2025年4月11日金曜日

アンカー・チャート ~学びの錨(拠り所・支え)となる教室の掲示物

 「この前、題名の付け方について学んだんだけど、いい題名をつけるためには、何ができるんだったっけ」とか「次に読みたい本が見つからない時は、何をすればいい?」等々、学んだことを忘れてしまうこともあります。そんな時に、そのポイントが教室に掲示してあれば、それを見て、自分で解決ができます。

 ライティング・ワークショップやリーディング・ワークショップ関連の文献を見ていると、教室の掲示物が活用されている事例が多くあります。「作家たちは、どこから書く題材を見つけるのか?」の具体例を掲示している教室もあります(『ライティング・ワークショップ』33ページ)。また、「書く前にすること」「パートナーの作品を修正するときの手順」など、書くことのさまざまなプロセスにおいて、子どもたちが自分でできることを掲示している教室もあります(『ライティング・ワークショップ』35ページ)。

 文献を見ていると「アンカー・チャート」という用語も、最近、よく目にします。アンカー(anchor)は、錨、拠り所、支え等の意味があります。

 アンカー・チャートとは、「教室での学習の成果物であり、錨のように、生徒と教師の考え、アイデア、プロセスを固定する。アンカーチャートは、事前の学習を思い出させるものとして表示することができ、複数のレッスンにわたって積み重ねることができる」という説明もインターネット上にありました。(★1)

 アンカー・チャートには、上記のように、クラス全体で一緒に学んだポイントなどを書くこともありますし、今学んでいる単元で考えたいことや達成したいことなどを記しておくこともできます。「1回だけ使って終わり」ではなく、学びの拠り所として、以前の学びを思い出させ、複数回の授業を通じて積み重ねていくこともできます。

→ アンカー(anchor)と言えば、2月14日の投稿「『共有の時間』から『リフレクション』の時間へ (その2)~『グローバルな問い』の役割」では、「グローバルな問い」は「読み書きを統合したワークショップ(lieracy studio)のどの部分においても、対話の「アンカーになる」(anchors)と書かれていて(★2)、ここでもアンカーという単語が使われていました。


🔸イーゼルの魅力

 イーゼルの活用という手もありそうです。『イン・ザ・ミドル』(75ページ)には、イーゼルの写真があり、イーゼルの上に乗せる紙について、次のように説明されています。

「70センチ弱✖️80センチ強の罫線つきの一束の紙を載せて、ちょうど黒板のように使えますが、書いたものを保存できるのが大きな違い。そのおかげで、生徒と私は、過去の紙をめくって、参考資料を見つけたり、改訂したりもできるのです」(『イン・ザ・ミドル』75-76ページ)。

 イーゼルの場合、記録が簡単に残るので、1年の終わりには、すべてのページを見て、残しておきたいアイディアやページの保管などもできます(『イン・ザ・ミドル』76ページ)。

→ 中学校のように、ライティング/リーディング・ワークショップ用の教室がない場合は、上のイーゼルのような「移動できるもの」は、かなりメリットがありそうです。また、ライティング/リーディング・ワークショップを図書館で実施する等で、アンカー・チャートを掲示しにくい場合なども、イーゼルは便利かもしれません。

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 最後に私の失敗を一つ。大昔、ミニ・レッスンで学んだポイントなどを、紙に印刷して配布し、作家ノートや読書ノートに貼っておけば、すぐに参照できて、便利だろうと考えました。ノートに貼る手間を簡単にしようと、名刺ぐらいの大きさの宛名シールに「いい題名とは?」とか「書き始めで考えたいこと」等々、印刷して配布したことがあります。「こうしておけば、準備は少し面倒、でも貼るときは簡単!」と思ったのですが、イマイチでした。

 → 今、思うと、それは教師から一方的に与えられた、閉じた情報になっていたからのように思います。ミニ・レッスンで教えたいポイントや情報は、教師が持っていて、それを与えるというスタンスでした。しかも、一度ノートに貼ってしまうと、貼った場所を動かすのは面倒ですし、書き込みもしにくいです。

 他方、アンカー・チャートやイーゼルは、学びのポイントを錨のように、しっかり固定してくれます。錨が下ろされているので、安心して、そこから考えを巡らせることができ、新たな知見が生まれることもあります。授業の進み具合に応じて、場合によっては、クラス全体で書き込んだり、改訂することもできます。掲示物ですから、単元に応じて、部分的に貼り替えるのも簡単です。私のイメージは、今からの「開かれた学び」のために「固定されている土台」です。

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★1

https://www.learningforjustice.org/classroom-resources/teaching-strategies/exploring-texts-through-read-alouds/anchor-charts

★2

Ellin Oliver Keene. The Literacy Studio: Redesigning the Workshop for Readers and Writers. Heinemann, 2022. (181-182ページ参照)

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