2014年7月25日金曜日

今学期、何度か読んだ絵本


 

 今学期、何度か読んだ絵本を紹介します。読むたびに、考えるに値する新たなポイントや問いが出てくる本は、飽きることなく、何度も読まされてしまう気がします。「いい質問を考える」のに適した絵本、と言えるのかもしれません。

 まずは、6月下旬のRWWW便り「映像作品と絵本の読み聞かせの反応の違い」でも紹介された、『モリス・レスモアとふしぎな空とぶ本』。書かれているテーマが、大きい気がするので、読むたびに小分けにして?理解している気がします。

 そして、ショーン・タンの『ロスト・シング』。私が感じたいくつかの質問をRWのクラスの子どもたちに聞いてみたいです。この本は、子ども向きには思えないので、なおさら、RWで読み方を学んでいる子どもたちなら、どう消化するのか、とても興味を感じます。

 なお、この映像版も、アカデミー賞短編アニメーション部門受賞作らしく、題名(The Lost Thing)と著者名(Shaun Tan)で検索するとすぐに見つかると思います。英語なので、国語の授業には使いにくいかもしれませんが。

 『てん』でおなじみのピーター・レイノルズの『ほしをめざして』と『ぼくはここにいる』もいいですね。

 『ほしをめざして』(の英語版)は、「気に入ってしまったので自分用を買いました」という学習者もいて、英語の読み手に育っていることを感じ、とても嬉しかったです。

 (なお、ピーター・レイノルズと言えば、『てん』、『っぽい』、『そらのいろって』は英語ではCreatrilogy Box Set として、3冊セットで買うこともできます。この3冊は、主人公がつながっています。ピーター・レイノルズが好きで、かつ英語でもよい方は、http://www.fablevision.com/place/library/というサイトで、さらに彼の作品が読めることを今学期、教えてもらいました。)

 ジョン・バーニンガムの『おじいちゃん』。マイケル・ローゼンの『悲しい本』もそうですが、絵本でも大切な人の喪失は大きなテーマだと、改めて思います。

 あとは邦訳が出ると、教室に使うのにお薦め!と思った本を2冊紹介します。

Avi Slodovnick The Tooth。英語版はhttp://www.storylineonline.netで、Annette Beningが読み聞せています。

Janell CannonTruppも名作だと思います。

『すべてのひとに石がひつよう』と『わたしのおいわいのとき』を書いたバード・ベイラーの他の本も、例えば The Other Way to Listenなども、子どもたちの読み取りを、聞いてみたいです。

 

2014年7月18日金曜日

濃厚な一体感がある授業/学校

 今回のテーマは、教師にとっても、子どもたちにとっても、決定的に重要な集団の中で自分の居場所があること。あるいは、自分ははみ出した存在ではなくて、濃厚な一体感を感じられることについて。

 これは、WWやRWの教室を運営する際にはとても大切にされています。クラスが読み・書きのコミュニティになっていることが求められますから。1学期間実践して、すでにそうなっていますか? (このことは、本来は、WWやRWを実践するしないにかかわらず、教室運営の基本中の基本だと思いますが・・・・)

 直接的には、Jennifer Allenが書いたA Sense of Belongingという本を読んでいた時に再確認したことです。以下、数字はページ数。青字斜体は私のコメントです。

7 frequent, intensive(meaningful and relevant), individualized instruction/supportがいい授業/研修には欠かせない。 子どもの学びにも、大人の学びにも欠かせない。そうすることで、教室/学校にプラス(正)のエネルギー(気)が充満する。そうじゃないと、マイナス(負)のエネルギー(気)が充満しちゃう。

8 学校には、skilled, thoughtful, reflective, energized, responsive educatorsが必要。
 ~ しかし現実は、教員の何割がこの基準に当てはまる??

第1章 関係

 大人同士の関係が、学校の雰囲気・文化を形成する。やることの質までも決定づける。

9 最初の2年間、誰とも関係が築けなかった。教師をやめようと思っていた時に、
10 「学校の中の学校」★を幼稚園から3年生の教師でつくる誘いを受けて、関係が築けるようになった。 ~ 単に会議に参加しているようなレベルではダメ。この関係性を築くために管理職はいったい何をしているのか?
 いろいろなことを本音で話し合える仲間の存在の大切さ。

11 まだ経験の少ない、知る人もいない者の立場に立って、接していく/サポートしていく。 それが、長年やっていると忘れてしまい。誰もこなせて当然というスタンスを取りがち。極めて不親切。実際に動かしている立場からは、何の助けにもならないようなことが多すぎる。

12 勉強会への招待★★: ①新しい情報が入手できる、②すでにもっている知識を確認できる、③仲間をつくれる、④疑問・質問に答えてもらえる などのメリット ~ 参加したメンバーの関係づくりこそが最大の宝!!

13 クラスの環境を作るための勉強会
 最初の数週間は、教師が子どもたちを知り、個別にアプローチする方法を考えるのと同じように、教師が相互に知り合い、それぞれにとってベストの関係/サポートの仕方を考える。みんな一律にやったところで、それぞれに得意・不得意や好き・嫌いがあるので、効果はあげない!!

15~16 各教師に対して、子どもたちにつけるカンファランスノートと同じような記録を残すといい。違いが明確になる。 それを、全員あたかも同じようにアプローチしていては、やっている方は責任逃れができるだけ。 ほとんど何のサポートにもならない。

  声をかけて、いつでも相談に乗れる状態・関係を築くことが大切。
  そういう存在がいない、あるいは極めて稀ないまの学校。ということは、教師同士でそういう状態が恒常化しているということは、教室の中でも、子どもたち同士の関係でそういう状態が当たり前になっているということ?? これは、学校の中だけでなく、会社の中や社会一般でも言えること?


★ この「学校の中の学校」というアプローチは、いい学校のつくり方について書いた『いい学校の選び方』の4~14ページや、『効果10倍の学びの技法 ~ シンプルな方法で学校が変わる』の239ページで紹介しているように、極めて効果的な方法です。いまの学校に最も欠落している、教師たちが主役意識を持てるアプローチだからです。逆に言えば、いまの教育行政はすべて、教師たちに主役意識を持たせない形で行われていると言えるかもしれません。それが、明治以来の日本の教育の一大特色であるがごとく。

★★ 意味のある学びをつくり出すには、規模が大切なんだと思います。特に、継続性を重視する時は。せいぜい5~6人。最大でも、7~8人ではないでしょうか? 日本で行われている校内研修・研究(やセンター研修)というのは、それをはるかに超えた規模で行われているので、学んでいると思える人が極めて少ないままが続いているのではないでしょうか? しかも、イベント的に1回、2回・・・数回やるのではなく、継続的に(最低でも年間を通して、願わくは2~3年)どれだけ取り組み続けられるかがカギです!! それも、ほとんど日々。(その意味では、従来の「研修」の枠をはみ出さないと実践は変わらないでしょう! 要するに、イコール仕事そのものにならないと。)

★★★ 一体感という観点から最も弱いのは、文科省や教育委員会、そして大学だと思います。いいモデルを示さないといけない立場にありながら、自分たちの役割がわかっていないのです。

2014年7月17日木曜日

12歳の文学賞

あさのさんの「小説を書く心構え・6か条」は、アドバイスになっているでしょうか? (その前に、自分で書いてみる必要がある??)
http://www.yomiuri.co.jp/kodomo/fromeditor/notice/20140716-OYT8T50096.html?cx_thumbnail=04&from=ytop_os_tmb

夏休みの間は、作品に仕上げることよりも、たくさんの題材候補の「下書き」を書くのでいいのではないでしょうか?
そして、学校が再開したら、先生や友達とのカンファランスで修正し、徐々に作品に仕上げていくので。

また、全員が小説に挑戦しなくてもいいと思います。好みの問題というか、得意不得意がありますから。
でも、こういうチャンスがあるという情報は提供してもいいのではないかと思います。
http://family.shogakukan.co.jp/special/12saibungaku/

他に、小学生、中学生、高校生が自分の可能性に挑戦できるようなチャンス、ご存知でしたらぜひ教えてください。

2014年7月11日金曜日

1年生、4年生、6年生の教室での人気本

 今日のRWWW便りでは、1年生、4年生、6年生の3つの教室から、それぞれの教室での人気本を紹介します。

★   1年生を教えている広木さんは、一人読みができる子が増えてきたこと、お気に入りを再読する子どもの姿も見かけられるようになったことから、子どもたちに「お気に入りを思い出して、10冊書いてね」と言ったところ、字や文を書くことが難しい子が多いのに、ちゃんと題名を10冊(あるいは10冊近く)書けた子が多かったそうです。そこによく登場したのが、以下の本です。

だめよ、デイビット
笑ってしまうシーンも、さいごによかった、っとホッとするシーンも子ども達は大好きです。字ではなく、「絵」を感じて読んでいるようです。

クレリア
可愛くて優しいクレリア。最後はどうなったのか気になって、たまらず教室の中を探し始めたりする子や、「きのう帰りにみつけたアオムシ、クレリアかもしれない」、などと言う子も。お話の続きを考えるにも楽しい本です。

ウルトラマンユウキ
番長シリーズのよしながこうたくさんの絵本。特に男の子には人気で、隣のクラスにまではやってしまいました。

すごいサーカス
お話の面白さに、読んでいる私も読みながら笑ってしまいます。もちろん子ども達はドカーンと爆笑。何度も読みなおしている子が多いです。

もったいないばあさん
「給食のこすなんてもったいない」「まだ使えるところがある紙をすてるなんてもったいない」「時間があまってるのに、もうできちゃった、なんてもったいない」などと私もよく生活の中で使っています。もったいないばあさんの絵描き歌も人気です。


★ 4年生を教える富田さんも、最近、よくみんなが読んでいる本を知らせてくれました。


「果てしない物語」ミヒャエル・エンデ (著), 上田 真而子 (翻訳), 佐藤 真理子 (翻訳)
映画が先か、本が先かという話をして、この物語にたどり着きました。自分が小学生ぐらいだった時に、「ネバーエンディングストーリー」という映画を見てい たという記憶がありますが、今更ながら小説版に自分自身がのめり込んでいます。その話を子どもにすると、数人の子どもが図書館から借りてきました。この本 の場合、軍配は完全に本です。大人の自分も目が離せません。子どももどんどんのめり込んでいっています。

「プレゼント」おとたけ ひろただ (著), さわだ としき (イラスト)
ぐっと来た筆者の主張というプロジェクトを行って、乙武さんの『五体不満足』をあげる子が何人かいました。その子たちが、同じ作者の本として紹介していた のが、この本です。本が苦手な子でも読めるので、僕も推薦しました。みんなが幸せに過ごせる教室を目指していきたいと言葉を添えました。

「しずくのぼうけん」マリア・テルリコフスカ (著), ボフダン・ブテンコ (イラスト), うちだ りさこ (翻訳)
社会科で、ある子がこの本の展開を利用して、水道の水がどのように蛇口から旅をするのかをプレゼンしました。クラスの子どもたちはそれに影響を受け、クラス 全体でしずくのぼうけんの横浜の水バージョンを演劇にしようという取り組みになりました。もちろん、私はクラスでこの本を読み聞かせ。絵本のアイデアが社 会科の学習をとても豊かにしてくれました。


★ 6年生を教える都丸さんの教室で人気の本は以下です。以下を見ていると、友達同士の本の紹介がもつパワーを改めて感じます。

『動物と話せる少女リリアーネ』タニヤ・シュテーブナー著 中村智子訳 学研教育出版
 動物と話せるだけでなく、花を咲かせたり成長させたりもできる不思議な力をもつ女の子の話。 動物好きな子が「おもしろい!」と言って紹介すると、女の子の間で読む子が増えました。関連する本として『ドリトル先生』のシリーズも紹介しました。


 『ぼくらの七日間戦争』宗田理 著 ポプラ社
 校則で抑圧する教師や勉強を押しつける親に対して反旗を翻す中学生たちの話。
 20年以上前、自分が中学1年生の頃にドキドキワクワクしながら読んだ本です。
 クラスの男の子たちの間で大人気です。「ぼくらシリーズ」の一冊目です。


 『ぼくらのサイテーの夏』笹生 陽子 講談社青い鳥文庫
 学校で危険な遊びをしたことから、夏休みのプール掃除の罰則を受けることになった桃井。
 一緒に掃除をすることになったパートナーは嫌なヤツ栗田。 嫌な相手と4週間のプール掃除をするという桃井のサイテーの夏が始まります。クラスの女の子が「とてもいい作品」と紹介して以来、じわじわ読まれています。

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 子どもが好きな本を読みつつ、大人もその本の魅力を再発見したりもします。RWに取り組むと、いい本は、読むたびに違う発見があることも感じられます。もちろん、新しい本との楽しい出合いも。

 

2014年7月4日金曜日

読み手を前面に、そして真ん中に


  カンファランスに焦点を当てたReaders Front and Centers(読み手=子どもたちを前面に、そして真ん中に), by Dorothy Barnhouseを読んでいて、次のような一節がありました。数字は、ページ数。青字/斜字は筆者のコメント。

3 上から下におろすアプローチで、正論を提供しても行動は変わらない。どんな簡単なことでも。たとえば、インドやバングラデシュにおける分娩前に手を洗うといったこと。それによって、乳児死亡率はいっこうに下がらなかった。なぜそれが変換したのか? 講師役が、当事者が仕事をしている所に行き、お茶を飲みながら、何をしているのか/何はしていないのかを聞くことから始めたから。具体的な理由を尋ねたところ、返ってきた答えは「彼女が優しかったから」「いっぱい笑ったから」「友だちと話しているようだったから」というものだった。 ~ ソーシャルな部分、関係、感情の部分がとてつもなく大きい。大きすぎると言えるぐらいに。しかし、それが人間。
4 対象を知らなければ、教えられない。そして対象に耳を傾けなければ、知ることはできない。「教えることは聞くこと」というのは、決して新しいものではないが、常にないがしろにされている。

これを読んで思い出したのは、『読書家の時間』で紹介されている「大造じいさんとガン」を教える授業の木下くんと沢木さん(5年生)へのカンファランスでした。
 一般的な一斉授業だと、この教材についていけない木下くんは、最後までボ~としたままが続き、読むのが好きな沢木さんにとっては、この教材だけだと物足りなさを感じてしまいます。両者にとって、退屈な授業になってしまうわけです。(一つの教材を前面に、そして真ん中においた授業だと、少なく見積もっても6~7割の子達にとって退屈な授業になっているのではないでしょうか?)
 それに対して、教材ではなく、あくまでも一人ひとりの子どもを前面に、そして真ん中に据えたカンファランスの実例が88~96ページにかけて丁寧に紹介されています。
 木下くんは、「大造じいさんとガン」の代わりに、教師が『ミイラになったブタ』の中の「双子の島」という題材を提示したことで、イキイキと読み始め、『完訳ファーブル昆虫記』に発展する可能性すらありました。
 「大造じいさんとガン」だけでは物足りない沢木さんは、椋鳩十の他の作品も読む、作家研究に取り掛かりました。
 (いずれも、「大造じいさんとガン」を教材に選んで扱っているねらい=登場人物の関係性からは逸れないように配慮しながら、教師は子どもたちをサポートしていました。)
 このように、子どもたちが打ち込んで学べる/読めるようにするのが教師の役割です。インドやバングラデシュの乳児死亡率を下げるために、村々を歩いて人々の話を聞いて回ったワーカーたちのように。そしてそれを可能にするのが、まずは聞くこと/観察することからスタートするカンファランスです。

   資料: Readers Front & Center: helping All Students Engage with Complex Texts,  by Dorothy Barnhouse,  from Stenhouse
       『読書家の時間』プロジェクト・ワークショップ編著、新評論