関西大倉中学校高等学校・堀内誠太郎先生の実践(WW/RW便り: 堀内先生の実践)紹介の第4弾です。
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「読書家の時間」を始めた当初は一人で35〜40名の生徒を相手にしていましたが、なかなか十分には見切れませんでした。ミニレッスンのあいだは問題ないのですが、「読み浸る時間」に入ると、読む本を忘れてきた生徒や手に取った本に集中できない生徒が本棚に集まっておしゃべりをするのです。一人で授業をしていると、それらの生徒への対応に追われ、座って本を読んでいる生徒にはほとんどカンファランスができないという状況でした。生徒にはパフォーマンス課題としてブックトークをしたりレポートを書いたりしてもらうのですが、カンファランスができればもっと読む力を引き上げられるのに、と悔しい思いをしていました。
そうした状況を学校に訴え、2024年度から常勤の司書教諭を採用してもらいました。今は国語科教諭と司書教諭の2人体制で「読書家の時間」にあたっています。国語科教諭は生徒の読む力を引き上げること、司書教諭は生徒が自分に合う本と出会えるようにすることをそれぞれミッションとして役割分担をしています。具体的には、司書教諭に以下のような仕事をお願いしています。
中高生に適したレベル、内容の本(0類から9類まで)を教室内に並べること
ミニレッスンでブックトークをすること
本を持ってきていない生徒、読む本を替えたい生徒が自分に合う本と出会えるようにサポートすること
(手が空いたら)生徒が読書記録をきちんとつけられているかを確認すること
国語科通信「こといろ」に本の紹介記事を載せること
当然ながら、ティーム・ティーチングの体制が整ったことで、「読み浸る時間」の集中度が高まりましたし、生徒の読書量も増えました。課題として、主な授業担当者が担うべき仕事まで司書教諭に甘えてしまわないように注意が必要だと感じています。
このような環境で、私たちは数人の国語科教諭と司書教諭がチームになって、中学1・2年生の2年間、「読書家の時間」を進めています。なお、人数規模については、1クラス35名、今年度は1年生が5クラスで175名、2年生が4クラスで140名、計315名です。各学期の目標は以下の通りです。
1年生1学期 自分に合う本を選ぶ
2学期 小説を読み深める①「描写」「人物像」
3学期 ノンフィクションに親しむ
2年生1学期 小説を読み深める②「語り手」「主題」
2学期 複数のノンフィクションをつなげて読む
3学期 読み手としての「私」を語る
1年生1学期 自分に合う本を選ぶ
これから「読書家の時間」が始まります。まずは私たち教員が自己紹介として「読み手としての私」を語ります。1年生1学期の目標は、「クラス全員が、自分で選んだ本を少なくとも一冊読了して、読書記録をつける 」ことです。ミニレッスンで以下の内容を行いながら、読書家としての習慣を身についていってもらいます。
Lesson.1 図書館を探検しよう
まずは学びの場となる図書館への親しみを深めてもらうべく、本探しゲームを行います。司書教諭が作成したミッションカードに書かれた本を広い図書館全域から制限時間内に探し出すゲームです。本を探すことで、小説は作家の名前順に並んでいること、ノンフィクションは請求番号の順に並んでいること、単行本と文庫本の違いなどについて学ぶことができます。
ちなみに、文化祭の日には図書委員がこれと似た「図書館脱出ゲーム(★1)」を実施しており盛況を博しています。
Lesson .2 読みたい本を見つけよう
クラス全員が自分に合う本を探すに際して、あてもなく一斉に本棚の前に群がってもなかなか選べるものではありません。今回は博報堂が主催する読書推せん文コンクール「お気に入りの一冊をあなたへ」(https://www.hakuhodofoundation.or.jp/okiniiri/library/)のライブラリーから自分が読みたいと思える本を5冊以上見つけ、授業冊子の「読みたい本リスト」に記入してもらいます。書けた生徒から、今見つけた読みたい本を探しに行きます。
Lesson .3 チェックインしてゾーンに入ってみよう
前回の授業で読みたい本リストに加えた本の中から一冊選び、授業冊子にあるチェックイン表に日付、書名、開始ページの3点を書いてもらいます。教員が確認しやすいように、チェックイン表のページを開いたままにしておくように指示します。
生徒はこ静寂の中で20〜30分間黙々と読むということを経験します。「シーン」という音が聞こえてきそうなほどの静寂の中で、作者や主人公との豊かなおしゃべりを楽しむということを経験してもらいます。
Lesson.4 読書記録をつけてみよう
チェックインと並んで習慣化してほしいのが、読書記録をつけることです。この日のミニレッスンで教科書教材「デューク」を読み、Googleスプレッドシートで読書記録をつけてもらいます。読書記録につける項目のうち、ジャンルと評価は生徒が自分で判断することになります。「デューク」のジャンルを「家族小説」「ファンタジー小説」としている生徒に「どうやってそう判断したの?」と聞いたり、「8」「9」などの高い評価をつけている生徒に「どこがおもしろかった?」と聞いたりしてクラスに共有することで読みが深まります。
ミニレッスンの後は、読み浸る時間に入ります。前回学んだチェックインを実践してもらいます。
Lesson.5 「読書家の時間」のルールを確認しよう
授業冊子にある「読書家の皆さんに期待すること」と「読書家の時間のルール」を3〜4人のグループ内で一つずつ読み上げ、「一番守りにくいもの」についてあえて話し合ってもらいます。その後クラス全体で「守りにくいもの」を共有し、不安や不満を表に出してもらった上で、あらためてそのルールを守ることの意義を説明します。
授業の目標やルールというのは、本来なら最初のガイダンスで扱うべき内容ですが、あえて後ろに持ってきています。「読書家の時間」のサイクルを経験した後の方がイメージしやすいからです。(★2)
Lesson.6 ジャンルを知ろう(小説とは何か)小説とノンフィクションの違いを理解できていない生徒は意外と少なくありません。そこを確認するところから始めます。フィクションのジャンルは、青春小説、恋愛小説、家族小説、ミステリー小説、SF/ファンタジー小説、サスペンス/ホラー小説、歴史小説、近代小説、古典/伝承/詩歌、その他の小説、という分け方にしました。それぞれのジャンルにどんな作品があるかを紹介します。
Lesson.7 ジャンルを知ろう(ノンフィクションとは何か)
ノンフィクションのジャンル分けは十進分類に基づいて、請求番号を見れば誰でもわかるようにしています。 こちらも各ジャンルにどんな本があるかをミニレッスンで簡単に紹介していきます。小説に比べてノンフィクションは「むずかしそう」「おもしろくなさそう」と敬遠されがちですが、表紙が見える状態にして紹介すると興味を持つ生徒は少なくありません。前回の小説と合わせて一通りのジャンルについて説明し終えたので、これで生徒たちが読み終わった本を読書記録に記入する準備が整いました。読了または中断で本を手放すときは必ず読書記録をつけるということを習慣づけていきます。
Lesson.8 書き出しの一行を味わおう
本を選ぶとき、「なんとなく」「タイトルが気になったから」「表紙がオシャレだったから」という理由で選ぶ生徒が少なくありません。それらは本を手に取るひとつのきっかけではありますが、それだけだと自分に合う本をなかなか選べずにゾーンに入れない場合もあります。そこで、ミニレッスンで自分に合う本を選ぶための材料をいくつか紹介します。帯や裏表紙に書かれた紹介文やあらすじを参考にすること、ページをパラパラとめくって分量や難しさを確かめること、そして、書き出しの一行を読んでみることなどです。書き出しの一行については、ウェブサイト「Kakidashi」(http://kakidashi.com/)からおもしろそうだと思う本を見つけるというワークも行います。この日の「共有の時間」には、今日自分が読んだ本の書き出しの一行を抜き出してロイロノートで提出してもらいます。みんなの回答を共有して、書き出しの一行を読んで最も読みたくなった本を授業冊子の「読みたい本リスト」に加えてもらいます。
Lesson.9 オススメの本を紹介しよう
自分の選んだ本を1冊読了することができたら、それを紹介してもらいます。本を読むことが自分ひとりの中で完結するのではなく、読書家同士がつながることによって読みが深まったり新しい本に出会えたりするのだということを経験してもらうのがねらいです。授業内の「共有の時間」に紹介しあうことに加えて、読書推せん文コンクール「お気に入りの一冊をあなたへ」に応募する文章を執筆してもらいます。このコンクールは字数制限が250~300字と短いところが魅力です。読み書きが苦手な生徒でも挑戦できる分量なので、学年全体で取り組むにはうってつけです。また、推薦する相手を明確にし、特定の読み手に対して文章を書くという形式も特徴的です。生徒たちは「けんかをして気まずくなった友達」「去年亡くなったおじいちゃん」「織田信長」「10年後の自分」などに向けて本をオススメしていました。
1年生1学期は、このようにスモールステップを踏みながら読書家としての習慣を身につけ、本を読むことの楽しさを体感してもらいます。
★1 図書館脱出ゲームは文化祭中の図書館イベントで、図書委員が運営しています。指示書に書かれたヒントに沿っていろんな本の中から文字を一つずつ集めていくと、ある本のタイトルになります。本のタイトルを当てられたら脱出成功です。参加者には図書委員が手作りした栞をプレゼントしました。2025年度の文化祭では2日間で900名近くが来館して賑わいました。
★2 生徒への期待とルールについては、『イン・ザ・ミドル』の92〜97ページを参照ください。




