2015年8月28日金曜日

読書パートナー、ブッククラブのメンバーを固定化を検討する?


 
 言語を教える先生が、自分の振り返りを書き続けることで成長できる、というテーマの本★を今、読んでいます。


 この本の著者のファレル氏は、教師が成長するための一つの有効な方法として、定期的、継続的に自分の教育について「書く」ことを挙げていて、振り返りを書く助けになるような、かなりの量の質問リストを提示しています。


 振り返りを「話す」よりも、「書く」ほうが、時間がかかります。でも、時間がかかるのは、自分の考えをまとめるために立ち止まって、考えたりしますから、書くこと自体が振り返りになっているとも言えます
 (57ページ)。


 この本の中で、他の先生と協同で継続的に振り返ることで、一人では思いつかなかった視点や解決が出せることや、信頼関係のなかで、それぞれに成長できること等の、メリットも書かれています(41~43ページ)。

 たしかに、ある一定期間、同じメンバーで「定期的かつ継続的」に何かを行うことで生まれるものは大きいと、自分の経験からも感じます。

 「ある一定期間、同じメンバーで「定期的かつ継続的」に何かを行うことで生まれるもの」は、RWでの「読書パートナー」や「ブッククラブのメンバー」★★を、ある程度の固定化することにも、言えると思います。


 例えばブッククラブについては、『リーディング・ワークショップ』に、以下のような指摘があります。


 「1冊の本についてだけ話し合いをしているように見えても、それは今までのほかの多くの本から得た様々な考えが何層にも積みあげられた上になされて」いて、「本についてのいい話し合いは今までの数多くの本についての話し合い土台になっている」(218ページ)。


 しかし、メンバーの固定化したものの、それがうまくいかないときにどうしよう、と、マイナス面も気になります。 『リーディング・ワークショップ』219223ページには、ブッククラブのグループをつくるときのヒントがいろいろと書かれていますので、RWがある程度軌道にのっていて、子どもたちの読み手としての個性などもわかってきている場合は、「継続したメンバーだから得られること」も、新学期に試してみる一つの選択肢かもしれません。

*****
 
参照情報

★ Thomas S. C. Farrell著のReflective Writing for Language Teachers

Equinox, 2013)という本です。


★★ 読書パートナーについては、『リーディング・ワークショップ』では74~75ページに「小学校低学年の教室でのブックパートナー」というセクションがあり、また『読書家の時間』では142~144ページに「読書パートナー」が説明されています。

 ブッククラブのメンバーの固定化については、『リーディング・ワークショップ』で217~218ページに、著者が実際にブッククラブを実践した価値を踏まえて、同じメンバーで長期にわたって読むことの価値が書かれています。

2015年8月21日金曜日

『子供時代』と『理解するってどういうこと?』


『理解するってどういうこと?』の第9章冒頭の「よきメンター」の章は、エドウィージ・ダンティカの小説からの引用で始まります。第9章で扱われている「理解の種類」は「感情と記憶」。エリンさんはこの「理解の種類」について、次のように言っています。

・感情的な関連づけが行われると、理解は豊かなものとなる。私たちは美しいと感じることを再度経験したくなり、学習に喜びが含まれているとよりよく理解できる。創造的な活動をするなかで、私たちは光り輝くもの、記憶に残るもの、他の人たちに意味のあるものをつくろうとする。最終的に、私たちがしっかり考えて発見したことは強力で、長持ちするものとなる。こうして、記憶に残る。(339ページ)

ついこのあいだ、ロシアのリュドミラ・ウリツカヤ文/ウラジミール・リュベロフ絵/沼野恭子訳『子供時代』(新潮社、2015年)という短編小説集を読みました。六つの短編のなかで「つぶやきおじいさん」という話が心に残りました。
 ジーナという女の子が主人公。時計屋だったひいおじいさんはもうずいぶん年をとっていて目が見えず、いつもぼーっとしていて、ときどきよくわからないことをつぶやくのです。でも、ジーナがバレーボールをして壊した時計をひいおじいさんはすぐに直してくれます。時計屋だった頃から使っていた「ひとつ目」と呼ばれる拡大鏡をかけて。ジーナがそのひいおじいさんに時計を直してもらったあと、直した部分にまだひび割れが残っていることを見せながら「見えるかい」と言って説明したひいおじいさんに、ジーナは驚き、「見えるの?」と訊ねます。ひいおじいさんの答えは次の一言でした。

「まあ、なんとかな。でも、見えるのはいちばん大事なものだけなんだよ。」

「見えるのはいちばん大事なものだけ」という言葉がぐっときますね。これって、都合のいいことだけ見える、とは違います。もちろん、少女だったジーナはやがて成長します。語り手は成長した彼女の内面を次のように語ります。

何年もの長い年月が流れ、ジーナは、当時のことをもうあまり覚えていない。でも、覚えていることは、年を追うにつれてくっきりとしてくる。

ジーナが「覚えていること」も、きっと彼女にとって「いちばん大事な」ことなのでしょう。そのことだけは「くっきり」としている。この小説の一番大事なところだと私は思います。その大事なことをさらに「くっきり」させることから「つぶやきおじいさん」という小説が生み出されたのだと思います。経験したことすべてを覚えておく必要はないし,見たり聞いたりする必要もない。「いちばん大事な」ことだけが頭のなかに残っていれば、それをもっと「くっきり」させるために書いたり話したりしてみるといい。それが人生を意味づけるということなのでしょう。
 ひいおじいさんの思い出は、ジーナの感情と関連づけられ、エリンさんの言う「光り輝くもの、記憶に残るもの」になったのでしょう。それを「感情と記憶」という「理解の種類」によって「くっきり」とさせたその「成果」が「つぶやきおじいさん」という小説となりました。そして、読者である私の心に届き、感情と関連づけられたのです。

2015年8月14日金曜日

手紙という効果的な学びの媒体



いま、手紙を教え方・学び方の効果的な媒体と捉える本(The Best-Kept Teaching Secret, by Harvey “Smokey” Daniels & Elaine Daniels)をメールでのブッククラブで読もうというので、読み始めています。

昔から、子どもたちは授業中に(先生が黒板に書いている間)、手紙を書いて、回していました。いまは、携帯やスマホでやりとりしています。

それほど、魅力があるというか、止められることではないのなら、それをカリキュラムを押さえるのに活用してしまおう、というわけです。

日本の生活綴り方や「先生、あのね」の実践は、まさにそれを実現していたと言えるかもしれません。(生活作文や詩づくり以外に、すべての教科で効果的に使えてしまいます!!)

しかも、教師と生徒の個別のやり取り以上に、生徒相互のやり取りの方がはるかに価値があります。その方が、教師を起点にしたやり取りよりも、量的に何十倍にもなりますし、質的にも子どもたちが学ぶものは教師とのやり取りよりも刺激的なものが多くあります。

子どもたちと、口頭でのやり取りと文章(手紙)でのやりとりの特徴をベン図で出してみるといいでしょう。(ベン図とは、下の図のようなものです。左側の円がフィクション、右側の円がノンフィクションに固有の特徴を表わしており、重なっているところがどちらにも共通する特徴をあらわしています。)

この図から、手紙のやりとりの価値は鮮明になりますが、本の18~19ページには、手紙がいかに教え方のツールとして効果的かを紹介してくれています。

・楽しい ~ 自分が表現できる! 書き手が考えている以上に、その人を表わしてしまう。
・対象が鮮明
・目的が明快
・非公開 ~ 秘密の要素
・文字以外を使ってアピールすることができる
・それなりのフォーマット/習慣はある
・振り返り ~ よく考え(分析し、解釈し、意味をつくり出し)、それを記録に残す

以上は、半分です。(リストが長いので、残り半分 ~よりインパクトのある効果~ はまたの機会に!)

ここまでは書くこと中心の紹介になっていましたが、手紙は当然のことながら双方向のやり取りですから、読む力もつけてくれます。(さらには、「聞く」と「話す」の下地づくりにもなる、とても効果的な媒体です!)

この本の中では、効果的とは言えない教師が一方的に話す時間や、少数のいつも発言する数人に独占されるクラス全体の話し合いの時間は極力減らして、クラスの子どもたち全員が参加できる(考えて、発言できる)クラス内での手紙交換会のような方法を増やすことを提案しています。★

本は、これからクラス内にできる交信者たちのコミュニティづくり(第2章)、メモの交換(第3章)、交換ジャーナル(第4章=『考える力はこうしてつける』でも扱っていました!)、グループで書いたものを回す(第5章)、第2~5章をメールやブログなどのネット媒体で行う(第6章)を、たくさんの写真と実践例を踏まえながら詳しく紹介してくれています。著者たちは、これは教師用の専門書ではなく「絵本」と言った方が正しいんじゃない、と書いています。★★


★ 教師の役割が、「話す人」や「話し合いをコントロールする人」「全体しか見ない人」から、「見守る人」「必要に応じてサポートする人」「個別の生徒のニーズや興味関心やこだわりが見える人」に転換することがお分かりいただけると思います。どちらの方が、生徒たちの学びは質と量の両面で得られると思いますか? どちらの方が、教師は本来の意味で教えるという真の役割を果たしていると思いますか?

★★ 著者たちと出版社は、教師用の専門書の概念自体を転換させたいような気がします。日本の教育出版社には、ぜひチェックしてほしいです!(それにしても、日本の教育書で読めるものが少なすぎるのはなぜでしょうか? 実践と比例関係にあるということだとは思いますが・・・ あまりにも教科書に引っ張られすぎている? 研究者が書くものは、あまりにも抽象的すぎる?)

2015年8月6日木曜日

読書ノートと作家ノートの試行錯誤(あるいは進化?)


 「RWWW便り」を読んでくださっている皆様自身の「読書ノート」と「作家ノート」は、うまく機能していますでしょうか?

 「教師はモデル」であり、「先輩の読み手や書き手」でもあるRWやWWですから、先生が自分の読書ノートや作家ノートを子どもたちに見せたり、どんなふうに使っているかを話したりするのは、いいミニ・レッスンになると思います。

 夏休みは、自分の読書ノートや作家ノートを振り返り、もし上手く機能していなければ、改善の試みをしてみるいいチャンスかもしれません。
 
 読み手、書き手としての成長とともに読書ノート、作家ノートも進化?してくると思いますし、試行錯誤の時期もあります。

 私自身は、ここしばく、一つの試みとして、既成のノート(読書ノート、作家ノートが一緒になったもの)★を使っています。これについては、また書きたいと思っていますが、少し使ってみると「読んだ本のリスト欄がもっとほしい」など、やはり自分には少し使いにくい部分がでてきますが、両方一緒というプラス面も感じます。

 なお、読書ノートをつくることのプラス面は、ブログ版のRWWW便り「自分の読書ノートをふりかえる」(2013年12月7日)で、以下の5つのプラス面を書いています。以下、項目だけ挙げておきますので、またよければ見てください。

http://wwletter.blogspot.jp/2013/12/blog-post.html

1) 読書ノートで健康診断
2) 読書ノートから年間計画へ
3) 読書ノートでコミュニケーションのスタート
4) 読書ノートで、他の人からの情報を得る
5) 読書ノートで思い出?に浸る
 
 ちなみにブログ版のRWWW便り2014年1月7日には、「読書ノートを自分仕様にする」というタイトルでも書いていますので、よろしければ、こちらもどうぞ。

http://wwletter.blogspot.jp/2014/01/blog-post_17.html

 『ライティング・ワークショップ』(新評論)に、教師が子どもたちに一つの書くプロセスを押し付けるのではなくて、それぞれの子どもたちが、自分に適した書き方を見つけられるようにサポートしていくことの大切さが書かれています(82ページ)。読書ノート、作家ノートも同様で、子どもたちがそれぞれに、自分にとって使いやすくしていけるように、段階を追ってサポートしていくことも必要だろうと思います。

*****

★ このノートは2015年5月8日のRWWW便りで紹介している、リンダ・リーフ(Linda Rief)氏による、Inside the Writer’s-Reader’s Notebook: A Workshop Essential (Heinemann, 2007)という本にセットになったノートです。ノートだけの別売りもあるようです。

http://wwletter.blogspot.jp/2015/05/blog-post_8.html