カンファランスという方法は、これから間違いなく教え方の主流になります。★
生徒は、教師が言っていることは自分に対してなのかどうかわからないような授業が延々と続くと、本当に自分のことを大切な存在として見てくれているのか疑いたくなってしまいます。しかし、カンファランスではそのようなことはありません。教師は自分に対してのみ話してくれているのですから。それも、自分にとって最も必要な点を発見して、ピンポイントで。
そこで、今回はルース・エアーズさん★のカンファランスをする際の10のヒントを紹介します。
授業一般にも、そのまま役立つヒントだと思います。(かなりの部分、『言葉を選ぶ、授業が変わる!』の中で紹介されているアプローチと重なりますので、詳しく知りたい方は、そちらをお読みください。)
1.情熱的になる
情熱をもった人と一緒だと、自分もワクワクしてきます。情熱は伝染します。なので、自分が情熱をもっていたら、生徒たちも書くことに興奮します。
2.作家になる(作家のように話す)
作家たちは話し合えると、互いに花開きます。(同人誌がたくさん出されていたのは、そのためです!)いいカンファランスは、作家同士の間で行われます。あなたは審査員でも、批評家でも、優しい言葉を発する人でもありません。話している相手(生徒)よりも、少しだけ書くことについて知っている先輩の書き手です。
3.生徒のエネルギーのレベルにあわせる
毎日がエネルギーに溢れた書く日ではありません。波に乗れない時もあります。一方で、自分でも信じられないぐらいに書ける日もあります。なので、生徒のエネルギーを測って、それに合わせる形で話してあげてください。
4.成長し続ける書き手と話していることを忘れない
生徒に完璧な文章や作品を求めることはできません。成長しつつある書き手が間違いをするのは避けられません。大切なことはいい文章ではなくて、成長し続けることだということを忘れないでください。
5.あとで戻ってチェックする
カンファランスでは、生徒にどうしたらよりよい書き手になれるかの提案をします。それを実際にどう活かしたのか必ず確認してください。(カンファランスは、教師が教えて満足するためにするのではありません!)カンファランスを踏まえて、よりよい書き手にまだなっていなければ、さらなる成長のチャンスを提供できることを意味します。
6.本当に知りたい質問をする
あなたがすでに答えを知っている質問をするのは、両者にとってよくありません。誘導する質問は、生徒もわかってしまいます。もし何かを試してほしいなら、質問するのではなくて、具体的に伝えてください。質問は、本当に知りたいことだけにしてください。(ということは、教師も学び続けられるアプローチだということです!!)
7.ほとんどできていることに注目する
生徒が書き手としてしていないことすべてに注目するのではなく、ほとんどできそうなことに焦点を絞ります。それこそが、成長を促す最善の方法だからです。弱みをいくら指摘されても、成長に転換できる人はあまりいません。でも、ほとんどできていることや強みは、成長に結びつけることは容易です。★★
8.作品よりも書き手を大事にする★★★
書くことは、極めて個人的な営みです。ですから、生徒があなたのアドバイスを受け入れたくない時もあります。教師であるあなたがどれだけ生徒の作品に入れ込んで、手を入れたところで関係ありません。書き手である生徒本人がどうしたいのかが、すべてですから。従って、作品を直すことにエネルギーを注ぐのではなく、書き手に教えることに焦点を当ててください。
9.目的(作者の意図)こそが大切
私がどんなところを教えようとか探している時に、何よりも大切にしているのは生徒がその作品を通して何を言いたいのかということです。別な言葉で言えば、作品の目的(ないし作者の意図)を強めることです。まだ下書き段階なのに、言語事項で気になったところを直す努力をしても、まったく意味がありません。
10. 祝う
難しいことに挑戦するのはいい気分がし、書くことはとても挑戦しがいのあることです。そんなことに生徒たちはみな挑戦しているのですから、カンファランスの最中に祝ってあげてください。「カンファランスの前よりも後の方が、生徒たちは元気にならなければならない」と言ったのはドナルド・マレーです(彼のことは、本ブログで度々紹介してきました。ブログの左上に彼の名前を入れて検索してください)。祝ってあげると、書き手のエネルギーが上昇します。書き手である生徒がしているいいことを具体的に指摘してあげるだけでいいのです。
以上の10のヒントの中で、『ライティング・ワークショップ』と『作家の時間』ですでに紹介されていないのはどれでしょうか?
★ エアーズさんは、中学校の国語教師を務めた後、現在はインディアナ州のWawasee教育委員会で書き方の教え方のコーチ(日本でいえば指導主事ですが、することはかなり違います。要するには、教師がライティング・ワークショップの授業を教室でしているような感じで、先生たちのサポートをします!)をフルタイムでしています。
指導主事たちが、カンファランスができるようになると、研修や学校訪問が、教師にとっては(指導主事にとっても)時間の無駄ではなく、ありがたいものに転換します。カンファランスないしコーチングだと、それをする側もよく学べますから。ということは、いまの授業や研修は学びが少なすぎるという大きな問題を抱えているわけです。単に習慣でしているだけで。(習慣に流される必要はありません。他により効果的な方法があるのですから!)
★★ 一斉授業の効率が悪い理由の一つは、これにあります。一斉授業で、一人ひとりの生徒の「ほとんどできそう」を把握することは至難の業ですから。あなたは、そのためにどのような手を尽くしていますか? その方法に興味のある方は、『一人ひとりをいかす評価』をご覧ください。
もう一点、情報を加えると、この「ほとんどできそう」は専門用語で「発達の最近接領域(ZPD)」と言います。わかりやすく言うと、「今日、誰かの助けでできたことは、明日は自分一人でできる」ということです。すでにできていることや簡単すぎたら、助けは必要ありませんし、まったくできていなかったり難しすぎたりしたら、助けがあってもできるまでは相当の努力が必要です。来年は、このZPDに関係した本を何冊か出します。『オープンニンマインド 〜 子どもの心をひらく授業』(1月発売)、春以降には『成績をハックする』の続編の『宿題をハックする』や、『選んで学ぶ~学ぶ内容・方法が選べる授業(仮題)』『親と教師のためのマインドセット入門(仮題)』などです。
それほど大切なものなのですが、日本では残念ながらほとんど知られていませんし、それが活用されていません。(一斉授業が授業の中心である限りは、難しいと言えます。ZPDは一人ひとり違うので、一斉授業はそれを無視した教え方なのです。それが、よく学べない理由です。)
★★★ これは、作家の時間(ライティング・ワークショップ)がはじまった時からの大事な原則です。「作品に対して教えているのではなくて、書き手に対して教えている」のですから。でも、日本では依然として主流であり続けている添削は、逆さまであり続けています。書き手はどこかに飛んでしまって、教師は作品とのみ格闘しています。それが、書くことが好きになれず、書く力もつかない原因になっています。(教師を忙しくしているだけ、というオマケ付きで。)
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