2011年12月9日金曜日

「順調に進んでいないのですが……」 → 「順調に進めるために」 ~二つのヒント~

 前回のRWWW便りは「順調に進んでいないのですが……」でした。

 今回はそのつながりで、「順調に進めるために」のヒントを、「うまく行っている場合」「うまく行っていない場合」から、書きたいと思います。

★ まず「うまく行っている場合」のヒントです。

 中学校レベルでの優れた実践者であるナンシー・アトウエル氏の本の中で、とても印象に残っている箇所があります。

 アトウエル氏のWWのクラスに、WWの第一人者の一人のグレイヴス氏がやってきます。

 その日の授業のあと、グレイヴス氏はニコニコして、アトウエル氏に、「君は、WWのいい先生とは、どういう先生なのか、よく分かっているね」と言って、ほめてくれるのです。

 アトウエル氏は、その瞬間、何をほめられるのか、と頭の中にいろいろな可能性が 浮かび、期待でいっぱい、まさにドキドキの瞬間だったと思います。

 グレイヴス氏の返事は予想外だったようです。

 その返事とは、"You're so damned organized." でした。
 
 日本語にうまく訳せない台詞ですが、「思いっきりしっかりと、計画的できちんと整理されている」みたいな感じでしょうか。

 きょとんとしたアトウエル氏に、 グレイヴス氏は、「だって、計画的できちんと 整理されていないと、この方法(つまりWW)で書くことは教えられないからね」と続けます。

 *****

 この箇所がとても印象的になのは、実際にWWやRWをしていると、「そうだ」と思うことが多いからです。

 学習者が主体的な書き手、読み手になるためには、きちんと用意しなければいけないものもけっこうありますし、学習者が自分で動けるような準備も、そのためのサポートも必要です。

 特に人数が多い場合、例えば、書き終わったものはどうする、質問のあるときはどうする等々を、学習者が分かっていないと、先生は学習者に追われてしまいます。そうなると、カンファランスの時間もとれなくなってしまいます。

 うまくいっているときには、「カンファランスが上手だから?」とか「私自身が書き手であり、読み手であるから、書き手と読み手の気持ちがよく分かって指導できているから」等々と、考えたいものです。

 でも、学習者が自分で動けるようにきちんと整理・準備されていて初めて、カンファランスの時間は確保されるのです。カンファランスの記録がきちんと整理されていて初めて、数回のカンファランスにつながりが生まれたりするのです。

 明日の授業での学習者の動きを想像してみて、必要な準備をきちんと整理し行っておく、これは大きい気がします。


 ★ 次に「うまく行っていない場合」のヒントです。

 前回のRWWW便りに書きましたように、全く順調でなかった私が、次のミニ・レッスンを考える上でよりどころにしたことは二つありました。

 一つは書き手としての自分です。学習者よりも、少し先輩の書き手として、自分が書くときにしていること、助けになること、問題点などを、もう一度振り返り、そこ から、書き手として、学習者に現時点で伝えることは何だろうかと考えました。

 もう一つは、学習者の書いたものです。

 今までに出された作品に、もう一度目を通し、課題を整理しました。

 全体への共通した課題というよりは、3段階ぐらいの課題があるように思いました。

 それで、次の授業にできることとして全体で行うことと、選択肢のある課題(3段階ぐらい)を考えました。そして全体で行うことが終了したあとは、その3つの中で、自分があてはまる部分をやってみるように言いました。

 ほんの少し、修正軌道に入れたかなとも思います。

 引き続き考えて行こうと思います。


出典:

上で紹介したアトウエル氏とグレイヴス氏とのやりとりは、Nancie Atwell著、In the Middle, second edition (Boynton/Cook, 1998) 89-90ページです。

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