読み書き教育に興味がある人に「この春休みのおすすめ読書」を紹介します。(間に合わない場合は、ゴールデンウィークに延ばしてください。)
本は、ウォルター・アイザックソン著の『レオナルド・ダ・ヴィンチ』(文藝春秋)です。彼は、『スティーブ・ジョブズ』や『アインシュタイン』についても書いている有名な伝記作家です。そして、ジャーナリストということもあって、彼の書き方は本人たちが残した様々な記録をベースに書きます。レオナルドの場合は、本人が残したノート=ジャーナルが中心です。
レオナルドについて、克明に彼自身が残したノートから見えてきたレオナルド像を上下二巻で紹介してくれた後に、アイザックソンは現代人がレオナルドから何を学べるのかをまとめてくれています。そのうちの一つが「紙にメモをとること」です。
「その死から500年が過ぎた今でも、レオナルドのノートは現存し(しかも、想像がつかないほど、高価な値段が付いています!)、私たちに驚きと刺激を与えています。私たちがノート(ジャーナル)に記録を残すと、今から50年後、孫の世代が驚きと刺激を受けるかもしれません。ツイートやフェイスブックの投稿では、そうはいきません」(下巻の最後、310ページ)
学校で一般的に理解されているノートと、レオナルドがとっていたノートは根本的に違います(それもあって、タイトルではあえて「ジャーナル」を使っています)。後者は、自分が見たこと、考えたこと、聞いたこと、疑問や問い、したこと、これからすべきと思っていることなどなど(要するに、自分の好奇心の足跡!)を残すスペースです。記録しないと、そのほとんどは忘れられてしまいますから。レオナルドの大きな特徴は、その絵を描く才能と視覚思考の持ち主だったことから、文字よりもスケッチの方が多いぐらいであったことです。そして、彼の場合はテーマも限定されません。一人の人がよくこれまで多種多様なことに興味がもてたと凡人は思うほどの幅の広さです!(もちろん、限定することも可能ですが! それが、国語のために子どもたちがとる「作家ノート」や「読書ノート」であり、理科でとる「科学者ノート」であり、社会科でとる「市民ノート」や「歴史ノート」です。算数・数学の「数学者ノート」も可能でしょうか? 体育や音楽や家庭科のノートは?)
レオナルドの場合は、「探究する」ため、自分が「学び続ける」ため、「楽しむ」ために、記録に残していました。「これについては出版する」のような書き込みも繰り返しあるようですが、結果的に彼はそれを実現させませんでした。「探究する」こと、「学び続ける」こと、「楽しむ」こと、「発見したり、再発見したりする喜び」を、ほとんどその死まで優先したので。
板書のノート指導とは、ほぼ180度転換している、このジャーナルを子どもたちがレオナルドのようにつけられる指導をしてみませんか? 板書のノート指導が、子どもたちの宝物になることはあり得ませんが、ジャーナルの方は本人だけでなく、家族、知り合い、ひょっとしたら人類の宝物になる可能性をもっています!
それを指導する際に参考になる本が今月末に出ます。
http://www.tsukiji-shokan.co.jp/mokuroku/ISBN978-4-8067-1634-1.html
この本は自然/野外に焦点を当てていますが、詳しく紹介されている探究の方法は、多くの分野でそのまま使えます。(まさに、レオナルドが自分のノートに残していたのと同じように!)
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