前回のブッククラブについての記事(https://wwletter.blogspot.com/2026/03/blog-post.html)を書いたあと、しばらく私は興奮が冷めませんでした★0。子どもたちが読書の楽しさを発見していく姿を思い出し、その記憶に浸っていました。教師として、本当に幸せな日々でした。でも同時に、その「良い日々」の前にあった時間も思い出したのです。生徒たちがブッククラブで深い話し合いができるようになるまで、5か月間トレーニングを続けたあの日々。思い通りにいかなくてイライラしたこと、焦り、「この子たちは本当にできるようになるんだろうか」と不安になったこと。あれは、正直つらい日々でした。
私の投稿に寄せられたレベッカ・アルバー先生のコメントは、まさにその気持ちを代弁してくれていました。彼女は教師たちにこうアドバイスしています。「あきらめないで。」本当に、その通りです。
もう一度強調しておきたいのですが──最初の6年生(日本の中1に相当)のクラスをブッククラブに参加できるように育てるまでに、5か月かかりました。そして、その成功はまさにこの準備期間のおかげだったと、私は確信しています。(教師としての私の信念のひとつ:準備しすぎ、ということは絶対にない。)★1
土台づくり
では、その5か月間に何をしていたのでしょうか。私は、生徒たちのスキル、態度、人間関係に細心の注意を払いながら、ゆっくりと、慎重にこの仕組みへと導いていきました。そして、弱い部分があれば何度も立ち返って教え直し、補強しながら、少しずつ手を離していきました。そのときに取り組んだことの一部を紹介します。
1. まず、生徒たちに「読むことの意味」を考え、語らせることから始めた。
多くの生徒は学年相応のレベルよりずっと低い読みの力で、小学校時代にすでに読書から遠ざかってしまっていました。また、「読書をする人=自分とは違うタイプの人」というイメージをもち始めている子もいました。まずは、彼らを“読書に引き込む”必要があったのです。そこで私はこう問いかけました。「なぜ読むの?」すると、生徒たちは100個以上の理由を挙げてくれました。そのリストは一年中教室に掲示され、何度も話し合いのきっかけになりました。★2
2. 私自身が「読み手であること」を、生徒たちに日常的に語った。
私は、生徒たちにいつも「自分にとって読むとはどういうことか」を話していました。いつ読んでいるのか、どこで読んでいるのか、ブッククラブでどんな話をしているのか、週末に古本屋をどうやって巡っているのか──そんなことを、折に触れて共有しました。読んでいる本の一節を読み聞かせることもありました。意図的に、読書の楽しさや、気分転換になること、問題解決や人生の困難に向き合う助けになること、そして読書からどんな学びを得ているのかを伝え続けたのです。
3. 生徒たちと似た背景やルーツを持つ著名人の文章を紹介した。
また、読書が人生をどう変えたかについて書かれた記事やエッセイを、生徒たちに紹介しました。それらは、生徒たちと同じような背景や民族性を持つ作家や著名人によるものでした。Malcolm X、Luis Rodriguez、Oprah Winfrey★3 をはじめ、多くの人々が「文学が自分の人生をどう変えたか」を語っています。そうした文章は、生徒たちにとって強い共感と励ましになりました。
また、読書が人生をどう変えたかについて書かれた記事やエッセイを、生徒たちに紹介しました。それらは、生徒たちと同じような背景や民族性を持つ作家や著名人によるものでした。Malcolm X、Luis Rodriguez、Oprah Winfreyをはじめ、多くの人々が「文学が自分の人生をどう変えたか」を語っています。そうした文章は、生徒たちにとって強い共感と励ましになりました。
立ち上げのプロセス
ここまで読んで、イメージがつかめてきたでしょうか。読書の楽しさや読解スキルの育成にたどり着くためには、まず子どもたちの“読みたい気持ち”を広げる土台づくりが必要でした。私は、生徒たちがこのチャレンジングな活動に前向きに取り組めるよう、時間をかけて働きかけ続けました。同時に、必要なスキルも教えていきました。
1. 毎日読み聞かせをし、子どもたちが話す時間をつくった。
私は毎日読み聞かせをしました。(絵本が大好きなのは、短くても意味がぎゅっと詰まっていて、話し合いにぴったりだからです。)
読み聞かせのあとには、子どもたちが自由に話せる時間を設けました。その際、私は次のような力を引き出すための質問を工夫しました★4。
- 自分の経験と結びつけて考える
- 行間を読み取る
- 先の展開を予想する
- 言葉づかいや表現に注意を向ける
ブッククラブでは、子どもたち自身が“問いをつくる名人”になることがとても大切です。そのための土台を、日々の読み聞かせの中で育てていきました。
私は、ペアで話し合う活動のときにも、生徒たちにフィードバックをしていました。話している様子をそばで聞きながら、その場で具体的に「どうやって相手と対話を深めるか」について指示を出したのです。
2. 私が求めるスキルを、何度も“見せて”教えた。
私は、生徒たちに求めるスキルを、繰り返し自分でモデルとして示しました。誰かの発言にどう応じるか、テキストから根拠を見つけて共有する方法、相手に敬意を払って異なる意見を述べる方法──こうしたことを、実際にやって見せたのです。ときには、生徒の一人と私がペアになって、会話そのものをモデルとして見せることもありました。また、言い出し方(センテンス・スターター)や会話の枠組みを掲示し、いつでも参照できるようにしました。モデルを示すことは欠かせません。(これは、どんなスキルを教えるときにも当てはまります。)
生徒自身にも「よい話し合い」をモデルとして示してもらいました。ブッククラブが始まってからも、私は定期的に──ときにはその場の判断で──素晴らしい話し合いをしているグループのまわりにクラス全体で“フィッシュボウル”をつくるようにしました。みんなでその会話を見て、聞いて、「なぜこの話し合いはよかったのか」を一緒に振り返る時間をつくったのです。子どもたちは、私たちが望む姿を“目で見て”理解する必要があるのです。
3. 読書や話し合いの指導と並行して、コミュニティーづくりや対立解消の活動も行った。
ブッククラブが「安心して挑戦できる場」になるためには、生徒同士の関係づくりが欠かせません。そこで私は、クラスのつながりを育てる活動や、意見のぶつかり合いを解決する練習を継続的に行いました。人間関係の土台があってこそ、子どもたちはリスクを取って発言できるようになるのです。
4. その一方で、この年齢向けの小説を片っ端から読み、クラス用の図書コーナーを充実させた。
私は、この年代の子ども向けの小説を読めるだけ読みました。そして、生徒たちにとって手に取りやすく、興味をもてる本を集めて、小さな図書館をつくりました。ブッククラブで本を選ぶ段階になったとき、自分が提示する本に100%自信をもてることが必要だったからです。同時に、生徒たちの読者としての姿──どんなジャンルが好きなのか、読みのレベルはどれくらいなのか──をしっかり把握しておく必要もありました。
5. 4か月ほど経ったところで、4人グループをつくり、クラス全員で同じ“とびきり面白い”小説を読んだ。
毎日、私は短いミニ・レッスンを行い、ブッククラブの重要な要素をモデルとして示しました。たとえば、
- 話し合いをどう始めるか
- ファシリテーターの役割とは何か
- 誰かが参加していないとき、どう対応するか
そのうえで、生徒たちをグループに送り出しました。とにかく、たくさん、たくさん、たくさんの“ガイド付きの練習”★5を重ねました。
そして最後の1か月間、私はブッククラブの魅力を全力で語り続けた。
この方法を身につけたらどんなに楽しいか、どれだけ自由に読めるようになるか、どんなワクワクが待っているか──私は毎日のように話し、生徒たちをその気にさせました。誘惑し、惹きつけ、ワクワクさせる。そんな1か月でした。
いよいよスタート
そして1月(日本では、9月に相当)の終わり、ついに最初のブッククラブを始めました。もちろん、ところどころうまくいかない場面もありましたが、全体としてはとても良いスタートでした。子どもたちは一緒に読むことにワクワクしていて、この方法をもっと良くしていこうという意欲も見せてくれました。
ブッククラブについては、まだまだ語りたいことがたくさんあります。これまで、どうやって子どもたちをブッククラブに導いたか、そしてなぜ誰もが試す価値があるのかをお話ししてきましたが、まだ伝えきれていないエピソードがたくさんあります。★6 その間に、読者のみなさんにもぜひ教えてほしいのです。
生徒たちをブッククラブに慣れさせるために、どんな工夫をしましたか?
どんな課題がありましたか?
うまくいかなかった場面を、どう乗り越えましたか?
出典: https://www.edutopia.org/blog/literature-circles-setting-up-getting-started-elena-aguilar
★0ここでの「私」は、『教師のためのアート・オブ・コーチング』の著者のエリーナ・アギラーさんです。彼女は2000年以降ぐらいはコーチングに注力していますが、その前はこの記事から分かるようにブッククラブを含めたリーディング・ワークショップやライティング・ワークショップ、そして探究学習などに力を注いでいたことが分かります。繰り返しますが、生徒対象にこれらの実践をすることと、教師対象にコーチングをすることは根源の部分で同じと言えます。(それが、日本の教員研修がまったくと言っていいほど機能しない理由でもあります!)
★1皆さんは、この段落を読まれてどのような感想をもたれましたか? 「暢気な取り組みをしているな~!?」「準備に5か月もかけられて羨ましい!」 そもそも、教師(ないし、教科書)が計画した単元案や授業案(指導案)通りに授業が進むことなんてあるのでしょうか? それは、たとえ進んだとしてもあくまでも計画をこなせただけで、生徒たちが身につく形で学んでいるか否かはまったくの別物なのでは。後者の場合の多くは、学べていない責任を生徒たちに押し付ける形で・・・ いずれにしても、教師対象の研修にしても、生徒対象の授業にしても、サイクルを回し続けることが鍵です!(記事|noteを参照)
★2これと同じ問い「そもそも、なぜ読むの?」に対する8人の小学校教師の回答が『「読む力」はこうしてつける』の41~3ページで紹介しています。また、「読むことが可能にしてくれることは?」「読むことを通じて身につけさせたいことは?」「あなたにとって『読む』とは?」の3つの問いにも、この本の第1章で答えています。
★3自分のテレビ番組で、ブッククラブをしたり、たくさんの本を紹介していました。
★4ここで扱っているのは、優れた読み手たちが使っている読む際に使っている方法で、『「読む力」はこうしてつける』でそれらについて詳しく紹介されています。
★5少人数の生徒に対して教師がガイドする指導については、『読書家の時間』の初版の第6章、および『「学びの責任」は誰にあるのか』の第3章をご覧ください。これができるようになると、教え方の幅が広がりますし、生徒も身につける形で学べるようになります。
★6ブッククラブの魅力については、『読書がさらに楽しくなるブッククラブ』を参照ください。小学1年生でも楽しく取り組めている事例を紹介されています! また、このブログでも過去に何回もブッククラブについては紹介していますので、左上に「ブッククラブ」を入力して検索してみてください。




