2017年11月3日金曜日

読み手を教える個別カンファランスを、短時間で効果的に行うには?


 読み手を教えるために、一人ひとりとやりとりをするカンファランスを、短時間で効果的に行うという具体的なイメージが、私はなかなか持てませんでした。

 生徒が、私の好きなお薦め本を読んでいると、自分も嬉しくて、話していると楽しくて、ついつい時間が長くなりました。また、読むことに関して、問題を抱えているのがわかると、一緒に解決への道筋を考えようとして、これもまた長くなります。そうすると、カンファランスをする人数はどんどん限定的になります。


 このブログでも時々紹介してきた、中学校レベルの優れた実践者、ナンシー・アトウェル氏の本を見ていると、この問題への対応がかなりイメージできますので、今日はそれを紹介します。

 アトウェル氏の場合、ミニ・レッスンのあとの読む時間に、1回の授業で18名の生徒と短い会話をしています。この18人というのは、クラス全員です。もちろん、日本の教室で18名という少人数で教えるのは難しいと思います。

でも、もし1回に18名の読み手と短く、個別カンファランスができれば、2回分のRWで、人数の多い日本の教室でも、ほぼ全員を個別にサポートできるのでは?と思いました。 

 アトウェル氏が、ある1回のRWで行った18名との会話の一覧が載っている本★があり、それを見ていたのですが、そのやりとりを声を出して読んでみると、短い人だと40秒ぐらい、長くてもせいぜい100秒ぐらいだと思います。でも、短いのに、とても豊かな時間です。

 さて、短時間でこなすコツですが、アトウェル氏の本から考えると、3つポイントがあると思いました。


 授業中に一人ひとりと短く話す時には、その目的がはっきりしています。アトウェル氏の場合は、読書の進捗状況★★と今読んでいる本に満足できているか、どのように読んでいるのかを確認し、読み続け、成長できるようなサポートをすることです。

(★★進捗状況については、アトウェル氏のクラスは、最低、毎日20ページ、自宅で読むという宿題があるので、その確認も兼ねて、この時間中に、生徒の名前一覧を書いた表に、書名とページ番号をメモしています。ですから一人ひとりに、共通して聞いているのは、書名とページ番号です。)

あとは、読んでいるページ数や本によって、当然ながら、18名と話せば、18通りになります。それぞれに簡潔、でも、豊かです。

いくつか例をあげると、「読んでいる理由を尋ねる」、「同じ著者の他の本と比較した印象を聞く」、「気に入っているようであれば、クラスメイトにブックトークをするようにお薦めをする」、「相当難しい本だと、ちゃんと楽しめているか確認する」、「読み続けるかどうかを迷っている場合は、その子の選書方法や、本を途中でやめる場合の基準を聞く」、「この本は『出版されたのが第2次世界大戦の少し前で、当時、ほとんど売れなかった等、本についての知識を補う」、「ジャンルを尋ねる」等です。


(子どもによっては、昨日自宅で読んだ本を持ってくるのを忘れてきたり、ロッカーに本が入ったままで、読書記録を記入していないときもあり、その対応もこの時間に個別にしています。あと本を返すときの返却手続もこの短いやりとりの中で行っています。)

② 豊かなやりとりが短時間でできるのは、この時間は「粗筋を伝える時間や本についての口頭報告の時間でないこと、読み終わる前にこの本のテーマ等を聞き出されることもない」ことを生徒がしっかりわかっているからです。

 そして、本についてより深く考え、やりとりする方法を他に設けています。アトウェル氏のクラスは3週間に一度、その間で読み終わった本からベストを選び、それを手紙形式でアトウェル氏もしくはクラスメイト宛てに書き、受け取った人が返信をします。掘り下げた「書くこと」を使ってのやりとりで、批評家としての目も養えるようにサポートしています。
 
③ 本についての堅苦しくない会話も大切にされています。アトウェル氏も、RWの時間中だけでなく、授業の前後も、昼休みも、もフィールド・トリップに行く途中も、チャンスがあれば生徒と本について話しています。

***

★ 上で紹介しているのは、Nancie Atwell著 In the Middle の第3版です。Heinemann社より2015年出版、上に書いたことは第7章に詳しく書かれています。特に247~253ページの18名とのやりとりの再現は、教室の様子がとても具体的です。


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