「書くことを教える先生は、3つの分野の専門知識に頼って教えている。その3つの分野の専門知識 とは、(1)生徒を知ること、(2)どうやって教えるかを知っていること、そして、(3)書くことそのものについて何かを知っていることである」(ラルフ・フレッチャー)。
今週の「WW便り」に何を書こうかと考えつつ、本棚から何冊か引っ張りだして見ているうちに、『ライティング・ワークショップ』の共著者の一人の ラルフ・フレッチャー氏の、上に引用した言葉に2回も出合いました。
それでせっかく2回も目にしたので、今週の「WW便り」はこの言葉から書きます。
この言葉を考えていて思った一つの結論は、「皆さん、ぜひ、WWのいい本を書いてください!」です。
その理由は、今日のブログの最後に書くことにして、まずはこの3つの専門知識について私が思ったことを書きます。
(1)生徒を知ること
たしかにカンファランスをするためにも、ミニ・レッスンで何を教えるかを決めるためにも、生徒を知ることは基本だと思います。
それは、WWで教えるという大きな根のところに、「生徒に/生徒と、学ぶ」、「教室に学ぶ」ということがあるからではないかと思います。
このブログでも何度か紹介した、ナンシー・アトウエル氏も、以前(WWを始める前)の自分について、「自分のつくった素晴らしいカリキュラム/授業案を検討し、その素晴らしさがはっきり分かるようにリサーチをし、そのカリキュラム/授業案をよりよくすることに熱心だった、しかし、自分が教室で学ぶことはなかった」というようなことを書いています。
そして現在の自分については、「教室で学んでいる。生徒たちと私が共に学び、次に生徒が学ぶ必要があると思うことを教える中で、カリキュラム/授業案は展開していく。自分のリサーチからは自分の教え方の素晴らしさではなくて、生徒たちの素晴らしさが分かる」というようなことを述べています。
WWの土台づくりと発展に大きく寄与した教育者のひとりであるドナルド・グレイヴス氏も然り、です。自分のエッセイ集の中で、以下のような面白いことを述べています。
それは、自分(グレイヴス氏)が、先生たちが参観している中で授業をすると、先生たちは、グレイヴス氏の教え方を熱心に見て、そこから何か具体的ないい教え方を得ようとする、というのです。「しかし、それは短期では、確かに訳に立つ事もあるかもしれないけど、長期的に見ると、重要ではない」と彼は言います。
自分が参観する立場にたったときは、自分は生徒を見る、とグレイヴス氏は言います。
生徒がその授業をどう理解しているのか、生徒はその授業を自分の学びとどのように関連させているのか、ここを見ないと、教室の中で起こっていることは本当には分からないと言います。
自分が教えるときだけでなくて、自分が誰かの授業を見るときにも、生徒を知る、ということが大切にされているように感じました。
(2)どうやって教えるかを知っていること
私は英語を教えています。母国語の場合と外国語の場合のWWでは、おそらく違いがあると思うので、英語を教える仲間たちとは、そのことが時々話題になります。
RWではガイド読みという教え方があります(詳しくは『リーディング・ワークショップ』8章126〜132ページをご参照ください)。
外国語のRWでは、ガイド読み的なことはけっこう大切かな?と思ったりすることもあります。その関連で、この前、ガイド書き(?)という本を見つけ、自分のWWのクラスに参考になるかもしれない、と思い読み始めました。
それぞれ自分の教えている教室は違うので、やはり「自分の今いる場」で、どうやって教えるかを知っているのは大切だと思いますし、そのための努力を続けていきたいと思います。
(3)書くことそのものについて何かを知っていること
書き手が書き手を教えるWWなので、これも当たり前のことかもしれません。しかし、このことは、教師が書き手として成長していくことを、求めてもいると思います。
「どうやって、教師が書き手として成長するの?」 という問いが浮かびます。もちろん、書くことだと思いますし、やはり教師も先輩の書き手から学んでいく必要があると思いますし、書き手仲間のコミュニティがあるといいですよね。
ドナルド・マレーというピューリッツァ賞を受賞した作家であり、書くことを教えることに大きな貢献をした教育者でもある人がいます。
彼が、書くことについて教えてくれている本があります。
最近、「詩」を使って教えることにも興味がある私は、その本の中で、彼が詩の書き方について語ってくれている章にすっかり魅了されています。
その本の中では、彼が自分で書いた詩を紹介しながら、その詩をどうやって書いて、どうやって直していったかという過程がはっきり示されています。もし、自分で詩を書くとすると、どうしたらいいのか、ということも、まるでマレー氏から、直接教えてもらっているようにはっきりと、分かります。
*****
さて、ここまで書いて、私がWWについて多く学んでいる本は、欧米圏で出版されている本だということにお気づきだと思います。
WW関係もRWも関係も、本当にワクワクする本が、英語ではたくさん出版されていますが、なかなか日本語のいい本に出合っていません。
もちろん、私の勉強不足で出合っていないだけかもしれませんが、でも2010年の8月23日のブログ「番外編: WW出版事情」にも書かれているように、「現時点でのWWに関する英語と日本語の情報格差は、100対1以上あり、今のままでは広がる一方」なのです。
このギャップを埋めるためにも、皆さん、ぜひWW関係の、日本語で読める、いい本を書いてください! いい実践を積み重ねつつ。
出典:
○ 冒頭の言葉が書いてあったのは以下の2冊です。
フレッチャー(Ralph Fletcher) 氏自身の本は、What a Writer Needs (Heinemann, 1992)です。もう1冊は、Jim Burke氏の書いた Writing Reminders (Heinemann, 2003)の 175ページで、フレッチャー氏の言葉として引用されています。
○ アトウエル氏は、氏自身の上に書いたような変化を、このブログでも紹介したことのある In the Middle (2nd edition), (Boynton/Cook,1998) の3ページで述べています。
○ グレイヴス(Donald Graves)が上に紹介した授業参観について書いているのは、Teaching Day by Day (Heinemann, 2004)の82ページです。
○ まだ読み始めたばかりなので、おすすめできるかどうか分かりませんがガイド書き(?)の本として、Mary Sullivan の Lessons for Guided Writing, Grades 5 & Up (Scholastic, 2008) を読み始めました。
○ ドナルド・マレー氏ですが、『人生、これからがときめきの日々』という日本語で読める本が出ているようです。上で紹介した本は、Crafting a Life (Heinemann, 1996)で、この5章で、詩の書き方をばっちり教えてくれています。この本は残念ながら邦訳は出ていないようですが、これも邦訳があるといいなと思える1冊です。
0 件のコメント:
コメントを投稿