2020年11月27日金曜日

教育をハック(修繕)するための本から、国語の教え方をハックするヒントを得る

 日本の学校教育、たくさんのいい面をもちながら、同時に悪い面も併せもっています。前者は維持したり、さらに伸ばす必要がありますし、後者は修繕したり、場合によっては取り替えたりする必要があります。

 しかし、残念ながら、教師の多くはあまりにも忙しすぎて、そうしたことを自分の役割だと思っている人は、かなり少ない現状です。誰か他の人の責任だと思っています。しかし、残念ながらその「誰か他の人」はどこにもいません!

 新刊『「学校」をハックする』の内容と、ハックという言葉の詳しい説明については、http://projectbetterschool.blogspot.com/2020/11/blog-post_22.html を参照ください。

 ここでは、新刊と関連する「WW/RW便り」らしい内容を紹介します。

 それは、国語界のハッカーとしてのドナルド・グレイヴス氏の存在です。すでに彼のことについては、このブログで何回も紹介しています(このブログの左上に「グレイヴス」と入力して検索してみてください)。なんといっても、WWの父というか「創設者」ですから。

 彼は、1970年代に、当時アメリカに渦を巻いていた「書き方の教え方がいっこうに子どもたちを書き手にしていない」★という批判を乗り越えるための方法を考え始めました。彼が提案したのは、本物の作家や詩人やジャーナリストが使っているアプローチを取るというものでした。それは、作家のサイクルを回すこと(https://wwletter.blogspot.com/2012/01/blog-post_28.html)です。しかも、彼はこれまでの書く指導の中心的な存在だった教師による添削は、効果的でも効率的もないと見なし、それを生徒がまだ作品を書いている間に行うカンファランスに置き替えました。どんなにつたない文章でも、一度生徒が書き上げたと思って提出したものに、どれだけ教師の気持ちを込めて添削しても、それが生徒に届くことはほとんどないからです。しかし、まだ書いている途中なら、多くの生徒は聞く耳をもっています(より分かりやすい文章を書きたいと思っています)。同じ時間を費やすなら、はるかに効果的なほうに費やさないともったいないです。これが、大きなボタンの掛け違えの修正というか、ハックです。

本当の目的や読む対象を、書き手が自分で設定することも、大きなハックでした。日本の作文の多くはいまでも、教師が提示したテーマについて、締め切りまでに提出する形で行われているのではないでしょうか? また、読者はほとんど教師のみですから、誰も本気で書きたいと思えません。そこで、「何を誰に向けて書くかは、一人ひとりの書き手が決める」にしたのです。本物の作家や詩人やジャーナリストがしているように!(もちろん、彼らも依頼の作品や文章を書くことはありますが、そのときも目的と対象は明確です。)

こうした彼の書く指導のハックは、そのまま読む指導にも応用され、リーディング・ワークショップ(日本では、読書家の時間)が実践されるようになりました。(『「学校」をハックする』の中にも、学校のあちこちに図書コーナーを、というハックが含まれています。身近にいい本があれば、それだけ本に触れる機会が増え、読まれる確率(読むことに没頭する生徒)が増えるわけです。しかし、いかに立派な学校図書館を整備したところで、そこまでの歩数が多すぎると、わざわざ出かける人はすでに本好きな人に限定されてしまいます!

さらには、20年前くらいからは、書くことと読むことに限定されていたこのアプローチが、理科、算数・数学、そして社会科にも応用されるようになっています。科学者や数学者や市民・歴史家になることを通して学べばいいのですから! いま、それらの日本での実践を行っており、近々出版されますので、お楽しみに! 翻訳書は、『だれもが科学者になれる!』『教科書では学べない数学的思考』がすでに出ており、『Doing History(歴史をする)仮題』は来年2月か3月に出る予定です。

このように、グレイヴスの書く教え方にはじまったハックは、大きな広がりをもちつつあります。

現状に満足せず、より良い学びを生徒たちに提供するために、ハックし続けてください。『「学校」をハックする』は、その元気と具体的な方法をもらえる本です!


★ 日本でも同じころから同じ批判がずっとありますが、それを乗り越える方法はいっこうに出てきそうにありません。何が原因なのでしょうか? 一度やり始めたら、それをし続けるのがベストと多くの人が思っているからでしょうか(書く指導に関しては、作文であり、読む指導に関しては読解! WWRWと比較してしまうと、それらがまったく効果的ではなく、弊害すらあることが明らかになってしまうのに! それがまさに、ナンシー・アトウェルさんが作文と読解指導からWWRWに転換した理由であったことが『イン・ザ・ミドル』に詳しく書かれています)? ハック的な発想がないから? それとも、文科省などが教師は「これ(たとえば、教科書)をしていればいい」というものを出し過ぎるから(結果的に、教師と学校を思考停止に追い込み、自分たちこそが教育の担い手と思わせない!)?

 この不幸な現象は、もう50年以上続いています。日本人の極めてお粗末な読み・書き能力です。それを学校教育では得られないので、社会人を対象にした読み・書きの本が出続け、そして売れ続けますが、読む・書き能力の向上/改善はいっこうに見られません。本を読んだぐらいで、向上/改善するなら苦労はしません! WWRWの肝といえる「練習」と「適切なフィードバック(メンターや仲間から)」の存在なしには、ほとんど不可能だからです。この辺のテーマについては、来年早々に出版予定の『読む文化をハックする』と『学校図書館をハックする』でも触れられていますので、お楽しみに!

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