2015年5月22日金曜日

『理解するってどういうこと?』の2人の感想


◆小学校の先生・Aさん

「理解すること」について、ここまで明確に言葉にして追究した本は、
私は読んだことがなかった気がします。
学校で学ぶことは、「わかる」=「喜び」みたいなところがあります。
だから、わかりやすく教えてくれる先生は良い先生だし、わかって
すっきりすることがいいことだと多くの人が考えていると思います。

しかし、そうではない。考え続けてもがくことの価値が書かれており、
そのもがくことこそ価値があるのだとよくわかりました。
しかも、そのもがくことがとても魅力的なこと、人生をより豊かにすること
だということがよくわかりました。

また、子どもを信じること、待つこともとても大切なことなのだと
わかりました。この本の中にでてくる子ども同士の対話やマティスと
ピカソの関係、またネルーダの詩など、私がそこまで深めてこなかった、
また深めようと挑戦もしてきていなかった内容を読み、
まだまだチャレンジしていない領域がたくさんあるのだとよくわかりました。

日々の生活の中の様々なものや現象を深く見つめる目や、それを味わい、
対話する力などは人生を深く味わうことにつながっています。
私もそういう感性を育みたいとは思いつつも、具体的な方法が
わかりませんでした。
まずは教師がモデルを見せることなのですね。それをやっていなかったから
自分自身もわからなくて子どもにも伝えられませんでした。

この本を読んで、言葉を注意して使うこと、待つこと、もがくことの
価値を伝えることをまず意識するようにしています。特に8章にのっていた
ミニ・レッスンは衝撃的でした。(いかに自分ができていなかったか!)

子どもと、子ども同士と、もっともっと対話をし、理解を深めること、
探究することを味わいたいと思いました。

最後に載っている資料も深いです。かなり役に立ちます。


◆帝京平成大学の先生・白鳥信義さん

1章「理解について考え直す」のp.8に次のような文章があります。

「ジャミカの質問について書き始めたとき、理解することとは、知的能力が発達することと同義であるということに私は気づきました。一生懸命に小説のテーマや、科学的ないし数学的概念を理解することに取り組んでいるとき、私たちは知的な筋肉を形成しているのです。」

日々の授業の中で、たとえば、小学校4年生の理科では「地球と宇宙」の単元では、「月は絶えず動いていること」「空には、明るさや色の違う星があること」「星の集まりは、 1日のうちでも時刻によって、並び方は変わらないが、位置が変わること」などを子どもたちは理解するわけです。そのために、理科では観察や実験などを通して、科学的な概念を理解することが授業の目標となります。この観察、実験などもできる限り子どもたちに考えさせて、本物の科学者が追究するように、自分たちの問題として、取り組むことができるように教師は後押しをするようにしたいものです。

また、図1.1「理解することと知的発達」では、「理解が深まるとはどういうことなのか」ということがわかりやすく示されています。
次の①~③の3つのことが活動のサイクルとなり、次々と螺旋階段を上るように、上へ進んでいき、理解が深まっていくことがわかります。

①自分が興味・関心がもてるものを見出し、それを理解するために努力し、その過程で知的能力を養い、自分の考えや解釈をつくりだし、それらを他の学習者と共有していく
                    ↓
②考えることや学ぶことの満足感、好奇心、もっと知りたくなるという欲望等を体験し、自分の考えや解釈をさらに推し進め、それを他の人たちと共有し、知的な有能感、効力感を味わう                ↓

③自分の考えや解釈(概念)を保持し、新しい状況下でそれを応用し、新しい知識を自らつくり出し、それを他の人たちと共有し、その問題や概念の異なる側面や不明確な側面を理解したくなる             ↓
                また、①に進む

①の「自分が興味・関心がもてるものを見出し」は、カリキュラム作り・授業づくりにおいて最も考えなければならないことでしょう。そして、子どもたちが「自分の考えや解釈をつくりだし」ていくように、教師はじっくり考える時間を与えて、そのサポートにまわることが求められます。これがうまくいけば、②で「もっと知りたくなるという欲望」が子どもたちの学習意欲をさらに高めて、次の学びに向かう原動力となることでしょう。
このような学びのサイクルが出来上がることが、私たちがまず目標とすべきものだと思います。この本の中には、実にたくさんの「学びを促進するしかけ」がちりばめられています。
同時に、「理解する」ことが、これほどまでに知的な活動であり、素敵な営みであることを改めて確認することができるものと思います。

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