2024年1月13日土曜日

読み書きを「楽しめる」ように、自ら調整する 〜そのスタート地点にあるのは違和感?

  先週の投稿「『作品をよくするのではなく、書き手を成長させるために教える』ってどういうこと?」を読みながら、「書き手(そして読み手も)としての成長」と併せてよく耳にする「自立した書き手、読み手」というフレーズについて、改めて考えました。「自立した」と言われると、「強制されなくても取り組む」というイメージを私は持っています。もし、卒業後という、教師の手が届かない時間も含めて考えると、「強制されなくても行う」のは、チャレンジかもしれません。ミニ・レッスンもカンファランスも、交流やサポートをし合う仲間も、たっぷり読み書きする時間もない環境になる可能性があるからです。

 「強制されなくても取り組むためには何が必要?」と考えるときによく思い出すのが、2021年7月23日の投稿「それぞれにぴったりの方法を見つけることをサポートする、という教師の役割」で紹介した、リディア・マホヴァによる「新しい言語を学ぶ秘訣」というTEDトークです(★1)。これは外国語学習についてのTEDトークですが、読み書きも含めた学び方に応用できる部分が多々あるように思います。

 マホヴァ氏は複数の外国語を流暢に使う人(ポリグロット)たちについて、それぞれ学習方法は異なるものの、その共通項として、一人ひとりが、「言語を学ぶ過程の楽しみ方を知っていること」を指摘しています。「学ぶ過程自体が楽しければ、強制されなくても続く」、確かにそのことには納得です。

 これをライティング/リーディング・ワークショップの教室から卒業した子どもたちで考えると、「これまで教室に存在していたサポートや時間がない条件下で、読み書きのプロセス自体を楽しめるかどうか」ということになりそうです。

 書いている途中のフィードバックもなく、読みたくなるような本も手元になく、本をお薦めしてもらえる機会ない。それでも読み書きを楽しく続けられる人もいるでしょうし、つまらなくなってやめてしまう人もいそうです。特に後者の場合、楽しめるように、自分でなんとか調整する力がないと、継続するのは難しいかもしれません。

 今回、マホヴァ氏のTEDトークを改めて視聴すると、次のように終わっています(日本語字幕よりの引用です)。

「流暢に話せるまでに足りないのは  楽しめる方法なのかもしれません   方法ひとつで あなたも ポリグロットになれるかもしれないのです  ありがとうございました」

 マホヴァ氏は、うまくいかない時に欠けているものは、「現在の方法が楽しめるものではないので、それに気づいて、それを変えること」と言っているようにも感じます。つまり、「この学び方は、何か欠けている、何か違う」と思い、楽しめる方法を探す。あるいは、それを楽しめるように、工夫したり調整したりする、ということです。

 そのために在学中にできることは、(将来)「これは違う」「楽しくない」「夢中になれない」という違和感を感じられるような基準/土台をつくることなのかもしれません。教室で「書くことには本物の読者がいる」「読むことはリーディング・ゾーンに入れること」のような経験をすることで、将来の読み書きが楽しめない時に、何か欠けている? 何か違う?という違和感をもつことにつながるように思います。この違和感が、夢中になれない学びを修正/変更/新たな選択をするスタート地点のように思います。

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 私は英語を教えていますが、英語に触れるという点からは、ここ数十年の質・量の変化には目を見張るばかりです。著者による絵本の読み聞かせや、俳優による上手な読み聞かせサイトもありますし、TEDトークのように、多様な内容や伝え方を視聴できるサイトもあります。上手な読み聞かせやTEDトークを視聴していると、あっという間に時間が過ぎますし、読むことが大好きな私は、持ち歩きしやすいペーパーバックがあれば、通勤での電車の待ち時間が待ち遠しいくらいです。

 少し前に、隙間時間に他の外国語を学びはじめたのですが、とりあえずスタートしてみると、文脈がつながらない細切れの文章が次から次へと出てきました。この言語で、英語の〇〇や△△というサイトみたいなものがあればいいのに、と思いつつも、うまく見つけられていません。言語学習における継続の大切さもよくわかっているので、細切れの文章であっても、毎日、短時間の学びをやめないようにしていますが、「方法を変えなくては」「何かプラスしなくては」という思いが、いつもあります。続けるためにも、探し続けようと思います。

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★1

https://www.ted.com/talks/lydia_machova_the_secrets_of_learning_a_new_language(英語、日本語、その他複数の言語の字幕でも視聴できます)


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