先週、ロイ・ピーター・クラークの『名著から学ぶ創作入門』(越前敏弥・国広喜代美訳、フィルムアート社、2020年)を山元さんが読みの専門家として「読む指導」にどう活かせるかを書いてくれていたので、今週は「書く指導」にどう活かせるかを紹介したいと思います。(本のタイトルの通り、それがそもそも目的で書かれた本ですから。実際、書き方を教える現存するプロ中のプロが書くことに関しての名著を紹介しながら書いた本なので、「書き方を教える」際のヒントが満載です!)
名著を紹介している部分は、どれもとてもいいのですが、圧巻は、その後についているエクササイズというかレッスンです。たとえば、
「『ゼロ稿』を書いてみよう。まず探りを入れる作業なので、完全な文章ではなくていい。ゼロ稿は、自分が何をつかんでいるか、何を知らなければいけないかを教えてくれる」(128ページ)もその一つ。下書きをドンドン書くことを奨励しています。
「原稿の質を自分では判断できない地点にいずれ達するだろう。そのときには助けを求めよう。ただち、慎重におこなわなくてはならない。励ましてくれる人か、批判してくれる人か、知識のある人に助けを請うように。必要なときに必要な人を選ぶべきだ」(129ページ)は、ピア・カンファランスを奨励しています。しかし、誰でもいいわけではなくて、読むときに選書が一番大事なのと同じように、人選でフィードバックの質も、その結果の文章の質も決まってしまいます。
この調子で、書き手が大切にすべきアドバイスが満載ですから、ぜひご一読を! 本の値段も300ページを超える内容なのに、2000円+税と、とてもリーズナブルですし、巻末の「ブックリスト」もありがたいです。(それに対して、著者が紹介している40冊以上の本で、訳されている本の少なさに驚きます! と同時に、日本人が書いた本で、この本に類するものを書くことは可能なのだろうかとも考えました。できるとしたら、どんな本があるかどなたか教えてください。)
もう少し、私が気に入った箇所を紹介します。
・自分の好きなことを書こう。それはすばらしいことだ。その感覚を楽しもう。ただし、推敲中はきびしく自分に問うこと。その華麗な一節や如才ない考えは、本旨に沿うものだろうか。ちがうと思ったら、その表現は取り除こう・・・また別の機会の別の話のためにとっておけばよい。(22ページ) ~ それを可能にしてくれる媒体が「作家ノート」です!
・①この本の適当なページを開く。筆記具と持って、節や章の趣旨とは関係ないと思われる単語やフレーズにしるしをつけよう。
②別のページを開く。練習のために、10%を削除しなくてはならないと想定する。削除できそうな部分にしるしをつけよう。
③刊行された自分の作品にこのプロセスをあてはめる。それから基準をきびしくして、20%を削除しよう。
④最後に、今の自分が書いている原稿の雑然としているところ、弱いところを見つける。だれかに手伝ってもらって、削除した箇所をチェックし、意見が合うかどうかをたしかめよう。(35ページ) ~ これは、このブログでも紹介したウィリアム・ジンサー(William Zinsser)https://wwletter.blogspot.com/search?q=Zinsser をベースにしたエクササイズです。
・文の長さを変えて、心地よりリズムを作ろう。(69ページ)
・目で見える形で考えたり計画したりするのは、ことばを使う人々にとって必要な手段であり、特にプロジェクトの最初には役に立つ。執筆を先に進めるために、作り上げたいものの絵や図を描いてみよう。画家のように描かなくても、棒人間、簡単な図形、矢印、螺旋で事足りる。(88ページ)
・デジタル時代の書き手に特に必要なのは、柔軟性だ。さまざまなメディア・プラットフォームにまたがって、さまざまなマルチメディアの形で、長いものも短いものも含めてさまざまな記事や物語を、速く書いたりゆっくり書いたりする練習をしよう。(96ページ)
といった具合で、まだ5分の1も紹介できていません(含められなかった中には、このブログで度々紹介してきたドナルド・マレー(https://wwletter.blogspot.com/search?q=Murray)や、https://sites.google.com/site/writingworkshopjp/teachers/osusume に含まれているナタリー・ゴールドバーグの本とそれらからの教訓/エクササイズも含まれています。ぜひ、『名著から学ぶ創作入門』を書く指導のいかしてください。
なお、最初の(128十129ページの)引用は、アン・ラモットの『ひとつずつ・ひとつずつ―書くことで人は癒される』(パンローリング)からのエクササイズです。
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