2019年5月4日土曜日

連休明けにお薦め? 「ピザ一切れ」/「一粒の小石」系のミニ・レッスンやカンファランス

 ライティング・ワークショップをされている先生の教室では、連休明けに、連休中での出来事を題材にした作品に取り組む子どもたちがいるかもしれません。「連休中のこと」という、大きなトピックに意欲的に取り組み、頑張ってできるだけたくさんの情報を網羅しようとしている子どもたちがいれば、クラスや子どもによっては、「ピザの一切れ/一粒の小石」系のミニ・レッスンやカンファランスの導入を検討してもよいかもしれません。

 「ピザの一切れ」という書き方は、幼稚園から中学生ぐらいを対象とした、書くことについてのミニ・レッスン集 Craft Lessons: Teaching Writing K-8(Stenhouse, 1998)の中で紹介されています(58ページ)★。

 これは「夏休み」や「家族」といったな大きなトピックを扱うときに、その中からポイントを絞るということです。ピザ全部が夏休みの思い出であれば、その一切れずつに思い出を一つずつ入れ、その中の一切れに焦点をあてます。ピザ全体が家族のメンバーとすれば、その中の一切れ、たとえば「おじいちゃん」に焦点をあてます。

「家族」を例に考えると、ピザの一切れを「おじいちゃん」に絞っても、「おじいちゃん」というトピック自体も、まだまだ大きなトピックです。ですから、今度はピザ全体を「おじいちゃん」にして、一切れ一切れにおじいちゃんのいろいろなことを書き、そのピザ全体から、さらに「一切れに絞り込む」ということもできます。

 子どもたちにとって――――特に書きたいことがたくさんあると――――ある作品に入れる情報を絞りこむ(あるいすでに書いたことを削除する)というのは、簡単ではないようですから、こういうミニ・レッスンやカンファランスが必要な時期もあるように思います。

 一つの作品に入れる題材や情報を絞り込むというカンファランスの好例が、『イン・ザ・ミドル』(ナンシー・アトウェル、三省堂、2018年)の「題材が大きすぎる」というセクションにあります(258-259ページ)。

 ここでは、お父さんのお誕生日にプレゼントするために、お父さん宛ての詩を書いている中学生の女の子アメリアへのカンファランスが描かれています。アメリアの下書きをみて、アトウェルは、お父さんのいろいろな部分から、「思い切って一つを選び、それに肉付けして、考えたことや感じたことを加え、お父さんとアメリアがどんなふうか示せないか」と助言しています。

 そこで、アメリアは「お父さんと夜にふたりで散歩したこと」を選びます。(その結果は、お父さんと過ごした時間をいとおしく思う気持ちや喜びの伝わるものとなります。今日の書き込みの最後に、その詩を書いておきますので、ぜひどうぞ!)

 大きすぎる題材の中で焦点を絞る、あるいは一般的なことから個別の一つのことに目を向ける、ということは、上記のアトウェルの教室では「一粒の小石の法則」と呼ばれています。(『イン・ザ・ミドル』182-185ページ)。

 この「法則名」は、ネイサンという生徒が「石」について書いた、何も伝わってこない詩の下書きがきっかけで生まれました。このときにはアトウェルは、「小石全般について書かれていても、何も見えないし、聞こえないし、感じるものもない。騙されたと思って、駐車場に出て行って小石を一粒選び、それを持ってきて、それについて書いてごらん」とアドバイスをしています。

 この時のことから、アトウェルの教室では、大きな題材や、一般的なことから、個別のことに絞りこむことを「一粒の小石の法則」という言い方になります。この言い方だと、具体的でイメージしやすく、生徒にとっても思い出しやすいので、こういう呼び方になったそうです。

 ※なおアトウェルの教室には、その他にも「それで?の法則」「頭と心の法則」等々、子どもたちに伝わりやすい書き方のヒントがいろいろあります。詳しくは『イン・ザ・ミドル』174-194ページをご参照ください。

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 一つに絞るということは、ノンフィクションを書くときの一つの方法としても使えそうです。ノンフィクションを書くときのミニ・レッスン集 Nonfiction Craft Lessons: Teaching Information Writing K-8★★(Stenhouse, 2001)では、「一つに焦点を絞る」というミニ・レッスンがあります(56ページ)。

 何かについて調べていると情報がたくさん集まります。そのときにできる一つの方法として、一つに絞るということが、4ー8歳向きの、動物がテーマの絵本2冊を例にあげて、紹介されています。

 1冊はカリブーという動物。この絵本の著者は、カリブーについて、事実をリストすることもできるけど、それをしないで、1匹の母カリブーと、そのカリブーの雄の子どもに焦点をあてて、その生態を描いています。もう1冊はイワシが缶詰になるまでの過程。これも一匹のイワシに焦点をあてています。そんなことを、教師はミニ・レッスンで絵本を示して語っています。

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 では最後に、アメリアがお父さんのお誕生日のために書いた詩「収穫」をどうぞ!

「収穫」

声の届くところには誰もいない
真っ暗な夜を
私たちは声でつつむ
葦の葉を揺らす風が
月の青白い光をたたえた沼の向こうへ
私たちの会話を運ぶ。
ときおり噴き出す歌と笑い声が
舗装された丘にこだまして
アスファルトの上には
定まることなく混じり合う
木々と私たちの影。

家への帰り道
心地よい沈黙の中へ私たちは滑り込む
錆ついた街頭の光のプールを歩き
ちりばめられた星空の下に出る。
じっと見る先には
きらめく星たち
2人はどちらも深く息をする
ともにいるこの一瞬と
その上に刻まれた模様を
収穫するために。

ーーーアメリア・ニールソン
(『イン・ザ・ミドル』259ページ)

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★の本も、★★の本も、どちらも『ライティング・ワークショップ』(新評論、2007年)の著者、ラルフ・フレッチャー(Ralph J. Fletcher)とジョアン・ポータルピ(JoAnn Portalupi)によって書かれています。

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