NPO法人みらいずworksの小見まいこさんが中学校で実践されているリーディング・ワークショップの授業の参観記を書いてくれました。「みらいずworks」は、「希望が持てない子ども・若者に対し、身近な家族や友達との人間関係を深め、地域や社会と関わりながら社会参画意識や課題を探究し学び続ける力を育てることで、『自分から自分らしくみんなとともに、社会をつくる人』を育てます」を活動目的に掲げて、主に学校や先生たちをサポートしている民間団体です。
佐藤可奈子先生が実践されている中学校の3年生のリーディング・ワークショップ授業を2019年12月に参観してきました。初めてリーディング・ワークショップの見学。生徒の様子として驚いたことは、自分の時間を選択し、その時間に没頭していたことです。佐藤先生は、受験目前の3年生ということもあり、読書だけでなく、テスト対策をするということも選択肢に入れていました。そのため、テスト勉強のためにワークブックに取り組む人、国語の教科書題材の理解を深める人、選書した本を読む人、レターエッセイを書く人がクラスに混在していました。まさに、自分自身の状況や関心に合わせた「選択する学び」★が行われていました。
授業の成果物は、レターエッセイを最低1本は書くことです。選書して、自分の好きな本、苦手な本を知りながら、自分が面白いと思えた本について、批評的に評価したり、自分の反応や価値観を説明したり、していきます。今回の生徒は、リーディング・ワークショップに取り組むのは2回目だそうです。1回目の感想では、以下のような感想があったそうです。「第一期で自分の好みの本がわかったので、第二期では好みの本を中心に、3冊読了を目標にして、第一期よりも充実したリーディング・ワークショップにしたいです」「本を読むだけでなく、読み返しやアウトプットにより効果があるなと感じた。この有意義な時間のお陰で書くことの楽しさもわかったので、次回は書くこともしてみたいと思った。また、読むペースや質をあげたい」一期目の経験や学びを踏まえ、二期目である今回の授業では、生徒は自ら目標を設定し、自分のペースで、意識的に読む、より伝わるように書く時間を創っていたことがわかりました。
佐藤先生は、生徒が自分の好きな本を読めるように様々な工夫をしていました。第一に、読みの手本を準備することです。リーディング・ワークショップで活用するスキルがわかるように、2冊の絵本に、佐藤先生の問い(問いのスキルの見本)が付箋で書き込まれていました(写真を参照)。それを選択した生徒は、絵本で問いのスキルを使って読むことを練習したり経験したりします。
第二に、選書リストをつくることです。これは教師がつくるのではなく、生徒がおすすめ度合い10点の満点をつけた本を黒板の下にリストアップして貼り付ける(写真を参照)、「自分にそっくりなもう一人の自分」におすすめする本をブックトラックに集めて借りられるようにする(写真を参照)、など生徒目線による選書リストをつくることを実践していました。それにより、選書に迷った際に、参考にできることに加え、他の生徒の読みを感じながら、視野を広げて本を選び、自分の好きな本を選ぶ力を身につけていくことにもつながっていきます。
第三には、環境づくりです。当日授業が行われた図書室には、ゴザが敷かれ、その上で寝転んだり、一人で自分の心地よい場所を選んで、読みをする生徒たちがいました(写真を参照)。どこで、誰と読むかも自分で選ぶことができます。同様に、心地よいBGMが流れていました。休憩時間から流しておき、生徒が徐々に自分の世界に入り込むための仕掛けだと感じました。佐藤先生は、どの工夫も試行錯誤で行っているようでした。生徒の様子を見ながら、より良い学びの環境づくりをするのが教師の役割であることを再確認しました。
現在は、佐藤先生らと、「あなたの授業が子どもと世界を変える」(ジョン・スペンサー、A・Jジュニアーニ著、吉田新一郎訳、新評論、2020年)をオンライン・ブッククラブしています。その中で、自立的なマインドセットの鍵となるのは、「自発的に行動すること」と「自己管理できること」の二つの要素であり、自立的な学び手には、両方が必要だと論じられています(107p)。佐藤先生は、リーディング・ワークショップは、この二つの要素を満たしていると感想を記していました。自立的なマインドセットは、すぐに育つものではなく、自発的に行動する環境や機会があり、自分で目標や計画を作りながら、効果的な方法を選択して、自分で学ぶことの意義や楽しさを実感していく。その繰り返しで育っていくものだと学びました。
リーディング・ワークショップはまさに、自立的な学び手を育てる実践であり、これからの学びをつくる上で非常に参考になる方法です。私は教員ではないので生徒向けに授業の実践は難しいですが、リーディング・ワークショップによる授業を知ってもらえるように、事例発表やオンライン・ブッククラブの機会を作るなどして啓発をしていきたいです。
★ 生徒が選択できる授業はとても大事です。自分が主役になれる度合いが格段に高まりますから。もし、選択する部分が一切ないと、単に教師にお付き合いするだけになりかねません。その大切な選択を生徒に提供するための情報は、『教育のプロがすすめる選択する学び』で得られます。もちろん、リーディング・ワークショップとライティング・ワークショップの授業は、上で紹介されていたように生徒の選択を最大限に活かした実践と言えます。
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