2019年7月26日金曜日

ブッククラブの威力を再認識


20年ぐらい前に、ブッククラブの効用に気づき、かなり多用するようになり、その後、約10年間の実践を踏まえてまとめたのが『読書がさらに楽しくなるブッククラブ』でした。◆現在、在庫が僅少になり、改訂版に向けて制作中です。◆
ここ数年、そのパワーを再確認にし、より一層多用しています。


たとえば、①研修会や勉強会等で、同じことをいくら言っても変わらないことが、②メール(ないしオンライン)でのブッククラブ(つまり、筆談)でのやり取りを数回することで、考えを改め、そして実践に移してくれることを何度も見るようになったのです。
①は、一斉授業の場合と同じで、対象が特定されない中での発言であることが多いからかもしれません。一方で、②の場合は向けられている対象が限定されているうえに、繰り返しのやり取りです。つまり、変わらざるを得ない条件がそろっているのです。
対象とする人(たち)の意識や実践を変えたい時は、ぜひブッククラブ(特にオンライン)を試してみてください。従来の教員研修や校内研究よりも、はるかに効率的かつ効果的です。

 そこまでの変容が見られたかというと怪しいですが(やり取りの回数がまだ限定的なので)、しかし、変化の芽が確実に浮かび上がった事例を2つほど紹介します。(両方とも高校の先生たちによるブッククラブです。★)

 一つは、『オープニングマインド』を題材にしたブッククラブからです。
 6人の参加者がほぼ全員が触れていた不確実な教師の発言というか問い方に対する違和感を書いていました。
 具体的には、「不確実性を提供するので、探究を可能にします。不確実性と探究が提供されると、知識をつくり出すということに関して主体性も提供されます。」p.124 → 「~である」から「~かもしれない」に変える p.146
 一人の参加者は、これに対する反応を次のように書いていました「リアルブッククラブでお話が出来ましたが、やはり不確実に言うと、どこか自信がないように感じてしまうのではないかという心配はやはり残ります。「~かもしれない」とすれば、生徒が持っている知識から考え、答えにたどり着くことができるかもしれません。私自身、すべてのことを不確実に言うことは出来ないと思うので、どういったもののときに不確実な言い方をすることができるかを考えていく必要があるのかなと思っています。」
 もう一人は、「小学生相手ではいいかもしれないが、中高では考えにくい」と。

 これは、https://wwletter.blogspot.com/2018/11/blog-post_23.html で紹介した数字を説明すれば、かなりの確率で納得してもらえます。日本の教師は、授業という言葉を聞いた時、自動的に一斉授業をイメージしますが、『オープニングマインド』と『言葉を選ぶ、授業が変わる!』は、ライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップをベースにした授業を主な対象にしているので、授業観自体が違っているのです。

 この最後の点に関連する感想が、一昨日から始まった『教育のプロがすすめるイノベーション』のブッククラブでも提示されました。

p.15「授業の中心は教師ではなく、生徒全体でもなく、生徒一人ひとりである」
→こういう言説は日本の教育論でも古くから「子供を束で見るのではなく、個で見なさい」というような形で存在していると思いますが、それなのに日本では40人授業が平然と行われています。個人的には「(生徒一人ひとりを見取ったとして、その上で、そうした一人ひとりの生徒によって構成されている)集団を意図通りに動かすことができる教師が優れた教師」という価値観が染み付いているのが問題だと思います。

 これに対する私のフィードバックは、次のようなものでした。
「まったく、その通りです。これと同じレベルで、よく聞く言葉が「子ども理解と見取りの大切さ」です。しかし、過去10年以上、事あるごとに(特に、それを言った先生に対して)、「その子ども理解と見取り」のために具体的にどんなことをしていますか? と尋ねていますが、まともに答えられる人はいません。どうも、「子ども理解と見取り」を言っただけで安心しているようなのです。上の「子どもを束で見るのではなく、個で見なさい」と同じではないですか? 
  しかし、個々の違いを知ってしまったら、一斉授業などやれるはずがないです!
  知らないからこそ、やり続けられます。

  この点については、『教育のプロがすすめるイノベーション』および『ようこそ、一人ひとりをいかす教室へ』と『授業の見方』および『教師の学び方』との比べ読みをおすすめします。
  どなたか夏休みの間に「『授業の見方』および『教師の学び方』をハックする」をまとめませんか?
  時間的には、本2冊を読むのに3時間。感想をまとめるのに2時間と言ったところでしょうか。
  下書きレベルで結構です。内容次第で、若干書き直していただくかもしれませんが、いくつかの雑誌に掲載をしてもらえるようにアプローチをしたいと思います。最悪でも、姉妹ブログの「PLC便り」には載せられると思います。


★ブッククラブは、はじめてという先生がほとんどでした。しかも、本は一人で読むもの、という意識の持ち主たちでもありました。それが終わった時点では、「楽しかったです」「これからも継続的に同僚たちとブッククラブをやっていきたいです」に転換しました。

2019年7月19日金曜日

「わかりやすさ」が「理解」を奪う?



 「理解」の関連本を探して、広島駅前の大きめの書店の書架の間を歩いていると・・・「わかりやすさの罠」という書籍タイトルが目に飛び込んできました。池上彰『わかりやすさの罠―池上流「知る力」の鍛え方―』(集英社新書、2019年)。「この講義はわかりやすかったですか?」というのは、授業や講習会・講演会アンケートの質問項目「定番」ですね。

 

「難しいことをわかりやすく」というのは、私がこの三〇年間ずっとモットーとし続けてきたことです。しかし、最近になって、どうも、少なからぬ人たちが「わかりやすさ」の罠にはまってしまっているのでは、と心配になってきました。/「罠」とはつまり、「わかったつもり」になってしまうということです。(『わかりやすさの罠』22ページ)



 本書の前半では新聞やニュースやネット報道を取り上げながら、「わかったつもり」になってしまう実例が取り上げられ、わかりやすい説明が展開されます。しかし、この本の本領は、「わかりやすさ」の「罠」にはまらないようにするために」「私たち社会を構成するひとりひとり」が鍛えなければならない「知る力」を探っているところにあります。

 たとえば、「複数の新聞を読み比べる意味」(128ページ~)には、ニュースについて、複数の新聞を読み比べたり、ネット情報と新聞記事を読み比べたりするということがあげられています。同様のことは、現在の国語教科書等にも見られますが、注目したいのはその目的です。それぞれのメディアがどのように「偏っているか」を確かめるために「比べる」というのです。



 つまり、「この新聞は偏っている」などと糾弾するのはおかしな話なのです。新聞である以上、偏っていて当然といえます。偏っているのはあたりまえであり、それぞれの違いをおもしろがるぐらいの冷静な視点が欲しいものです。(『わかりやすさの罠』132ページ)



なるほど!と思わされました。「それぞれの違いをおもしろがるぐらいの冷静な視点」の獲得のために新聞記事を比較して考えてみれば、その比較活動に熱心に取り組むことができます。その過程で「知る力」が育つというのです。キーンさんの言う「質問する」「推測する」「大切なところを見極める」といった理解するための方法を駆使することになるのではないでしょうか。「違い」を生かす「知る力」です。そして池上さんは本書の至るところで「ネット」ではこうした「知る」とは逆に「放っておけば、どんどん自分とは異なる意見が排除されていく」(133ページ)と言っています(「本書の至るところ」はどこか?読んで探してみてください)。「自分とは異なる意見」の「排除」は、けっして「理解する」ことにはなりません。

 そのほかにも「新聞は全部読もうとしない」「迷ったら買う」「しっかり読めるのは一〇冊のうち一冊」「積ん読のすすめ」など魅力的なアイディアについて語られていくのです。そして、これだけネット書店が便利になっても、「リアル書店」を使う理由を述べたくだりもあります。



「今度の番組ではどんなニュースを解説しようか」「来週締め切りの原稿に何を書こうか」と悩みながら書店に行くと、ときどき本が「おいでおいで」と言ってくれているような気になることがあります。ふっと気になって見ると、「ああ、こういうタイトルだとおもしろいしわかりやすいな」「そうか、この分野のこの話ができるぞ」などと発想が浮かんできます。こういう偶然の発見は、ネット書店では経験したことがありません。/「思いがけないものを発見する能力」をセレンディピティーといいますが、リアル書店は、まさにそんなセレンディピティーの宝庫です。行かない手はないと思いませんか?(155ページ)



 学生時代(わたくしにもあった、10代の最後のころ!)に恩師から「考え続けていると、文献の方から自分の方に飛び込んでくることもあります」という話を聴きました。そんな夢のようなことがあるはずがない、などと浅はかにも思ったものです。が、40年ほど経つうちにそれに似た経験を幾度かしました。そして、池上さんの「ときどき本が「おいでおいで」」というのも同じですね。そこから「思いがけないものを発見する」ということが起こります。「知る力」を発揮するみなもとではないでしょうか。

 「わかりやすさ」が「罠」だというのは、このような「セレンディピティー」の芽を早々に摘み取ってしまうからです。でも、間違えてはいけません。池上さんは「わかりやすくすること」が悪だと言っているわけではないのです。「わかりやすさ」の主語が問題なのです。読んだり聞いたりする立場で「わかりやすさ」を求めることは「わかった」と思っても「わかったつもり」になってしまい、「偶然の発見」の芽は摘み取られてしまいます。しかし、誰か身近な人に「わかった」と言ってもらえるように、自分の「わかった」を伝えようとすればどうでしょう。「わかりやすさ」を生み出す側に立った場合です。



「わかった」と思うことと、「わかった」と言ってもらえるように説明できることは、まったく違います。その違いを知るには、まず「わかった」と思っていることを、自分が納得しただけで終わらせず、そばにいる誰かに説明してみるのが一番です。(199ページ)



 「わかりやすさ」が理解を奪うわけではありません。そうではなくて、「わかりやすさ」を生み出すように、「「わかった」と言ってもらえるように説明できること」が可能になるようにつとめることによって、そのことについての深い理解が自分のなかに生まれると言っているのです。その過程でいくつもの「偶然の発見」があらわれるということです。理解が奪われるのは、どこの誰がつくったかどうかわからない「わかりやすさ」に、自分で考えることをその「誰か」に預けてしまう時だと、池上さんは伝えているのです。

2019年7月13日土曜日

夏休みの読書は? 長期休暇に向けてできそうなこと

 夏休みのような長期休暇に向けて、読み手として育ちつつある子どもたちを、どのように送り出せばよいのでしょうか? いろいろな段階のサポートがあると思いますが、今日は以下の3点について考えます。

1)読みたい本が、それぞれの子どもの手元にあるようにする。

2)アクセスしやすい本を中心とした、読みたくなるような本リストが、それぞれの子どもの手元にあるようにする。

3)読みたい本の探し方を教える。

 まず「1)読みたい本が、それぞれの子どもの手元にあるようにする」です。

 特に、本へのアクセスが難しい子どもたちには、一番、効果的な方法かもしれません。★

 優れた実践者のアトウェルの場合、 長期休暇の前には、教師も生徒もすごい勢いでブックトークをし、そして、長期休暇の前には、それぞれが、しっかり本を借りて帰ります。(『イン・ザ・ミドル』の「長期休暇中の読書」(236~238ページ)というセクションで、詳しく説明されています。)

 アトウェルの学校は、メイン州の田舎にあり、公共交通機関もなく、図書館の開館時間も限られているとのことですから、教室の図書コーナーから本の貸出をしない限り、生徒の本へのアクセスは極めて限定的なようです。
  
 生徒の年代や状況にもよりますが、何らかの貸出記録を作りながら、1冊でも本を持って帰ることができれば、次年度、それを踏まえて、よりよい貸出方法が見つかるかもしれません。

 次は 「2)アクセスしやすい本を中心とした、読みたくなるような本リストが、それぞれの子どもの手元にあるようにする」です。

 ポイントは、「そのリストにある本にアクセスしやすいこと」と「そこから芋づる式に読みたい本が増えること」でしょうか。

 例えば、同じ地区の子どもが多ければ、その町の図書館にある本から、複数冊の本がある作家を複数人選び、その作家の本を、一人の作家につき1冊だけ紹介し、同じ作家の本が他にも何冊かあることを示しておきます。 ➡ こうすることで、「作家読み」につながる可能性があります。同様にシリーズの1冊目の紹介も、複数冊読むことにつながる可能性があります。その中に、クラスの子がすでに読んだ本や、ブックトークで紹介した本などがあると、さらに興味がわくかもしれません。 


 最後に、「3)読みたい本の探し方を教える」です。

 「読みたい本の探し方」については、『読書家の時間』(新評論、2014年)」の「5年生の最初の10時間」の6時間目、「こうやって本を選んでみようーー教師の選書テクニック大公開!」(14ページ)がお薦めです。

 このレッスン自体は、リーディング・ワークショップ開始後6時間目を想定して書かれていますが、夏休み前にも補強したい内容です。以下のようなことも書かれています。

・教室にあるテレビに子どもたちが利用している図書館のホームページを出して、本の探し方や予約の仕方を説明する。

・映画やドラマの原作本、自分が好きな作者がどんな本を他に書いているのかを、その場で調べてみる。

・ネット書店のホームページを見せたり、教師の読みたい本リストを見せたり、また、過去に受け持った子どもたちがどのようにして本を探していたかを話す。

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 いずれにしても、教師自身が夏休み、本を読むのを楽しみにしていることが伝わるのが、一番かも、とも思います。忙しい夏かと思いますが、どうぞ、本と共に楽しいお時間を!

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本が手元にあるようにしただけで成果があったという、以下のような研究結果もあるそうです。この研究は、アトウェルが教室の図書コーナーの本の貸出を始めることの後押しになっているようです。

 経済状況が極めて厳しい地域の学校で、恵まれない環境の生徒832人に、長期休暇中の前に読む本を12冊選び、持って帰らせた。それをしなかった生徒と比較して、読解の点に有意差が出ただけでなく、休暇中の読書量が増え、その後の読解力についても、サマー・スクールに出席した子どもと同じような結果がでた(『イン・ザ・ミドル』237ページ)。

 アトウェルは、この結果を知り、次のように記しています。「この結果に励まされたものの、考え込んでしまいました。休暇前のミニ・レッスンで、教室の外でよい本をどうやって見つけるのかを教えてきましたが、多くの生徒が実行していなかったからです。<略> 休暇前に生徒に本を貸し出すことにはそれなりのリスクを伴いますが、やってみるとうまく行っています」(『イン・ザ・ミドル』237ページ)。
 

2019年7月5日金曜日

新刊『教育のプロがすすめるイノベーション』


 この本は、学校改革、授業改革、教育改革がテーマの本でありながら、著者の父親のストーリーではじまり、母親のストーリーで終わるという珍しい本です。
 父親と母親が自分の子どもたちのために少しでもいいものを提供したいという気持ちと、教師を中心に教育関係者が目の前にいる子どもたちのために少しでもいいものを提供したいという思いはまったく違わないと著者は考えているからです。
 そして、その最初と最後のストーリーの間には、たくさんの具体的な学校/授業/教育改革のストーリーが紹介されています。
 著者は、「自分がしていないことは、教師にも、生徒たちにもやるように言うことはできない」という考えの持ち主でもあるので、自分の実践をポートフォリオにする試みとしてブログを書き始めました。そして、それが結果的に、わずか数年の間に16年間(彼の場合は、18年間?)の生徒と学生時代よりも何倍も多くをブログに書くことになり、そして、この本にもなっているのです。★
 ジャーナルではなくて、ブログやツイッターを選択したことが、世界の教育者とオンラインでつながることも可能にし、相互に刺激し合いながら、実践をよくすることはもちろんですが、文章能力もドンドン磨いていくことになりました。書けば書くほど、うまくなるのです!! その際、読み手を意識することがポイントです。相互のやり取りがポイントと言い換えられるかもしれません。それは、まさにライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップをオンラインでやっているようなものです!
 そして、それが教育書としては稀な売れ行きの本を完成させてしまったのです。
 本の内容については、http://www.shinhyoron.co.jp/2814.html を読んでください。

 実は、本書の著者が実践したアプローチをほぼ真似する形でできた本があり(あくまでも、書き方に関して)、それを現在翻訳中です。本書の中では、①従順/服従/忖度する学びから、②生徒が夢中で取り組む学びへ、さらには③生徒たちがエンパワー(人間のもつ本来の能力を最大限にまで引き出すこと)される学びへの移行の必要性が強調されています。(ちなみに、日本で行われている教育は、まだ第二段階へも移行しきれていません。文科省が「アクティブ・ラーニング」を叫ぶぐらいですから。まだ第一段階の「従順/服従/忖度」に浸りきっています!)翻訳中の本は、第三段階に焦点を絞った本です。モデルがいいので、この「続編」的な内容も極めてパワフルです! タイトルは『教育のプロがすすめるエンパワーメント』になるのではないかと思っています。その本のまえがきを、本書の著者のジョージ・クロス氏が書いています。
ここで言いたかったことは、誰もがこの種の本は書こうとさえ思えば、書けてしまう、ということです。本を書くことは、もはや特別な時代ではありません。練習媒体としてのブログ等が整備されていますから。ぜひ、あなたも挑戦してください。★★

 この本の奥付に、「授業改善と学校改善についての最新情報を、25年追いかけ続けています。最初に出したのが2000年の『エンパワーメントの鍵』でした。それ以来、いろいろな本や情報を発信してきましたが、本書ほど多くの教育関係者に読んでほしいと思った本はありません。可能ならブッククラブ(読書会)形式でぜひ読んでください。その方がはるかに広く、かつ深く読めますから 」と書いたぐらいなので、2人以上を誘ってブッククラブで読んでください!

本ブログ読者への割引情報◆ ~ 今回は、3人以上でブッククラブができる設定にしてもらいました。
1冊(書店およびネット価格)2916円のところ、
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3冊以上の注文は     1冊=2300円(送料・税込み)です。

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pro.workshop@gmail.com  にお知らせください。

※ なお、送料を抑えるために割安宅配便を使っているため、到着に若干の遅れが出ることがありますので、予めご理解ください。

★ 彼の目的は本を書くことではありませんから、今でも書き続けています。それも、極めて中身の濃い内容のものを頻繁に。https://georgecouros.ca/blog/ で見られます。書くことは考えること、考え続けることです。読んだり、見たり、聞いたり、したりする時(さらには、眠っているときでさえ!)ももちろん考えますが、書くときは次元が違います。それも、公にすることを前提にしたときは。

★★ 実際、アマゾンを探すと、キンドル版やオンディマンドで購入できる教育書を出している教育者がいることが分かります。しかし、そのアプローチは従来型の自費出版をオンラン化したにすぎない気がします。すでに上で触れた大事なポイントの、本をつくる過程のやり取り(執筆者が独りよがりになることを避けるため)と、その過程で読み手意識をどれだけもてるかが欠けているので、残念ながら売れる本にはなりにくいのです(子どもたちが教室で書くときも同じで、これら2つのポイントは、読者に受ける作品を書くのに欠かせないポイントです!)。
一方で、売れている市販の教育書にも「自費出版」のレベルのものが少なくありません。というか「多いです」。大手の教育出版社を含めて、出版社に良し悪しの判断能力が欠けているので、「売れれば内容的には気にしない」という空気が充満しています。これは、日本の学校教育が「選書能力」を身につけさせないという悲劇的な過ちを犯し続けていることと関係があります。ぜひ、自分に合った本や情報を見つけ出す能力を磨いてください。そして、子どもたちにも身につけさせてあげてください。ある意味で、これがすべてのベースですから!
そして、自分に合った本や欲しい本がないと思ったら、書くしかないということになります。今回紹介した本のように!