2025年1月3日金曜日

子どもの読み手/書き手としてのアイデンティティーを大切にした国語の授業を!

  一人ひとりの生徒には、読み手としてのアイデンティティーがあるというのが、リーディング・ワークショップ=読書家の時間での生徒の捉え方です。(それに対して、読解に特化した国語の時間の生徒の捉え方は、何でしょうか? できる生徒とできない生徒? 授業に熱心に取り組む生徒とそうでない生徒?)

 リーディング・ワークショップを実践している教師は、生徒たちのことを読書家として接します。ミニ・レッスンが終わって「ひたすら読む時間」に入る際に、「さあ皆さん、読み始めます」とは言わず、「さあ読書家の皆さん、読み始めましょう」と言います。それは、個別カンファランスをする時も同じです。一人ひとりの生徒を読み手としてのユニークなアイデンティティーをもった読者家として接します。最初の質問は、「読み手として、今日は何をしていますか(何をしようとしていますか?)」などであることが多いです。従って、カンファランスの内容は一人ひとりに対して固有なものになります。(共通項が多い場合は、個別カンファランスをしていては時間の無駄になりますから、グループ・カンファランスをしたり、さらに多い場合はミニ・レッスンでクラス全員を対象にするという選択を取ります。)

 書く指導に特化したライティング・ワークショップ=作家の時間も同じです。一人ひとりの生徒を作家として接し、「さあ作家の皆さん、そろそろ作家の椅子の時間です」と呼びかけます。(同じように、社会科では市民や歴史家として、理科では科学者として、算数・数学では数学者として接します。)

 この名称は、馬鹿にできません。接し方が「生徒」として接する場合とは、大きく違ったものになります。生徒を一人ひとりの人間(しかも、読み手や書き手として)尊重する割合が飛躍的に増えます。教師の使う言葉が違ったものになります!

このような接し方(作家の時間や読書家の時間の授業を1~2年続けると、次のようなことを小学校高学年の子どもが言えるようになります(『言葉を選ぶ、授業が変わる!』の63ページ)。

ユーモアのあるのは、ジェシーが得意。彼はファンタジーをたくさん書くんだ。ロンは、本当によい書き手だよ‥‥彼は書くよりも描く方がもっとうまいよ‥‥エミリーはミステリー作品を自分で書くんだけど、細かいところまで書くのが上手だよ。彼女は登場人物たちを上手に描写していたんだ。山場がきちんとあって、読者が解かなければならない謎があったので、本当によいミステリーだったよ。

 このスティーヴンの発言を読んで、あなたはどのような子どもたちを思い浮かべますか? どのような授業が浮かびますか?

 『言葉を選ぶ、授業が変わる!』の著者は、これに次のような解説を付けています(同上、63~64ページ)。

スティーヴンは自分自身やクラスメイトのことを作家と見ています。そのためプロの作家について話すときと同じような言い方になっています。

このとき教師は、スティーヴンが「作家がしていること」を深く理解し、「一人の作家として」アイデンティティーが強化され、それを磨き続けることができるようにと、意識してこの話し合いを行っています。

スティーヴンはクラスメイトについても「多様な作家の集まり」と見ていました。また、実際そのように振る舞っていたため、このときに、スティーヴン以外の仲間も「有能で多様な作家」というアイデンティティーが強化されていきました。

 そのために、教師は子どもが主体的に考え、行動する★問いかけをし続けます。具体的には、すでに紹介した「読み手として、今日は何をしていますか(何をしようとしていますか?)」や「作家として、あなたは今日何をするのですか?」があります。後者の質問の場合、いくつかの特徴があります(同上、72ページ)。

第一に、教師のために課題を行うというのではなく、子どもには作家が行うような視点から書くための枠組みが与えられています。また、そのような視点からの会話がうながされているのです。

第二に、(a)その子どもは「作家」であり、(b)「作家とは何かを作り出す人」という前提が提示されています。したがって、この役割にそって作家としての行動をとらないでいるのは難しくなります。これは議論するまでもありません。つまり、その子どもは、「(作家として)いま執筆している物語の書き出しを考えているんだ」といったようなことを言わなければならないのです。

 似たような質問を、『言葉を選ぶ、授業が変わる!』の著者は紹介(と、それぞれの解説も)してくれています(同上、73~74ページ)。

・「読者として、最近学んだことは何ですか?」

・「作家として、次は何を学びたいのですか?」

・「それをどうやって学ぶつもりですか?」

 日本の授業で、このような問いかけが教師から生徒にされることはあるでしょうか? 上で紹介した言葉や問いかけはまさに、「自立した学び手(読み手や書き手)」として接しているし、サポートし続けている表れではないでしょうか? 主体性(エイジェンシー)が生徒の側にあり、教師はそれを支援する役割を担っていることが明確です。『言葉を選ぶ、授業が変わる!』の本の中では、第4章「主体性、そして選択すること」、第5章「柔軟性と、活用すること」と続きます。

 

★授業や単元や学期や学年が終わったり、学校を卒業しても、自立した読み手や書き手として、本を読んだり、文章を書いたり、いろいろなことを主体的に考えて行動できる人(問題解決者)になることをイメージして日々の授業(カンファランス)をし続けます。

 『言葉を選ぶ、授業が変わる!』は、教師の発する言葉(特に、問いかけ)に焦点を当てた本です。あなたの授業を変えるきっかけになりますので、ぜひご一読を!

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