく読まれた本(フィクション)」
「中学生の教室でよく読まれた本(ノンフィクション)」
「中学生へのおすすめ本(フィクション)」
「中学生へのおすすめ本(ノンフィクション入門編)」
「中学生へのおすすめ本(ノンフィクション挑戦編)」
https://tommyidearoom.com/%e3%80%8e%e6%94%b9%e8%a8%82%e7%89%88%e3%80%80%e8%aa%ad%e6%9b%b8%e5%ae%b6%e3%81%ae%e6%99%82%e9%96%93%e3%80%8f%e3%80%80%e3%82%aa%e3%83%b3%e3%83%a9%e3%82%a4%e3%83%b3%e7%ab%a0/
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