2019年12月28日土曜日

ブックトーク雑感

 今日はブックトーク雑感です。ブックトークについて考えていたときに思ったこと、そして、先週の「WW/RW便り「『おせっかいな友人』から逃れて自分のなかに『賢い友人』を育てる」から、ブックトークを少し考えたいと思っています。

(1)3つのブックトーク
 ブックトークの導入方法を考えていたときに、「ブックトーク」のやり方をコンパクトにまとめたよいビデオがないかと、インターネットで検索していました。それは、ブックトークがなかなかうまく導入できなかったからです。
 結局、授業ではインターネット上でみつけたものも含めて、3つのブックトークを紹介しました。3つ紹介しようと思ったのは、ブックトークはいろいろなパターンがあったほうがよいと思ったからです。
 今回インターネットで見つけた、あるブックトークは、よく考えられていて、しかも40秒ぐらいにまとまっています。でも、ブックトークの形やコツを教えすぎると、別に紹介したくない本でも、その形に入れると、それなりに「いいブックトーク」に見えるような気がします。
 「いい形のブックトーク」におさめるよりも「この本、本当にいいよ」という思いの方が、伝わるものも大きいかも?とも思います。実際のところ、本を返却するときなどに、クラスメイトに伝える「これ面白かったよ」みたいな個人的な一言のほうが、ブックトークよりも機能しているのでは?と思うときもあります。
 とはいえ、ブックトークでの紹介も組み入れたいこと、そして、これまでの経験から、何も言わないと、本のあらすじだけを言って終わりになるブックトークが多いことも気になっていますので、ある程度の形やコツを示すこと、ブックトークにどういう要素(例えばテーマ、自分の評価等)を含めるのか、ということを伝えることも必要だと思っています。

 さて、今回、例として紹介した3つのブックトークは以下です。

 まず一つ目は『読書家の時間』133-134ページで紹介されている、『ビーバー族のしるし』という同じ本を3回紹介した男の子の話。以下134ページから少し抜粋すると、こんな感じです。
*****
 みんなにこの本を紹介するのは、これで3回目だけど…...(クラスのみんなは、「また同じ本を紹介するの?」とちょっと驚いた反応です。それでもどんな紹介があるのか楽しみにしている様子です)ぼくは、どうしてもこの本をみんなに読んでほしいのです。本当におすすめです!前にも紹介したように…...(と、簡単に本の内容を説明しました。)
 実は最近、この『ビーバー族のしるし』とつながりのある本をみつけました。
<中略>
 2冊の本は先住民が出てくる点ではつながるのに、全然、違った書き方をしているので、比べて読むと楽しさも倍増です。ぜひ両方を読み比べてみてください!
******
→ このブックトークは、「この本、大好き!、絶対おすすめ」という紹介者の思いが大切であることがよくわかるので、好きです。
 なお、『ビーバー族のしるし』は、私は以前から知っている本ですが、知らない本であれば、上を読んで、きっと図書館で借りてみた本だろうと思います。

 二つ目は『イン・ザ・ミドル』146ページにあるブックトークです。この本の著者で、ライティング/リーディング・ワークショップの優れた実践者でもある、アトウェルが 中学生たちに行ったブックトークです。ニール・ゲイマン著の『ネバーウエア』を紹介しています。
 アトウェルが生徒たちに行ったブックトークは1ページ(146ページ)におさまる長さで、これを読み上げてみると1分20秒ぐらい? それほど長いものではありません。
 しかし、この短い時間に、ニール・ゲイマンの他の本と『ネバーウエア』に対する自分の評価、ごく簡単な内容紹介、本の雰囲気?の紹介(サスペンスもあり、面白く、驚きもある、動きのある冒険物語)、他の本とのつながり、テーマ(他人への共感、忠実であること、信頼、善と悪)など、ブックトークに含めるのによい要素がそろっています。
→ よくできたブックトークですから、ブックトークにどういう要素が含められるか、という分析にも使えます。
→ なお、『ネバーウエア』は、ニール・ゲイマンの中では、アトウェルは高く評価している本ですが、私は結局、この本は、パラパラみながら速読した感じで、本の世界にしっかり浸ることはありませんでした。私向きの本ではなかったようです。

 3つ目のブックトークは、インターネット上で見つけた3分ぐらいのビデオ。ある人が、ブックトークに必要なものを、4文字の英語の頭文字(HEAT)で紹介し、そのあと、40秒ぐらいで、絵本を使ってブックトークの見本を見せてくれています。
 このビデオは英語なので、少し解説しながら紹介しました。HEATは、HがHook で最初の「つかみ」で聴衆を引き付けること。そのためにも、ブックトークをどうやってスタートするのかを考えようと言っています。EはEnergy で、これは話し方について。はっきした大き目の声を使うと、今度はささやき声になったときにも聴衆がしっかり聞いてくれる。Aは Audience で聴衆。聞いている人が、その本の内容と、個人的につながりを感じられるようにしよう、とのことです。そして T はtime、つまりブックトークの長さです。ここでは、30~60秒程度がいい、どんなに長くても2分を超えないように、と言っています。
 そして実際に、この3分ぐらいのビデオの最後では、40秒ぐらいで、ブックトークの見本を見せてくれています。この3分ぐらいのビデオは以下で見れます。
https://www.youtube.com/watch?v=kRkqjudkaME

 この人が、実際にやってくれたブックトークで、見事だと思ったのは、本の内容紹介が極めてコンパクトであることです。具体的なあらすじはほとんど語られていないのに、失敗をしたことがある人、何か失敗をしてきまり悪い思いをしたことがある人には、きっと何かを語り掛けてくれる本だ、と感じます。ある意味、詳細な内容よりも、「失敗から立ち上がる」というテーマを大きめに提示することで、ブックトークがより一般化し、聴衆の共感が得られる範囲が広くなる気もします。 
→ ちなみにこのブックトークで紹介された絵本は、After the Fall という題名で、以下の読み聞かせサイトで読めます。本自体も短くて読み聞かせは3分25秒です。

https://www.youtube.com/watch?v=dUKt1a6I3yw&list=PLBCzIj7I1kj7FllEJaO0yEKEimGw95AEG&index=11&t=3s

→ この本を読んでみたいと思ったのは、このブックトークの「つかみ」のおかげでした。
→ そして、このブックトークから興味を持ち、この本を上のサイトで読み、その後、自分用にも注文しました。なお、このAfter the Fall は、邦訳はでていないようです。

 著者はダン・サンタットで、この著者の本は、『ビークル ゆめのこどものおはなし』が、2017年に、谷川俊太郎さんの訳でほるぶ出版からでていることがわかりました。ということで、後者のビークルの本も「これから読みたい本」に加わりました。

(2)おせっかいな友人と賢い友人
 先週のRW/WW便り「『おせっかいな友人』から逃れて自分のなかに『賢い友人』を育てる」で紹介されていたので、森博嗣さんの『読書の価値』(NHK出版新書、2018年)を読みました。森さんの読書体験にびっくりしつつも、一気に読んでしまいました。(→ そして、森さんの本を読んだことのなかった私は、町の図書館で予約をしようと、著者検索をしてビックリ。すごい数の本が出てきました。どれを予約したらよいのか、ちょっと考えてしまいました。それでアマゾンのページから、レビューを読んだりしました。ミステリーっぽい本もけっこうあって、ミステリーはそれほど好きではない私はまだ決めかねています。)

 森さんが書かれている選書の大切さはには深く共感しますし、自立した読者になるために、「賢い友人」を自分のなかに育てていくことも必要だと思います。

 ブックトークは、ある意味「おせっかいな友人」なのかもしれません。

 森さんの『読書の価値』を読みつつ、「おせっかいな友人」ができること、できないこと、つまりブックトークができること、できないことを、考えておくのも必要かも?とも思いました。

 「おせっかいな友人」ができないことは、森さんが書かれているように、自分に本当に必要なもの」は自分しかわからない、という部分です。つまり、先週、引用されていた「どうすれば良いのか。その「賢い友人」を各自が自分の中で育てるしかない。今は残念ながら、外部装置として実現されていない。自分が何を読みたいのか、自分にはどんな未来があるのか、自分はどんな人間になりたいのか、といったことを一番正確に知っているのは、まちがいなく自分であり、その自分のために、本を選び、限られた人生の中で、できるだけ効率良くそれらを取り込んでいくしかない」(95~96ページ)という部分です。

 たとえば、病気になったことで同じ病気を闘病した人の記録を読むことで大きな力を得る、家族に問題のある人がいて、同様の問題を抱えた家族の記録を読んでみたくなる、将来、進みたい進路についてより詳しくしりたいので、その仕事をしている人の本を読む等々の例があるのかな?と思います。
 上記のような本が、ブックトークででてくることは、比較的少ないかもしれません。また、内容もあまりに個人的すぎて、信頼関係がなければ、とても紹介したいとは思えないかもしれません。
 また、こういうピンポイントで、それぞれの個々が必要としている本は、教室の図書コーナーには、あまりないかもしれません。

→ そう思うと、教室の外で、どうやって本を見つけていくのか、というミニ・レッスンも折にふれていれていくのもいいかもしれません。

 では「おせっかいな友人」は不必要か?と言われると、そうも思いません。私が最近図書館に予約を入れた本リストを見ても、そのほとんどが、友人からのメールや知人のブログで紹介されていた本です。
 そして、そのなかで、だんだん、ある特定の「おせっかいな友人」のお薦め本は、自分にとって「あたり」が多い等、自分なりの好みを確立し、取捨選択できるようになってきたと思います。「おせっかいな友人」から「自分にあった友人」をみつける過程でもあります。

 ブックトークはいろいろな切り口・目的でとらえることができると思いますが、私の場合、ここ数年は、「次に読みたい本」を見つけられることを優先的に考えています。
 そして、人に薦めてもらわなければ、読まない本もたくさんあります。森さんの本を読みつつ、現状から一歩進んで、「賢い友人」を自分なかに作り出す、そんなことも意識しながら、2020年も、選書をしっかりしていきたいです。そのプロセスから学習者に還元できることもあると思いますから。

0 件のコメント:

コメントを投稿