夏休みのような長期休暇に向けて、読み手として育ちつつある子どもたちを、どのように送り出せばよいのでしょうか? いろいろな段階のサポートがあると思いますが、今日は以下の3点について考えます。
1)読みたい本が、それぞれの子どもの手元にあるようにする。
2)アクセスしやすい本を中心とした、読みたくなるような本リストが、それぞれの子どもの手元にあるようにする。
3)読みたい本の探し方を教える。
まず「1)読みたい本が、それぞれの子どもの手元にあるようにする」です。
特に、本へのアクセスが難しい子どもたちには、一番、効果的な方法かもしれません。★
優れた実践者のアトウェルの場合、 長期休暇の前には、教師も生徒もすごい勢いでブックトークをし、そして、長期休暇の前には、それぞれが、しっかり本を借りて帰ります。(『イン・ザ・ミドル』の「長期休暇中の読書」(236~238ページ)というセクションで、詳しく説明されています。)
アトウェルの学校は、メイン州の田舎にあり、公共交通機関もなく、図書館の開館時間も限られているとのことですから、教室の図書コーナーから本の貸出をしない限り、生徒の本へのアクセスは極めて限定的なようです。
生徒の年代や状況にもよりますが、何らかの貸出記録を作りながら、1冊でも本を持って帰ることができれば、次年度、それを踏まえて、よりよい貸出方法が見つかるかもしれません。
次は 「2)アクセスしやすい本を中心とした、読みたくなるような本リストが、それぞれの子どもの手元にあるようにする」です。
ポイントは、「そのリストにある本にアクセスしやすいこと」と「そこから芋づる式に読みたい本が増えること」でしょうか。
例えば、同じ地区の子どもが多ければ、その町の図書館にある本から、複数冊の本がある作家を複数人選び、その作家の本を、一人の作家につき1冊だけ紹介し、同じ作家の本が他にも何冊かあることを示しておきます。 ➡ こうすることで、「作家読み」につながる可能性があります。同様にシリーズの1冊目の紹介も、複数冊読むことにつながる可能性があります。その中に、クラスの子がすでに読んだ本や、ブックトークで紹介した本などがあると、さらに興味がわくかもしれません。
最後に、「3)読みたい本の探し方を教える」です。
「読みたい本の探し方」については、『読書家の時間』(新評論、2014年)」の「5年生の最初の10時間」の6時間目、「こうやって本を選んでみようーー教師の選書テクニック大公開!」(14ページ)がお薦めです。
このレッスン自体は、リーディング・ワークショップ開始後6時間目を想定して書かれていますが、夏休み前にも補強したい内容です。以下のようなことも書かれています。
・教室にあるテレビに子どもたちが利用している図書館のホームページを出して、本の探し方や予約の仕方を説明する。
・映画やドラマの原作本、自分が好きな作者がどんな本を他に書いているのかを、その場で調べてみる。
・ネット書店のホームページを見せたり、教師の読みたい本リストを見せたり、また、過去に受け持った子どもたちがどのようにして本を探していたかを話す。
*****
いずれにしても、教師自身が夏休み、本を読むのを楽しみにしていることが伝わるのが、一番かも、とも思います。忙しい夏かと思いますが、どうぞ、本と共に楽しいお時間を!
*****
★本が手元にあるようにしただけで成果があったという、以下のような研究結果もあるそうです。この研究は、アトウェルが教室の図書コーナーの本の貸出を始めることの後押しになっているようです。
経済状況が極めて厳しい地域の学校で、恵まれない環境の生徒832人に、長期休暇中の前に読む本を12冊選び、持って帰らせた。それをしなかった生徒と比較して、読解の点に有意差が出ただけでなく、休暇中の読書量が増え、その後の読解力についても、サマー・スクールに出席した子どもと同じような結果がでた(『イン・ザ・ミドル』237ページ)。
アトウェルは、この結果を知り、次のように記しています。「この結果に励まされたものの、考え込んでしまいました。休暇前のミニ・レッスンで、教室の外でよい本をどうやって見つけるのかを教えてきましたが、多くの生徒が実行していなかったからです。<略> 休暇前に生徒に本を貸し出すことにはそれなりのリスクを伴いますが、やってみるとうまく行っています」(『イン・ザ・ミドル』237ページ)。
0 件のコメント:
コメントを投稿