スポーツコーチは自らお手本を示し、練習を通して選手の向上を導きます。生徒の作文や論文などの記述課題に対するフィードバックも、これとまったく同じように機能させることができます。
コーチは選手に向上する方法を教えますが、ただ「もっとディフェンスをしっかりやれ!」と叫ぶようなことはしません。そんな「フィードバック」が、選手に一体何の役に立つというのでしょうか?
教師である私たちも、教室における生徒たちのコーチです。生徒の学びを深めるためには、適切で質の高いフィードバックを与えることが必要です。バスケットボールのコーチがゴール下でのスクリーンアウトのやり方を実際に示さなければならないのと同じように、教師もまた、提出課題をどう改善すればよいのかを生徒に具体的に手本(モデル)として示し、説明する必要があります。
私はいまだに、大学教授の部屋で自分の文章について指導を受けたとき(ライティング・カンファランス)の様子をよく覚えています。教授はいつも、私の文章を良くするための例文を提示してくれました。私がその例文を持ち帰って活用できるようにと、タイプライターのキーをカタカタと叩いて印字してくれたものです。当時の私はよく「ラッキー、先生が課題を書き直してくれたからこれでA評価がもらえるぞ」などと思っていました。しかしその時の私は、教授が意味のある実践的なフィードバックを通して、私に書き方を教えてくれていたのだということに気づいていなかったのです。
書く指導の際のフィードバックを効果的にするための5つのポイント
意味があり、具体的にする
生徒は「自分が何を知らないのか」すら分かっていません。「もっとつなぎ言葉(接続語)を使いましょう」と書くだけでは、優れたつなぎ言葉とはどういうものか、あるいはどの種類のつなぎ言葉を使えばよいのか分からない生徒にとって、ほとんど助けになりません。そうではなく、フィードバックの機会を活用して生徒に「手本(モデル)」を示してあげましょう。たとえば、「例えば…」といったごくシンプルなつなぎ言葉であっても、それをどこで使うのが効果的かを具体的に示してあげるのです。
フィードバックは、つなぎ言葉のような「一つの重要なテーマ」に絞り込み、生徒に対して具体的なテクニックの手本を示すべきです。生徒は、提示された例をそのまま使ってみてから、文章の他の箇所でそのテクニックを自力で試してみればよいのです。
良かった点に目を向ける
「直すべき箇所」を探すのではなく、「生徒がよくできている部分」を探す姿勢でフィードバックに臨みましょう。生徒は提出課題の中で、授業で教わったことを少なくとも一度は実践しているものです。期待通りにできていない部分を指摘するのではなく、できている部分に焦点を当てます。フィードバックの機会を使って、課題の良かった点をさらに補強・定着させましょう。
上記のフィードバックでは「トピックセンテンス(主題文)」に焦点を当て、書き手が「中心となる考え」と「つなぎ言葉」を含んだ明確な導入文を作成できている箇所を指摘しています。エッセイや解答の残りの部分には、明確なトピックセンテンスが不足しているかもしれません。しかし、それを指摘したり「明確なトピックセンテンスを書くように」と注意書きをする代わりに、教師は良かった点に焦点を当て、書き手(生徒)が下書き、修正、校正を続ける中で、解答全体を通して同じ方法を使えるよう促しています。
フィードバックの量を制限する
意味があり具体的なフィードバックを与えることは理想的に聞こえますが、時間の制約があるため、文章のあらゆる面に対処することはできません。それに、生徒はどうせ一度にすべてのスキルをマスターできるわけではありません。また、長年培われた悪い癖が、あなたの教室に入った瞬間に直るわけでもありません。すべてを修正しようとするのではなく、教育と生徒の成長は「プロセス(過程)」であると認識することが大切です。課題と連動した「指導のポイント」だけに焦点を絞りましょう。そうすることで、生徒は改善すべきいくつかの点に集中でき、一度に多くのことを求められて圧倒されてしまうのを防ぐことができます。
例えば、1週間のミニレッスンの中で「トピックセンテンスの作成」「導入節(や接続詞)の後の読点の使用」「根拠を示すためのつなぎ言葉の使用」に焦点を当てていたとします。フィードバックを与える際は、これらの領域だけに絞り込みます。そうすることで、与えなければならないと感じるフィードバックの量を減らすことができます。
執筆プロセスの「途中」で(最後ではない)フィードバックを与える
人生の多くの事柄と同様に、文章を書くこともプロセスです。したがって、フィードバックもまたプロセスでなければなりません。生徒が求めに応じて文章全体を書き上げる総括的評価の段階に至るまでは、執筆は段階を追って指導されるべきです。そのプロセスの中で生徒が作成するものは、形成的評価として活用します。トピックセンテンスを指導した日にエッセイのトピックセンテンスだけをチェックすれば、一つの領域に集中できます。その授業で残すフィードバックは、ほんの1点だけで済むかもしれません。これもまた、下書きが完成した後にすべてに対処しようとするのではなく、プロセス全体を通してフィードバックを与えることで、時間を節約することにつながります。
フィードバックを双方向(対話的)なものにする
「これだけたくさんフィードバックを与えても、生徒はロクに見もせずに『解決』ボタンを押すだけなんだよね」。そんな経験は私にもあります。そうした状況を避けるためには、生徒がフィードバックと対話・やり取りをするように仕向けましょう。「生徒が対応せざるを得ない状況をつくらない限り、フィードバックは役に立たない」のです。フィードバックの中から1〜2点を選ばせ、それがどのように役立ったか、あるいは課題の他の箇所を修正するうえでどのように刺激になったかを説明する短い返答を書かせるようにしましょう。
出典・https://www.edutopia.org/article/thinking-coach
元新聞記者のフランク・ウォード先生は、(この記事を書いた時点で)11年前に教育界へと転身し、人々にインスピレーションを与えると同時に自らも刺激を受けられる、生涯の仕事(キャリア)を見出した。8年生(日本では中3に相当)の国語の教師。