2025年1月11日土曜日

「共有の時間」から「リフレクション」の時間へ (その1)〜子どもにバトンを渡し、リヴィジョン(推敲、書き直し、考え直し)に繋がる時間へ

 もし、ワークショップの最後に行われることが多い「共有の時間」に、「他の子どもに教える」ことが、選択肢の一つであれば、共有の時間のイメージは変わってくるでしょうか。年末年始に再読していた、読み書きを統合するワークショップの本『The Literacy Studio』(★1)では、「共有の時間」の代わりに、「リフレクション」(Reflection)という時間を設定しています。「リフレクション」(Reflection)という題の章を読んでいて、とても印象に残った点が二つあります。

 印象に残った一点目は、子どもが他の子どもを教えたり等、この時間を、できるだけ「子ども中心の、子どもが主体的に動ける時間」(176ページ)にしていることです。

 子どもが他の子どもを教える(190-194ページ)ことについては、次のように記されています(私のざっと訳ですみません)。

 もし、子どもが共有したいなら、教師は、しばしば、ただ共有するのではなく、クラスメイトに教えてみるように促しています。これは小さなことかもしれませんが、重要なことです。多くの場合、教師はカンファランスで、その子が教えられるタイミングに気付きます(191ページ)

 また、「もし」他の子どもに教えることが、教室の中で「よくあること・予測できる活動」であれば、教える側の子どもは、短時間で効率よく伝えるにはどうしたらよいかを考えることになるので、自分で咀嚼する時間がさらに増え、咀嚼した分、栄養になりそうです。そして、教える内容が、他の多くの子どもにとって有益であれば、教える子どもと教えられる子どもの双方にとってプラスです。 

 また、教師がリフレクションの時間に、子どもたち全員を集めて対話を始める時にも、教師が途中で一歩下がり、対話をリードすることを、子どもたちにバトンタッチしている事例も紹介されています(185-190ページ)。「子どもが学びをリードできる」と教師が気づいて手を離す、その結果、子どもたちが新たな見方や知識をつくり出しています。

 印象に残った二点目は、リヴィジョン(推敲、書き直し、考え直し)とリフレクションが協働する(★2)(195ページ)という考え方です。

→ リヴィジョン (revision) という用語ですが、以前ライティング関連の本の中で、リヴィジョン(revision)という単語について、「re」が「再び」という意味の接頭辞であることから、「re-vision (再びヴィジョン)と捉えてみる」みたいな記述を読んだことがあります。こじつけかもしれませんが、確かに、「再び」という意味の接頭辞を意識して、re-visionと考えると、書くことにおいても読むことにおいても、これまで書いてきたもの、あるいは読んできたものについて、それらを「見直す、自分の考えを改める」というイメージが、私にはとてもしやすいです。

 大人であっても、自分の書いたものを読んでくれる、信頼する人がいれば、その人のコメントをドキドキしながら待ち、ブッククラブが予定されていれば、自分が話したい箇所に印をつけて、それに対しての他のメンバーのコメントを楽しみに待つなど、共有とリヴィジョンが、大人の読み書きにおいても、協働していることがよくわかります(194-195ページ)。

 「リフレクションとリヴィジョンは協働する」つまり、リフレクションの時間は、共有すること自体にある喜びや共有する相手への信頼を土台にしつつ、「ただ共有するだけ」ではなく、それをリヴィジョンに繋がる時間にしていく、この方向性に魅力を感じます。

 続きは(その2)で考えていきたいと思います。

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 なお、 読み書きを統合することに関わり、上記の『The Literacy Studio』については、2024年5月12日の投稿「読み書きを統合するワークショップ」で紹介しています。ライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップを別々に実施するのではなく、それを統合して行いますから、読み書きに共通することを教えた後、読んだり書いたりする時間では、子どもたちは、読むことに取り組むのか、書くことに取り組むのかを、それぞれに選択します。

→ とはいえ、子どもたちは、読むこと、書くことに、トータルでだいたい同じ程度の時間を使うことになっています。例えば水曜日は読むことに取り組めば、木曜日は書くことに取り組んだりです。あるいは、教師が、「今日は、みんな読むことから始めよう」と設定することもあります(115ページ)。しかしながら、読み書きのワークショップを統合することで、子どもが取り組むことの選択肢は確実に広がります。また、読み書きを統合して一つのレッスンで教えるので、読み書き別々に教えるよりも、教える時間が短くなり、実際に読んだり書いたりする時間が増えます(8-9ページ)。

 また、1)「ミニ・レッスン」 → 2)「ひたすら読む時間・ひたすら書く時間」 → 3)「共有の時間」という、ライティング/リーディング・ワークショップの用語も、それぞれ 1) crafting session、 2) composing time, 3) reflection と違う用語になっていて、その違いも説明されています(42-47ページ)。

 → 上記とは異なる本として、2021年9月11日の投稿では「読み書きを統合する時間を設定する」というタイトルで投稿した際、『The Literacy Workshop』という本についても紹介しました。この本では、読み書きを統合したミニ・レッスンは、デモンストレーション・レッスンと呼ばれています。絵本を使う例が多く、レッスン例も絵本も「たっぷり」ある本です。

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★1 Ellin Oliver Keene著 The Literacy Studio: Redesigning the Workshop for Readers and Writers. Heinemannより2022年に出版。

★2 原文は Revision and Reflection work hand in hand. (195ページ)です。


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