『Who’s Doing the
Work?(いったい誰が仕事をしているのか?)』というタイトルの本をしばらく前に読みました。★この本は、自立した読み手を育てるためには「責任の移行」を意識した取り組みが不可欠だという考えの基に書かれた本です。「責任の移行」については、
この本の「はじめに」と「まえがき」には、次のようなことが書かれていました(数字は、ページ数)
ix コーチがいるときにはできて、いないときにはできないのでは、コーチングの意味はない。選手(子ども)自身が自分で直せるようにサポートするのがコーチの役割。その意味で、「責任の移行」は大切。最終段階では、コーチは何も言わず、「あなたができること/試せることは何ですか?」と返すだけ。自立を促すだけ。
x 自分で問題解決ができ、修正/改善でき、自分で考えられるようにする! ~ 日本の読みの指導は、ここを目指して行われているでしょうか?
最初は教師である私に仕事をさせてもらって、その後はフィードバックを中心に提供します。
まえがき developing
agentive readers ~ 主体的な読み手を育てる
2 電気を流され続けた犬は、扉が開いていても、逃げなくなってしまう。
Learned
helplessness(学習性無力感) = 選択が与えられていないことに慣れてしまって、他の可能性を考えられなくなってしまう。 ~ これって、教師をはじめ、生徒も!! 多くの人が日本で体験していること。社会全体でも?
3 足場は取ることを前提にした足場のはずなのに、いつまでもそこにある足場に転換してしまっている!
指示されないと動かない状況を、自分たちがつくっている。当人が判断して(選択して)動くのではなく。それでは、自立した家庭人(学び手)にはならない。常に指示待ち。
4 つまり、ownership/agencyがない状態!
「agentive readers」という発想や、教育の中に「ownership/agency」という考えが存在しない状態が続いている気がします。(そもそも、それらがないので、これらを訳せない状態も続いています。)
この後、第1章 ゴールを明確にする
第2章 読み聞かせ ~ 読むことを学ぶ理由を生徒たちに提供する
第3章 いっしょ読み(Shared Reading) 読み聞かせとガイド読みの間
第4章 ガイド読み: 教師の観察の下に練習する
と紹介された後に、今回、主に紹介する
第5章 一人読み ~ 読むことを好きになる読み方
があります。日本で国語の時間には残念ながら「一人読み」をするという発想はありません! それは、「読むことを好きになる読み方」を排除していることを意味してしまいます。それに比べて、リーディング・ワークショップ(読書家の時間)は「一人読み」を中心に据えた教え方・学び方です。どおりで、みんなが読むことが好きになり、かつ読む力をつけるわけです!
があります。日本で国語の時間には残念ながら「一人読み」をするという発想はありません! それは、「読むことを好きになる読み方」を排除していることを意味してしまいます。それに比べて、リーディング・ワークショップ(読書家の時間)は「一人読み」を中心に据えた教え方・学び方です。どおりで、みんなが読むことが好きになり、かつ読む力をつけるわけです!
104 ダンスの例えだと、一人読みはリサイタル。
読み聞かせは見本を見る。いっしょ読みは学ぶ。ガイド読みは練習する/リハーサル。 ~ このように「責任の移行」モデルの下でしっかり段階的に取り組まずに、いったい日本の国語教育は何を目的に、何をやり続けているのでしょうか?
106 一人ひとりの子どもが、ぴったり自分に合った本を読むのが一人読み。個別カンファランスの役割の大きさ!
108 一人読みこそが、読みの指導の核。 ~ 悲しいかな、この発想がまったく欠けている日本の国語教育。教師ががんばることが教えることだと錯覚しています。子どもたちががんばる/出来るようになるのではなく。
108~110 一人読みを特徴づけるもの ~ 以下の7つの特徴が、今回の書き込みの最大のポイントです。読みの指導でこれらが満たせているか否かが、指導の良し悪しを左右すると言えるぐらいに!
・一人読み(こそ)が、生徒をよりよい読み手にする ~ 教師がいくら頑張って指導しても、生徒が読まない限りはよい読み手にはなれない! 自分に合ったたくさんの本を読むことが、よりよい読み手になる最善の方法! 自転車の乗り方をいくら講義されても乗れるようにはならず、自分で転びながらも練習するしかない。
・一人読みが、自分の読みのパワーを気づかせる(に磨きをかける) ~ それは、自分が読みたいものでこそ可能。読みたいものでこそ、本当の力を使う(あるいは、もっているものを超えて、力を身につける)。
・一人読みで、読むことの楽しさを実感できる ~ 本とのいい関係こそが大切だし、読む量と読む力をもたらす。
・一人読みは、「一人ひとりをいかす教え方・学び方」★★★を実践している ~ 各人の興味関心や(本の難しさや易しさ等の)レベルに応じて、自分に合った本を読んでいる! 一人読みの間に行われるカンファランスも、個々人を読み手として成長させるために行われる。読んでいるものの内容理解は二義的な目標。
・一人読みは、すべての責任が一人ひとりの生徒によって担われている ~ ミニ・レッスンや「いっしょ読み」等では、教師も含めてみんなで問題解決をするので、各人は引いてしまう=傍観者になることができるが、一人読みではそうはいかない。自分で判断して読むスキルを使いこなすことが求められる。失敗することも含めて。
・一人読みは、教師に自分がミニ・レッスンやガイド読み等で指導してきたことがどれだけ定着しているのかを把握する機会を提供する。そして、その情報は、教え方の改善のきっかけにもなる。
・一人読みは、カンファランスの時間でもあるので、教師と生徒のいい関係づくりと、読みのコミュニティーづくりに貢献する ~ 互いに読んだ本について紹介し合ったり、推薦し合ったりする仲間意識が芽生え、そして実際、たくさんの本が紹介される。
117 一人読みには複数の本が必要
常に、いくつかのレベルや種類の選択肢を読書家は自分に提供している。子どもにも同じような選択肢があって、おかしくない!!
★ Who’s Doing
the Work? How to say less so Readers can
do More, by Jan Burkins and Kim Yaris, from Stenhouse
(2016)
★★ この「責任の移行」モデルは、読み方の指導を改善するために生まれたもので、本書をはじめ英語ではたくさん出ていますが、残念ながら日本で翻訳するのが難しいです。マーケットが少ないので。(圧倒的多数の人は、教科書を使った読解教育が読みの教え方だと錯覚を起こしたままですから!)しかし「責任の移行」モデルが紹介されて30年以上たった今では、英語圏ではすべての教科で使われています。それなら日本でもニーズがあるだろうと年内には翻訳が出ます。タイトルは、『「学び」の責任は誰にあるのか?(仮)』ダグラス・フィッシャー&ナンシー・フレイ著、新評論です。
★★★ 「一人ひとりをいかす教え方・学び方」については、『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』キャロル・トムリンソン著、北大路書房を参照してください。
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