2014年8月1日金曜日

『読書家の時間』を読んで (2)


「先生、俺毎日が忙しいんですよ!」
「へぇー、どうして?」
「塾や他の習い事がいっぱいあるんです。」
「そっか、じゃあ作家の時間みたいにじっくり自分と向き合える時間は貴重なんじゃない?」
「本当にそう思います!」

教壇に立って5年目になりました。今年度、はじめて6年生担任になり、作家の時間に取り組んでいます。
冒頭の言葉のやり取りは、自分とクラスの子供との会話です。このように、教師と同じぐらい忙しい日々を送っている子供たちにとって、ほんの少しでも安らぎを与えられるのが作家の時間でした。そして、この実践に手応えを感じていたころに、新評論から新たに出版され出会えた本が「読書家の時間」です。もうすでに作家の時間の素晴らしさを実感していたので、この「読書家の時間」もきっと素晴らしい実践なのだろうと期待をこめて読み始めました。

まず、印象に残ったことは、「学習指導要領との比較」がとてもわかりやすいというところです。どんなによい実践でもあくまで学習指導要領に基づいた授業を計画するのが我々の役目です。また、研究授業で実際にこの読書家の時間を実践しようと思うならば、ますます学習指導要領との関連が大事になります。その点において本著は、管理職、同僚、保護者などに、実践に関する説明責任がしやすい構成になっていると思います。

次に、これは同じ新評論出版の「作家の時間」でも感じたことなのですが、「これからこの実践をやろう!でも、はじめに何をすればいいのだろう?」という疑問にしっかり答えられる内容になっているということです。具体的には「第1 最初の10時間」「第2 読書環境をつくろう」を読むだけで、だいたいの実践の流れが見えてきます。もちらん、次の章からのミニレッスンやカンファレンスの説明も大切になるのですが、まずは「この実践は自分のクラスでもできそうだ!」という意欲とイメージが、最初の数ページでとても尽きやすいと思いました。

さらに、「第10 教師の変容」について触れたいと思います。この章には、なぜ読書家の時間を実践しようと思ったのか、ある教師のインタビューがあります。読書家の時間の目標は「自立した読み手」を育てることです。それにはしっかりと教師自身がこの目標を意識しなければなりません。かつてこれまでも読書を好きにさせよう、と様々な実践がありました。しかし、それらはあくまでも「教師自身が望んでいる目標」に対して子供たちを導くという実践が多かった気がします。子供たちはもっと多様です。それぞれの読む力もペースも違います。そういった子供たちの前提をしっかり教師が把握することが読書家の時間において大切になります。つまり、「自立した読み手」を育てるために教師はどのような「考え方」を持たなければならないのか、この章は読書家の時間を成功させる根幹の部分が書かれています。

以上、読書家の時間を読んだ感想を述べましたが、最後に伝えたいことがあります。それは、作家の時間なり、ブッククラブなりを教室で実践する前に、「自分自身が体験してみる」ことをぜひおすすめします。自分が体験し、その面白さがわかれば、子供たちに対する行動や言葉掛けが変わっていき、より「自立した読み手や書き手」が育っていくのではないかと感じています。

茅ヶ崎市立梅田小学校 石井康友


    <メルマガからの続き>


「読書家の時間」読み終えました。
プロローグは本当に衝撃でした。
この本に携わった先生方が子ども達にどのように向き合ってきたのかということが伝わってきたからです。
 P7 依然の私は、誰かが大切だと言ったことを、
   みんなにうまく教えることができる教師が良い教師だ
   と思っていました。
   本当は、それを大切だと思っていないのに、
   大切だと思っているふりをしていたことに気付かずに。

10章「教師の変容」でインタビューの中から読み取れるように、この道を歩みながら先生達は自分に向き合い、自ら道作りを続けていったのですから。
 P195 「一斉授業に戻ることで、一気に気が
     楽になりました。指導所を見れば、
     どのような流れで授業を行っていけばよいか
     が書かれてありますし、
     子ども達の活動を指示することによって、
     とりあえずは自分の望むようなことを
     子ども達は始めます~」
このくだりは、やはり、そう思うんだなぁ。本をまとめていくプロジェクトに入っている方ですらそうなのだなぁと。そうであれば、方法を押し付けられて取り組んでいる先生たちは動かないだろうと。

Sさん


『読書家の時間』を読んで

副題に「自立した読み手を育てる教え方・学び方」とありますが、子どもと共に、自立した教師を育てる時間であることに気付かされました。
伴走する教師の姿と、そのプロセスで活かされるアイディアとツールが本の随所に散りばめられていますが、圧巻は第10章の‘教師の変容’でした。
制度上の時間ではなく‘生きられる時間’の中で、子どもも教師も呪縛から解かれていくーーーー教育の原点がそこに在るように思えました。
間違いなく学生にも薦められる一冊です。

聖心女子大学 永田佳之

0 件のコメント:

コメントを投稿