2021年4月23日金曜日

「読書感想文」は救えるか? 救う価値はあるのか?

 http://wwletter.blogspot.com/2020/01/blog-post_24.html の記事を、そのまま読書感想文を推進するある団体に送ったところ、当日のうちに以下の返信(以下、コメントとします)をいただきました。

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大変参考になる文章をお送りいただき、ありがとうございます。

読ませていただき、問題点が浮き彫りになりました。

感謝申し上げます。

「読書感想文 と レターエッセイ の違い」とありますが、どちらも「書く」段階で教師の指導があってこそ、子どもたちの学びが深まるものです。

論点を整理してみますと、コンクールに「出品」することと、レターエッセイを「書く」ことを比較しているように思えます。

(無意識のうちに、読書感想文=読書感想文コンクールと思っているのかもしれません)

日々の読書感想文を「書く」指導に加えて、コンクールに「出品」するためには別の指導が必要だと考えます。

例が適切かどうかわかりませんが、学校では日常の水泳指導を通して泳ぐ喜びや楽しさを味わわせています。

水泳の記録会に出場するには、より速く泳ぐための指導や練習の積み重ねが欠かせません。

読書感想文コンクールに「出品」するには、推敲するなどの指導が欠かせません。

指導が伴わないで、宿題としてしまうことに問題があります。

レターエッセイの指導と同じように、教師が読書感想文の価値を踏まえた指導をすることで、「読むこと」や「書くこと」の資質が深まると思います。

当会としても日々の読書活動や学習活動に関する多様な指導の充実に取り組む所存です。


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 以上の返信をhttp://wwletter.blogspot.com/2020/01/blog-post_24.htmlの執筆者のK先生に送ったところ、週末をはさんだ月曜日には以下の反応を送ってくれました(コロナ騒動で、長いことアップできない状態が続きました! しかし、そろそろ今年度の読書感想文を考えないといけない時期が来つつあるので、ぜひ一人でも多くの方に考えていただきたいと思います)。


【同意点】

・読書感想文もレターエッセイも書くこと、読むことの力をつけたいという思いのある活動である。~ その通りです。

・書く段階で指導が必要である。~ その通りです。

・「推敲するなどの指導が欠かせません。」~ その通りです。

・「指導が伴わないで宿題としてしまうことに問題があります。」~ その通りです。

・「多様性」への対応、インクルーシブな授業が必須であること。~ その通りです。


【ブログの記事とコメントとの間に誤解を生じている点】

・読書感想文が面白くないのは、読書感想文の指導や評価をする教師の能力の問題ではないこと。

・「書く段階での教師の指導」のイメージがコメントを書いている方と私や現場の先生方では異なっていること(例えば、推敲とフィードバックは意味が異なる等)。


 そして、これらの誤解は、下にリストアップした質問を(読書感想文の推進団体や読書感想文に興味のある方々に)考えていただくこと/答えていただくことで、かなりの程度明らかになると思います。


コメントの文章から生まれた質問】

・なぜ教師は読書感想文の指導に熱中しないのか?

・なぜ教師は書かせた作文をろくに指導できないのか?(いじめの被害を書いた作文を読まずに見逃した事件がありました。)

・「読書感想文の価値を踏まえた指導」とは?

・書くことの楽しさや、成長を実感する読書感想文の指導とはどのようなものか? 

 そのための時間はどのように確保されるとお考えか?

・「推敲」は誰がいつどのようにするのか?

・「日々の読書感想文の指導」とは、どのような指導か?

・「日々の読書感想文の指導」で書く力、読む力はつくのか? 

 それをどのような計画で行うことを想定しているのか?

・「日々の読書感想文の指導」にかける時数は何時間が適切なのか?

・なぜ、現実に「日々の読書感想文の指導」が広く行われないのか?

・読書記録はよくあるが、あれを「日々の読書感想文」と考えるのか?

・コンクールを組織/仲介している方々は、現場教師の忙しさ、仕事の多さを認識できているのか?

・なぜ、読書感想文が宿題にされるとお考えか?

・「読書感想文とは何か」について答えられていないので伺いたいです(つまり、読書感想文を通して何を達成したいと考えているのか?)。

・「多様な指導」とは何か? 多様な指導方法か、多様な生徒に対応する方法か、それともそれ以外か?

・読書感想文コンクールの評価基準はどのようなものか? 事前に書き手に評価基準が公開されないのはなぜか?

・書くこと、読むことについて力をつけることを目的とするなら、指導の過程及びコンクールについても評価基準をルーブリックで示すことが教育的配慮と思うが、なぜ評価基準がないままなのか?

・評価基準を示さない教育的利点はあるのか?

・「記録会(読書感想文コンクール)」に参加するための指導が、授業時間に全員に求められて良いのか? (それは、例えるなら、部活の練習を授業ですることに等しくないのか?)

・国語としての読書感想文の指導のゴールはどのようなことか?

・学校現場を構成する要素が新しくなるなかで、読書感想文の役割は何か?

・読むもののコンテンツ量や媒体が多様化する中で、読書感想文の指導は変わらなくてよいのか?

・読書感想文の字数量の根拠はなにか?

・多様な言語環境で育ち、小学校入学段階で言語感覚に差のある児童生徒を育てていく時、読書感想文の指導はどのように行われるのがふさわしいとお考えか伺いたい。

・書かれた読書感想文は、どのように活用されるのがよいか? 活用の目的は何か? 誰のためか?


 これだけでも、「読書感想文をハックする」には十分ですが、この後に私の求めに応じて、K先生は下の表も作成してくれました。



 この表からも、どちらにエネルギーと時間を注いだ方が子どもたちは本好きや書くことを好きになるか明らかなようです。読書感想文を推進している方々は、上記の質問や表を踏まえて、読書感想文をレターエッセイ以上に魅力的なものにするか、それとも「ギブ・アップ宣言」をすることで、教師や子どもを苦役から解放する英断を下していただければ幸いです。




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