まずは、相模原市の小学校で教えている都丸先生からです。今年度は担任がないので、小学校6年生の自分のお子さんを念頭に、「卒業に際して、生きることをあらためて考えるきっかけとなる詩、絵本」を考えてくださいました。
絵本は、ヨシタケシンスケさんの『このあと どうしちゃおう』です。この絵本は「死」から「生」を考えることができ、この絵本を読んで、とても前向きな気持ちになったので、子どもたちと一緒に読んでみたいと思ったそうです。
詩は谷川俊太郎さんの『ぼくは ぼく』(童話屋)から、以下が特にお薦めとのことです。
「自分をはぐくむ」
「たったいま」
「こころの色」
「すき」
「生まれたよ ぼく」
「なんでもいいひとつ」
「わくわく」
「くらやみ」
「えんぴつのうた」
「いる」
「みえないあみ」
「もどかしい自分」
今回、読み直してみて、「こんなにやさしい言葉で、こんなに深いことが表現できるなんて」と驚いたそうです。例えば、選んでくださった詩の一つ、「えんぴつのうた」は以下のように始まります。
まっしろいかみに
ひとすじの せんをひくとき
あたらしいちへいが ひろがる
<中略>
かんじる おもう かんがえる
みる きく しるす こころみる
えんぴつとともに
いつも いつまでも
そういえば、『イン・ザ・ミドル』の著者アトウェルは、ほとんどの授業を「今日の詩」で始めます。詩は短いので短時間で扱えるにもかかわらず、びっくりするぐらい多くのことを学べる・教えられる、とアトウェルは力説しています。(詳しくは『イン・ザ・ミドル』112~117ページ、「毎日読む『今日の詩』」をご参照ください。)
詩といえば、 神戸で教える知人の先生は、灰谷健次郎の選んだ子どもの詩に、石川文洋氏の写真が合わさった『しりたいねん』(倫書房、1997年)を紹介してくれました。
やさしい言葉の詩でも、くすっと笑えたり、考えたりできることを教えてくれます。以下の「下駄」という詩などは、アトウェル流にいうと、日常のささいな瞬間をとらえている、事物に語らせる詩?かも、と思います(『イン・ザ・ミドル』226~227ページ参照)
下駄 (明石 孝 11歳)
台所に
僕のぬいだ靴の片方が
ひっくり返っている
妹の下駄は
八の字になっている
母の下駄はそろっている
こんな所にも
僕がいた
この先生は、上記の本から、「たったひとりだけ」「おやじ」「しりたいねん」「けっこん」などの詩もご紹介くださいました。関西弁の響きを感じるものもあり、「言葉の響き」「観察」など、学年末でなくても、いろいろなミニ・レッスンにも使えそうです。
私からは絵本を紹介します。私の場合は、学年末を意識すると、どうしても、自尊感情、自分らしさ、違いを受け入れること、失敗からの立ち上がり、新たな出発というテーマのものが多い気がします。私自身、失敗が多く、自分にがっかりすることが多いからかもしれません。
まず、『てん』『~っぽい』『そらのいろって』の3部作で有名はピーター・レイノルズから2冊。
・『ほしをめざして』。何かの区切りが「終わり」でなくて、「新たな出発点」であることがよくわかります。
・『ゆめみるハッピードリーマー』。商品紹介を見ると、ADHDの子どもを描いているようですが、自分らしさ、夢など、多くの人が楽しめそうです。
エイミー・クラウス・ローゼンタールからも2冊。(なお、ミドルネームのクラウスは、本によってはクローズと書かれています)
・『ディアガール おんなのこたちへ』。 題名のとおり、「女の子へのエール」ですが、このエールは女の子だけにあてはまるものではないと思います。「どうして、著者はこんな題名をつけて、女の子あてにしたのかな?」「女の子にしか、あてはまらないものはあるのかな?」「女の子らしさって何? 誰が決めたの?」等と、広がっていきそうな気もします。
・『あひるだってば! うさぎでしょ!』 これは、とにかく大好きな絵本です。自分の見方に固執している間は、何も生まれないことを、しっかり教えてくれます。こういうことを子どもの時に学べば、自分の主張にしがみつき、対立を解消できない大人も減るかも?、と自らも省みつつ思います。
「メッセージは直球で伝える!」という感じのトッド・パールからは『ピース・ブック』。ピースはこんなに広くとらえられるというのが、よくわかります。ちなみに、インターネットには、英語ですが、この著者自身が読み聞かせているものもあります。
Peace Book は以下です。2分ぐらいです。
https://www.youtube.com/watch?v=QklQ8fWXV8Y
その他、「失敗してもいい、そうやって人は学ぶのだ」というメッセージを伝える本もあります。書名は It's Okay to Make Mistakes で、著者による読み聞かせは、以下です。こちらも2分ぐらいです。
https://www.youtube.com/watch?v=QZlhN55iJ2Q
トッド・パールには、それぞれが違ってもいい、という本もあり、それは 『ええやん そのままで』という題名で邦訳がでています。
R.J.パラシオからは、小説『ワンダー』の絵本版で『みんなワンダー』。小説のエッセンスがしっかり入っています。
今日、最後に紹介するのは、「いま」という現在を生きること、そして寛容の大切さを、ユーモアたっぷりに教えてくれる、モー・ウィレムズの『エドウィーナ』。恐竜が絶滅している、ということを知らなかった恐竜の話。いやあ、面白かったです。自分にとってはビックリするぐらい大変な事実に直面しても、「今できること」「今を生きること」以外は、どうでもいい、こんな強さもあこがれます。
これの動画版は、英語ですが、音楽もついているので、ちょっとドラマチックな感じもあって楽しいです。この動画は5分弱です。
https://www.youtube.com/watch?v=wZTA2HAKli4&list=PLBCzIj7I1kj7FllEJaO0yEKEimGw95AEG&index=29&t=8s
絵本について書く時間は楽しくて、時間があっという間に過ぎます。忙しい年度末、年度始めですが、いい(絵)本との出合いを楽しみつつ、過ごしたいです。
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