ライティング/リーディング・ワークショップの優れた実践者たちは、実践を積み重ねるなかで、それぞれのやり方を、経験から生み出しているように思います。そして、多くの場合、読み書きをうまくつなげています。
◆『ライティング・ワークショップ』の中に、「美味しい料理を味わうことなく、名シェフになりたいと思うでしょうか」という文があります(『ライティング・ワークショップ』95ページ)。上手に書くためには、優れた文章を味わう必要があります。優れた文章の響きを味わうためにも、書き手が使える技を学ぶためにも、また、題材のヒントを得るためにも、ライティング・ワークショップでは、(絵)本の読み聞かせが活用がされています。(詳しくは『ライティング・ワークショップ』第7章「ライティング・ワークショップのなかでの本の使い方」をご参照ください。また、7章以外にも、51~52ページ、142~143ページも参考になります。)
◆ リンダ・リーフという優れた実践者は、「人は、書くことをせずに読むことはできるが、読むことをせずに書くことはできない」と、自身の著書 Quickwrite Handbook: 100 Mentor Texts to Jumpstart Your Students' Thinking and Writing の中で述べ(8ページ)、書くことにメンター・テキスト★を活用しています。
(★メンター・テキストとは、メンターつまり指導者、助言者、師匠となってくれるようなテキストと、ということです。メンター・テキストについてはWW/RW便りで何回か取り上げていますので、ご興味のある方は、WW/RW便りのブログのウエブサイトhttps://wwletter.blogspot.com/2019/02/blog-post.htmlを開き、ブログサイト内で「メンター・テキスト」で検索してください。)
◆ WW/RW便りで何度も紹介している『イン・ザ・ミドル』のアトウェルは、「今日の詩」で毎回のワークショップを開始していますが、これも、読み書きのつながりのある時間です。「今日の詩」は、詩を一緒に読む時間で、生徒は書く練習は行いません。それにもかかわらず、「優れた文章について、(段落以外の)教えたいすべてのことが、詩から教えられる」というぐらい、書くことにおいても、効果的な時間となっています。(「今日の詩」については、『イン・ザ・ミドル』112~117ページ、67~68ページをご参照ください。)
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上記のリンダ・リーフの著書で紹介されている「クイックライト」を、以下、簡単に紹介します。リーフは、週に何度か、「クイックライト」という方法に短時間を使うことで、授業を開始しています。
・題名 Quickwrite Handbook は、「quick(早く)とwrite(書く)をつなげた一語」+「ハンドブック」。つまり、「早く書かせる」という、リーフの実践を土台にしたハンドブックです。その副題は「生徒の考えること・書くことにエンジンをかけるような100のメンター・テキスト」(100 Mentor Texts to Jumpstart Your Students' Thinking and Writing)で、副題のとおり、多くのメンター・テキストが本に収録されています。ポイントは、短いメンター・テキストを使って、読むことと書くことをセットにすることで、メンター・テキストが書くことの出発点として使われています。この実践は、いわゆる「お題」を与えて書かせる、という練習とは、まったく異なります。
・まず、メンター・テキストを読むことからスタートです。メンター・テキストは、通常、短いもの(1ページ程度の散文、詩、絵、やや長めの本からの抜粋、短い絵本など)で、それを読んでから、それに対して、2,3分、ざっと、書きます。(3ページ)
・この、2,3分、書く時間ですが、いくつかバリエーションがあります。
授業で紹介されたメンター・テキストの「全体」から、頭に浮かんだことを、2,3分、できるだけ早く書きます。あるいは、「ある行(あるいはその一部)」を借りて、その行に自分の考えを導かせるような感じで、そこから思いついたことを、2,3分、止まらずに書き続けることもあります。また、「ある行やある文体」に注目し、それを使って書くこともあります。反応として、絵を書くこともOKです。(4ページ、12ページ)
・メンター・テキストの質がよければ、書き手は刺激を受け、連想することや、反応したいことがでてくるものです。ですから、メンター・テキストの選択はとても大切です。しかし、どうしても何も書けない子どもには、メンター・テキストからその一部をノートに写すように指示することもあります。(6ページ)
・2,3分、たっても、半数以上が書いていれば、1分程度、時間を延長します。(8ページ)
・このクイックライトで書いたものを、それぞれの生徒が、すぐに見つけられるようにしておくと便利です。2~3週間ごとに見直してみると、ここからさらに発展させて、ひとつの作品が生まれることもあります。つまり、クイックライトは、これからの作品を生み出す方法の一つとしても使えます。(9ページ)
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上記のページは、Quickwrite Handbook: 100 Mentor Texts to Jumpstart Your Students' Thinking and Writing(Heinemann社から、昨年2018年に出版)のページです。
リーフのこの本の中にも登場し、邦訳がでている絵本に、シンシア・ライライントの『わたしが山おくにすんでいたころ』(ゴブリン書房、2012年)があります。クイックライトのメンター・テキストと思って考えると、たしかに、自分の子ども時代の情景を思い出したり、子ども時代の大切な人に思いがいったりします。『ライティング・ワークショップ』の著者の一人ラルフ・フレッチャーは、リーフのクイックライトの実践を、「自分が乗る言葉の波を見つけられるまで、他の人の言葉の波に乗るようなものだ」とも言っていますが、なるほど、と思います。
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