2021年4月2日金曜日

国語を教える目的は何ですか?

 それは、「よりよい読み手と書き手(+聞き手・話し手)」になってもらうことではないでしょうか?

 そのために、国語の教科書が役に立つと思えば使えばいいし、そう思えなければ、他の方法を考えるべきです。(おそらくは、大半の生徒には役に立たないはずです!★)

 また、正解が言える読解の仕方を教えることでも、いい点が取れた作文を書かせることでもないと思います。それなりの点数は取れても、その後、主体的(かつ自立的)に読みつづけたり、書きつづけたりしないのでは、教えている意味はほとんどありませんから。

 目的は、「よりよい読み手と書き手(+聞き手・話し手)」を育てることです。 まさに、リーディング・ワークショップとライティング・ワークショップが目的に掲げていることです。

 以下年度初めに「よりよい読み手」を育てるためにできることを紹介します。(書き手の場合もまったく同じです。聞き手や話し手の場合も同じと言えます。)

1.まずは何よりも、読み手としての生徒を知ること。

 教科書アプローチの的外れな部分は、これが視野に入っていません。教科書に出てくる教材は、対象が「誰であってもいい」を前提にしています。しかし、それは残念ながら無理な期待です。教室のいる生徒の興味関心、こだわり、読めるレベル、すでにもっている「理解の仕方の方法」などはあまりにも差がありすぎて、一つの教材が全員に適しているということはあり得ません!

 国語の授業の最初から、生徒たちが読みはじめることは大切ですが(願わくは、自分の興味関心がある本を読めるレベルで)、同時に、教師が生徒のことを知るための努力もスタートします(これは、年間を通して続きます! そうしないと、適切なアドバイスやコーチンができませんから)。

 そのための最善の方法は、アンケートを取ることです。

 https://sites.google.com/site/writingworkshopjp/teachers/kyouzai-daunrodo から「読むことについてのアンケート」★★を参考にして実施してください。

 教師はこの結果を使って、ミニ・レッスンやカンファランスをしていくだけでなく、個々の生徒にピッタリの本を提案することができます。

2.読む時間の確保

 よりよい読み手になるのに一番大切なのは、読む時間の確保です。間違っても、教師が特定の教材を使って読解の仕方を教えることではありません。(これをいくらやっても、圧倒的多数の生徒にとっては、右の耳から入って左の耳から出ていく状態が続くだけですから、無駄な努力はしない方がいいです!)

 年度の最初は、10~15分から始めて、徐々に伸ばしていきます。あわてないでください。

 生徒に読む本の選択と時間を提供することで、読む文化が形成されていきます。★★★読むことが当たり前という環境というか雰囲気を作ってください。そうすれば、教師が課さなくても、休み時間や家でも読みはじめる生徒が増え始めます。本には、それだけの魅力がありますから。(必ずしも、教科書教材ではない場合がほとんどですが。)おもしろい本に出合えたら、読むのをやめるのは極めて難しくなります。あなたも、そんな体験を何度かは味わっていませんか? ぜひ、そんな体験を生徒たちに度々してもらってください。

3.朝読と国語の時間の違い

 朝の読書の時間等を設けて、読む時間を確保している学校は少なくないと思いますが、それと国語で読む際の違いは、教師が生徒の個別カンファランスをする点です。よりよい読み手になってもらうために欠かせない要素です。教師は、各生徒と読む観点からの接点を増やしつつ、生徒がよりより読み手になるためのコーチングをしていきます。中学校ぐらいまでは、すべての生徒が「理解のための方法」★★★★を使いこなせていることを目標にしていいと思います。

 この個別コーチングないしカンファランスの行き着く先は、生徒自身が自らの読みをモニターし、振り返られ、そして新たな目標を設定できることです。(そんなことまで視野に入れて取り組んでいる朝読は、ありませんよね? この点について詳しく書いてあるのが、『イン・ザ・ミドル』の第8章です。)

4.読むことを習慣にする

 何でもそうですが、納得して/満足して行われているものの多くは、習慣化しています。(一方で、納得しないで/満足していないのに、習慣化しているものも学校の中には少なくありません。それらは、ハックする必要があることを意味します。「新評論、ハックする」で検索すると、シリーズの本が見られます!)

 一人ひとりが、自分が毎日(あるいは週に)読む時間を設定して、それをサポートするのも教師の役割です。もちろん、その時間は各自にとってピッタリの面白い、刺激になる本を読むことが前提ですから、教師はもちろん、クラスメイト、司書、ネット情報等から、絶えず各自にとってピッタリの面白い、刺激になる本を収集し続けることが、習慣づくりの大切な要素となります。

 読むことを習慣化する際の最大のポイントは、「これから読みたい本」のリストをどうやってつくり続けるかです。これがあれば、継続して自分にピッタリの面白い、刺激になる本を読み続けられることが約束されます。

5.読んだ中で、特に面白かったもの(や反発を感じたものについて)は発信する

 これは、読むことは単に情報を吸収するだけでなく、発信することの出発点でもあることを気づかせてくれる大切な要素です。https://wwletter.blogspot.com/2012/01/blog-post_28.html

 『イン・ザ・ミドル』の著者のナンシー・アトウェルは、これを「レター・エッセイ」というやり方で生徒たちにさせています。生徒たちを読み手として成長させるうえでの極めて効果的な方法になっています。(このブログの左上に「レター・エッセイ」と入力して検索するとたくさんの情報が得られますし、『イン・ザ・ミドル』の第7章もおすすめです。)

 

★完璧な「ボタンの掛け違え」があるからです。長年、評価の観点に「関心・意欲・態度」が含まれているのはご存知の通りです。しかし、こと教科書ベースの授業(国語に限らず、すべての教科で!)に関して、この関心・意欲・態度に占める責任の割合は、教科書がほぼ90%、教師の教え方が9.5%、そして児童・生徒が果たせる役割はあったとしてもせいぜい0.5%ぐらいだからです。0.5%しかないものを、あたかも100%として扱い続けていますから「ボタンの掛け違え」なわけです。教科書教材が機能しない責任を転嫁され続ける子どもたちは、たまったものではありません! 自分が選んだものでも、自分に興味関心やこだわり、体験や知識をもっていないものに「関心・意欲・態度」を示すことなどできようはずがありません。それは、提供する側(大人)が少し考えるだけでわかることです。

 そんな中では、当然のことながら「基礎基本となる知識」は身につかず、「思考力・判断力・ 表現力」を練習することも、「主体的に学習に取り組む」ことも、期待できようはずがありません!

★★あるいは、『イン・ザ・ミドル』の123ページの「読むことアンケート」を参考にして。ここでは、著者のアンケートのその後の使い方まで詳しく書かれています。

★★★この点についてお知りになりたい方は、『読む文化をハックする』が参考になります!

★★★★このブログの左上に「理解のための方法」を入力して検索すると、たくさんの情報が得られますし、「理解のための方法」に特化した本としては『「読む力」はこうしてつける』と『理解するってどういうこと?』がありますので参照してください。

参考: https://www.edutopia.org/article/starting-year-reading-right-foot

 

 

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