好奇心にもとづく問いや生徒が自ら生み出す探究は、内容よりも好奇心を優先し、学びをより意味深いものにする。
https://note.com/coachingletter/m/ma24c24afc5bdの3月18日号および
https://projectbetterschool.blogspot.com/の3月22日号に続いての「好奇心」の第3弾です(それほど大切です! 日本の教育に決定的に欠落している要素ですから)。好奇心とコミュニティー、そして勇気を育てる学校づくりを大切にしている校長のティサ・モンゴメリー先生が書いていた記事を見つけたので紹介します。
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好奇心がかすかにざわめくあの感じは、間違えようがない。それは、生徒たちが身を乗り出し、手を半分だけ上げ、目を輝かせているときに教室に満ちるエネルギーだ。義務だからではなく、本当に「もっと知りたい」と思っているからこそ生まれる空気。私がこのエネルギーを初めて体験したのは、リベラ先生の7年生(日本の中2)の理科の授業だった。先生は緑色で落ちたばかりの葉を2枚掲げて、こう尋ねた。「森でこれを見つけたら、何を知りたいと思いますか?」その問いは、まるで空気を震わせる電気のように教室に漂った。促されることもなく、私たちは次々に口を開いた。「同じ木から落ちたのかな?」「なんで葉脈が違うの?」「光の吸収の仕方も違うのかな?」その瞬間、学びが変わった。リベラ先生は内容から始めたのではない。“問い(Wonder)”から始めたのだ。
なぜ好奇心が大切なのか
年月がたち、私が学校の校長になった今でも、あの瞬間は「好奇心こそが本物の学びの鼓動である」という確かな証として心に残っている。それは、ただ従うだけの学びと、主体的に関わる学びの違いであり、暗記で終わる学びと、理解に到達する学びの違いでもある。
好奇心は、姿勢であり、同時に仕組みでもある。それは脳の報酬系を動かし、発見を喜びや粘り強さ、創造性と結びつける。スーザン・エンジェルが『The Hungry Mind』(未邦訳)で述べているように、好奇心は深い学びと意味づくりを駆動する力だ。記憶を高め、思考を深め、学びを現実世界と結びつけ、意欲や学業成果を幅広い教科で押し上げる。
もし私たちが生徒にクリティカル★1かつ創造的に考えてほしいのであれば、生徒が立ち止まり、気づき、ふしぎに思う瞬間を招き入れるような条件をデザインしなければならない。リーダー★2として、私たちは「内容をこなす授業」から「好奇心を起点にする授業」へ、「知識を与える」から「生徒とともに知識をつくる」へとパラダイムを転換できる。好奇心にもとづく問いを活かし、生徒自身が生み出す探究を育てることで、教師は「思考が動き続ける教室」、そして「問いを立てることが最高の学びの行為として尊ばれる教室」をつくることができる。★3
好奇心にもとづく問いを活かす
好奇心にもとづく問いは、学習者が「知っていること」と「知りたいこと」のあいだにギャップを感じたときに生まれる。エミリー・ボードローの記事「A Curious Mind」は、エリザベス・ボナウィッツの研究を紹介しており、曖昧さが探究を引き起こし、学習者が明確さを求めて動き出す原動力になることをまとめている。教師は、この瞬間を活かして「説明より先に、まず問いをつくる」授業を設計できる。そのための方法として、次のようなものがある。
・問いを自然に引き出す現象、画像、物語などから授業を始める。
・「このパターンに気づいたよ。どういう意味だろう」など、教師自身が好奇心を声に出して示す。
・矛盾やパラドックスを提示し、ふしぎに思う気持ちを誘う。
・すぐに答えを与えず、好奇心が熟す時間をつくる。
・生徒の問いに授業の中で何度も戻り、学びの循環を閉じる。★4
ある小学校の教室で、教師は水の循環を導入するために、冷たいソーダ缶の表面にできた水滴を見せた。蒸発や凝結を定義する前に、こう尋ねた。「この水、どこから来たと思う?」生徒たちは、科学的なものから想像力あふれるものまで、さまざまな説を出し合って話した。教師が科学的な説明を明かす頃には、子どもたちはすっかり“この謎を解きたい”という気持ちになっていた。これこそが好奇心の力だ。学びを「与えられるもの」ではなく、「発見するもの」に変えてしまう。
好奇心は、どの教科にも取り入れることができる。算数・数学なら「四捨五入がデータを誤解させることがあるのはなぜだろう」。歴史なら「同じ出来事でも、語る人によって記憶がどう変わるだろう」。こうした問いが、学習を“暗記”から“探究”へと変えていく。
次の授業では、途中で立ち止まり、「ちょっと気になることがあるんだけど、みんなはどう思う?」と投げかけてみてほしい。生徒が自由に答えられるようにし、たとえ見当違いに思える意見でも歓迎する。目標は正確さではなく、取り組みレベルの深さだ。するとすぐに、教室の注意の向き方やエネルギーが変わるのに気づくはずだ。
生徒が生み出す探究を育てる
生徒自身が生み出す探究は、主体性、創造性、そして学びへの当事者意識を育てる。ハムライン大学の研究によれば、生徒の問いづくりはメタ認知と協働を高めることが示されている。また、探究学習に関する研究でも、クリティカルな思考、学習への取り組みの度合い、理解の定着などが向上することが明らかになっている。生徒の探究を支えるための足場づくりとして、次のような方法がある。
・Question Formulation Technique など、問いづくりの枠組みを教える★3。
・教室に Wonder Wall(問い/探究の壁) を設け、問いの変化や広がりを可視化する。
・問いを「事実」「分析」「創発(新しい問いを生む)」などに分類する。
・以前の問いに戻って見直し、洗練させる時間をつくる。
・生徒が自分の好奇心にもとづいて小さな探究(ミニ探究)を設計できるようにする。
ある中学校の社会科の授業では、生徒たちに「革命とは何か?」という問いに答えるよう求めた。最初は出来事や指導者の名前を挙げるだけだったが、探究が深まるにつれて、「暴力なしに革命は起こりうるのか?」「変化には好奇心がどんな役割を果たすのか?」といった問いが生まれ始めた。教師は指示するのではなく、導く役割に徹し、生徒の問いが授業の流れを形づくるようにした。その結果、学習基準を満たしながらも、生徒自身が“自分の理解をつくる歴史家”へと変わる単元になった★5。
リーダーにできること
好奇心は、それが育つように設計された“生態系”の中でこそ力を発揮する。リーダーは、その好奇心が根づく条件をつくる存在だ。私が校長として見てきたのは、大人たちが生徒に望むのと同じ好奇心を自ら示すと、学校全体がよりイノベーティブになるということだ★6。それは、会議の進め方、フィードバックの枠組み、探究をどう称賛するかといった日常のリーダーシップから始まる。好奇心の文化を育てるために、次のようなリーダーシップの行動が役立つ。
・職員会議は、連絡事項ではなく「問い」から始める。
・Jirout らが提案するフレームワークhttps://www.curiosityinclassrooms.com/s-projects-basic を参考に、授業観察に“好奇心の指標”を加える。
・教師が自分の授業を探究し、改善の手がかりを見つけるための時間を意図的につくる。
・好奇心を引き出す授業に工夫して取り組む教師を積極的に紹介する。
・共通の問いを中心に、教師間の教科横断の協働を促す。
私の学校では「Wonder Week(驚き・探究の一週間)」を実施した。5日間、生徒と教職員が一つの大きな問い――「アイディアはどのように世界を変えるのか?」――を探究した。文学、STEM、アートなど、すべての教科がそれぞれの視点を持ち寄った。この経験は、学びの喜びを再び呼び起こし、好奇心は学びの妨げではなく、学びそのものだということを全員に思い出させてくれた。グローバル・オンライン・アカデミー(https://globalonlineacademy.org/insights/blog/2025-education-trends-and-predictions )も、現代の教育デザインが好奇心を未来の基盤となる生徒の重要なスキルとして位置づけていることを強調している。
問いを起点にリードする
好奇心は単なる方法ではない。それは姿勢だ――不確かさをチャンスとして見る心の構えだ。教師やリーダーがその姿勢を受け入れるとき、私たちは知的な謙虚さと、生涯にわたる学びの姿を示すことになる。ジョージ・ローウェンスタインの基礎研究(https://deepstash.com/idea/7969/the-information-gap )は、好奇心を生み出す火花として「情報のギャップ」を特定している。
問いを起点にリードするとは、トップダウンの指示を、開かれた対話へと置き換えることだ。「目標を達成したか?」ではなく、「この経験を通して私たちは生徒について何を学んでいるのか?」と問いかけることでもある。好奇心を中心に動く学校は混乱しているわけではない。そこは、学びが共有の営みとして生きている、ダイナミックな生態系だ。文化を好奇心が動かすとき、イノベーションは自然とついてくる。
出典: https://www.ascd.org/blogs/start-with-wonder
★1クリティカルは「批判的」と訳してしまうと、かなり大事な部分が失われてしまいます。それは、「何は大切かを見極め、何は大切ではないかも見極める」部分が!(さらに言えば、その判断に基づいた行動までもが含まれた言葉のような気がします。)
★2「教育のリーダー」としてという意味ですが、「一人ひとりの生徒を教える教師」としてでもおかしくないです!
★3これを実現するための方法を詳しく紹介している本が、『たった一つを変えるだけ』と『「おさるのジョージ」を教室で実現~好奇心を呼び起こせ!』ですので参照してください。なお、前者の中には国語の事例も紹介されています!
★4以上は、教師が授業でやれるアイディアでしたが、これと同じことを校長や学校のリーダーたちが様々な案件/問題等を扱うときにもやれたら、学校の可能性は何倍にも飛躍できると思いませんか? 下の「リーダーにできること」の節で、そのアイディアが紹介されています。
★5これこそが単に教科書をカバーして(テストの後には、そのほとんどを忘れてしまう)教え方ではなく、自立した学び手/思考し続ける探究者を育てる教え方! 『歴史をする』『だれもが科学者になれる!』等を参照ください。
★6「革新的になることだ」といわれても、ピンとこないと思います。イノベーションとは「新しくて、よりよい何かを創造する考え方」のことです。このテーマについて詳しくは、『教育のプロがすすめるイノベーション』を参照ください。