書くことを教える教師は、生徒がたくさん書き、しかも意味のあるコメントを受け取ることで書く力が伸びることを知っています★。また、読んでコメントを付けなければならない大量の生徒の文章に埋もれるあの感覚もよく知っています。こうした負担に対処する方法はいくつもあるとはいえ、この紙の山はやはり生徒と向き合う仕事の中で大きな重荷です。
書面でコメントを書く量を減らすために、授業中に生徒一人ひとりとカンファランスの時間をもつことを最初に考えたとき、時間がどれほどかかるのか不安でした。しかし、すでに自分の教室でそれをしていた同僚の助けもあり、思い切って生徒と書くカンファランスを実施したところ、教室のあり方にも生徒の学びにも大きな変化が生まれたので、無理なく効果的に進める方法と、予想していなかったプラスの変化を紹介します。
カンファランスの前にすること
生徒とカンファランスを行う前に、私はまず生徒の作文をざっと読み、個々の生徒の作品には一切書き込みをせず、自分のメモに三つの点だけを記録しました。すなわち、その作文に使っている評価基準での点数、生徒が今回の課題でうまくできていた点、生徒がこれから取り組む必要のある点です。
この作業をしながら、クラス全体に向けて後で短い授業として扱うために、共通して見られた強みや伸ばすべき点についてもメモを取りました。
私は、生徒の作文に何も書き込みをしていない状態のまま返却し、クラス全体として見られた強みと伸ばすべき点について簡単に説明しました。
次に、生徒には配布したプリントの問い★★に沿って自分の作文を振り返ってもらいました。自分の作文に点数を付けるだけでなく、私とのカンファランスで「自分が伸ばしたい点」をいくつかの候補の中から一つ選んでもらいました。この焦点の絞り込みが、カンファランスの時間を効率的かつ効果的にするうえで重要でした。
私は、生徒に対してカンファランスの際の期待事項を説明しました。カンファランスをしている生徒と、順番を待ちながら自分で作業している生徒の双方に向けてです。生徒たちはひたすら書く活動の目的を理解し、すでに自立的な作業時間の基本的な約束事ができていたこともあり、この時間を有意義に使う準備ができていました。
カンファランス中にすること
生徒が週の終わりに提出する数日かけて取り組む作文の課題をしている間、私は一人ひとりと5分ずつ個別にカンファランスを行いました。
生徒は作文と振り返り用紙を持って私の隣に座ります。私は事前に作文を読んだときのメモを手元に置き、携帯電話で5分のタイマーをセットしました。
まず、生徒が自分の作文がどの点数に値するのか、そしてその理由を評価基準の言葉を使って説明します。その後、私が付けた点数を示します。多くの場合、点数は近いのですが、もし一致しないときは、生徒が評価基準の理解を深める必要があることがわかります。
次に、生徒は自分の作品の中で、今回のカンファランスで取り組みたい一点を伝えます。作文を参照しながら、生徒が改善できる点について話し合い、生徒はその内容をメモします。タイマーが鳴る前に話が終わらなかった場合は、最後の話題をまとめて終え、必要であれば授業時間外にも来てよいことを伝えました。
カンファランスの後にすること
私は、生徒に修正を加えた作文の提出期限を伝え、クラス全体でカンファランスの進め方について振り返りをしました。生徒は、5分間自分の書くことについて話し合ったほうが、私が作文に書き込んでいたコメントよりもはるかに多くの学びがあったとはっきり述べました。
これまで私は、授業時間外でも書くことについて話したい生徒にはいつでも対応すると伝えていましたが、それを実際に活用する生徒はほとんどいませんでした。ところが、授業内でカンファランスを経験したあとでは、私の申し出を利用する生徒が大幅に増えたのです。生徒は、カンファランスの効果を自分で体験したことで、その後は自分の時間を割いてでも私と話そうとする意欲をもつようになったわけです。
授業時間にカンファランスをする価値がある理由
私の授業は平均して30人ほどの生徒がいるため、カンファランスにはかなりの時間が必要です。生徒一人ひとりとカンファランスを行うために、55分の授業を三回まるごと使い、私自身もかなり集中したエネルギーを注ぎました。それでも、その効果は十分に時間をかける価値がありました。
個別に焦点を絞った教え方をすることで、生徒はカンファランスで学んだ内容に注意を向け、実際に書くことに活かそうとする姿勢が強まりました。その結果は、初稿と修正後の作文の点数の差にすぐ表れました。
私は、生徒の作文にこれまで書いてきた短くて読みにくいコメントよりも、はるかに明確にフィードバックを伝えることができました。
生徒は、クラス全体の前では聞けなかった、あるいは聞こうとしなかった書くことに関する質問をすることができました。そのおかげで、私自身も書くことの教え方をどう改善すべきかをより深く理解できました。
生徒とのカンファランスには、思いがけない結果として、クラスの文化が大きく変わるという効果もありました。今振り返れば、生徒一人ひとりと話し、それぞれの必要に耳を傾けることが互いの関係性を良くするのは当然のことですが、教師が日々直面する多くの仕事の中では、数分間のつながりがもつ大きな価値を忘れてしまいがちです。
出典・https://www.edutopia.org/article/5-minute-writing-conferences
(この記事の執筆者Jori Krulder先生は20年の経験をもつ高校英語教師で、他の教師との交流を通じて授業への意欲を新たにしてきました。サンディエゴの都市部で4年間英語と読むことを教えた後、北カリフォルニアの農村部の高校に移り、チコ州立大学で教育学の修士号を取得しました。彼女の生徒たちは、よく読み、よく書き、よく話し合います。最終的な目標は、生徒が自立して「理解し」「理解してもらえる」力を身につけることです。
詩や文学、生徒の学び、教師の成長を支えることへの強い関心から、EdutopiaやTeaching Channelなどに記事を書き、文学教育の書籍にも章を寄稿しています。)
★欧米では、書くことを教える教師(writing teacher)と読むことを教える教師(reading teacher)が別々に存在する場合があります。いずれも、生徒がたくさん書いたり、読んだり、そして書いたり読んだりしていることに的確なコメントを受け取ることで書く力と読む力が伸びる最大の要因であることを理解しているので、ライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップを実践している教師が多いです。日本では授業時間内に、生徒たちがひたすら書いたり、読んだりする時間を確保しているでしょうか?
★★「作文の振り返りとカンファランスへの準備」のプリントに含まれている質問:
・評価基準で最高点を取るために必要な作文の要素は何ですか。自分の言葉で書いてください。
・自分の作文にどんな点数を付けますか。その点数を選んだ理由を、評価基準の言葉を使って説明してください。
・作文を改善したい点を挙げてください。
・作文の中で、あなたが最も誇りに思う部分はどこですか。理由も書いてください。
・作文の中で、教師に手伝ってほしい重要な改善点を一つ挙げてください。
・修正のための計画は何ですか。(これはカンファランスが終わるまで書かなくていいです)
