2020年8月7日金曜日

『本づくり(Engaging Literate Minds)』の第2弾

 1回目は、6月にhttp://wwletter.blogspot.com/2020/06/engaging-literate-minds.htmlアップしました。その2回目です。翻訳パートナーのマーク・クリスチャンソンさんの第2章の下訳(ごく一部)を紹介します。(左の数字は、原書のページ数です。~以降/茶色は、吉田のコメントです。)

12 (本づくりをすると)主体性、自己肯定感、自信、前向きさが強まります。集中力も!!

子どもが入学すると、初日でも、絵本を読み聞かせ、一人で、またはパートナーと一緒に本を探したり読んだりする活動に浸らせます。次に、本づくりの材料を与え、つくりたい人はつくってよい、とします。子どもがつくった本でも、大人がつくった本でも、読む時は作家やイラストレーターを紹介します。大人の作家を紹介する時も、その作家を等身大の興味深い人間として紹介します。

15 書けなくなった時の対処法も、親切に提示されています(掲示物の形で教室に貼られます)。

本をつくるということは、また作業を続けたいと思うことです。 ~ 継続した取り組みの大切さ!

16 子どもが自分で計画し、自分が選んだ題材の本をつくる時、実際に自分にとって個人的な意義のあることを達成しようとしているので、自分から考えて積極的に動きます。意志あるところに道あり。意志がないと、道は見えてきません。目的がないと、解決の方法は生まれません(逃げる方法を考える以外は)。本づくりの活動があると、子どもは自分の目的をもっているので、読む時も文字の森の中で意味のある木を見失いません。また、情報を人に伝えるための本を書くときも、物語を書く時も、下調べが必要になり、それによってまた読書量が増えます。

17 子どもは本を読んだ経験があるため、セーラ先生の幼稚園年長組のクラスのほとんどの子どもは初日から集中して作業をすることができます。そのような経験がまだない子どもを助けるために、セーラ先生は小さなライティング・グループをつくり、集中して作業できる子どもとまだできない子どもを混ぜ、経験がある子どもが経験が少ない子どもを教えることができるようにします。

 子どもが書く(本当に自分が書きたいことを書く)時、彼らは字の特徴に集中します。作家として自分の名前を書きたい意欲が特に大きな動機となり、文字の重要性に気づきます。 ~ これが与えられたテーマ等で書かされた時は、同じような意欲や興味はもてません。子どもたちの多くがしていることは、「先生へのお付き合い」だけです! 教師はそれを見て、子どもたちはよく取り組んでいると錯覚を起こしがちですが、子どもたちがしていることは「教師へのお付き合い」であることを忘れないでください。従って、「教えたのに、覚えてないの!」が起こる可能性は大であることも忘れないでください。

18~19 子どもが書いていることは大切である、と子どもに理解してほしいのです。ただ書くことを練習しているのではないのです。そのため、書く時間(作家活動の時間)が終わると、必ず共有の時間をもちます。みんなで集まり、子どもは自分が書いている本の一部を発表し、感想をもらい、行き詰まっているところのアイディアをもらい、試みている作家やイラストレーターの様々な技の使い方をお互いに讃えます。この共有の時間は作家活動の大きな原動力です。子どもは自分の努力に自然と誇りをもっています。セーラ先生がエリザベスに発表の機会を与えた時、セーラ先生はエリザベスの作家としての身分を強調しました。「色について、エリザベス作」と。そして作家のウッドたちをメンターとして使っているなど、他の作者とのつながりにもクラスの子どもが気づくようにしました。

21 年度末も近づいた4月に、セーラ先生の年長組のクラスのエリザベスは「宇宙」についての絵本を書き上げました。その作者についてのページには、以下のようなことが書かれていました。

「私は人にいろいろなことを教えるのが大好きです。世界中の子どもは学ぶことが好きです。学ぶことは楽しいです。私は歯の妖精などの魔法が使える人、火山、竜巻などについて書いたことがあります。すべてが楽しい内容になるように書くことを心がけています。」 ~ こんなことが書ける年長組の子ども(あるいは、小学1年生の子ども)は日本にいるでしょうか?

21~22 彼女の「作者について」の内容から見て、エリザベスが作者としての強いアイデンティティーをもっており、多様な題材を扱った多く作品のポートフォリオを持っていることが明確です。彼女は書くことを調べる活動を伴った楽しい、コミュニケーションのための社会的な活動だと見ています。また、原書をただ写していることもしていません。彼女は書くことを通して人の心を動かしたいと考えており、実際にできたと信じています。その感覚が、彼女に社会的主体性を持たせています。情報を伝える本のジャンルの特徴をよく理解しており、一つの題材に絞り、目次やページの見出しを入れ、作者についてのページも入れています。各ページの題を入れる事により自分の内容をどのように構成するかを判断しています。また、文の構造も多様であり、ジャンルに特化した技術を使っていることも注目に値します(例:〜を知っていましたか?)。

23 最初から子どもに本づくりをさせる大きな利点の一つは、子どもが早い段階から協力と自立の両方を実現することです。そうすると教師は子どもと個人面談を授業中にすることが可能となり、リテラシーの発展についての記録をつけることができます。この記録を使い、セーラ先生は傾向を探し、特定の学習目的をもった、短期的に活動する小グループをつくることができます。例えば、彼女がつくった一つのグループは「自分がどのような題材の本をつくるか決まっていて、自分がどのようなことを書く予定かを話し合えるグループ」でした。何人かの子どもはすでにそれをしていて、他の子どもと話し合うことを通してお互いに助け合い、教え合うことを学んでいました、まるで先生になるかのように。

24 気づきましたか? セーラ先生はどこから教え始めるべきかを判断するために子どもに多くのテストを受けさせることをする必要がありませんでした。本づくりは様々な能力の子どもが参加できる活動であり、入学してから数週間でセーラ先生は子どもの作品を分析して次の段階のクラス指導、小グループ指導、そして個別カンファランスで必要な情報を得ることができました。 ~ 子どものニーズに応じた適切な指導が殊の外大切なのですが、日本では一斉指導のウェートがあまりにも大き過ぎて、ほとんどその必要性が無視され続けています。この点に関しては、特に『「学びの責任」は誰にあるのか』が参考になります。

30 子どもが自立心、主体性、そして仲間に支えられていることを感じていると、それは学習意欲を育て、学力面での成功、クラスメイトや教師との良好な人間関係、そして希望へとつながります。・・・全員に同じものを読ませ、同じものを書かせた上でお互いに話を聞くことを強要してもこれらの利点を得ることはできません。

 本づくりは、全員同じことを同時に学ばせるカリキュラムに蔓延する問題を解決します。コミュニティーのニーズに合わせて日々カリキュラムの内容が進化するアプローチにおいては、子どもが学校を一日休んだり、一週間休んだりしても問題ではありません。 ~ まさに、http://wwletter.blogspot.com/2010/05/ww.htmlで紹介されていることが実現しています!

 この実践は、幼稚園の年長組から、博士課程の学生までできます(実際やっています!)! ということは、その間の小学校~大学で取り組まれることに価値があると思いませんか?

0 件のコメント:

コメントを投稿