「読書家の時間」の実践を経て、本という成果物に到る過程で表には出ない秘話を紹介します。
絵本『綱渡りの男』(モーディカイ・ガーシュティン作、川本三郎訳、小峰書房)という本をご存知ですか?
いまはなき★ニューヨークのマンハッタンにそびえたっていた世界貿易センターの2棟のビル(高さは約400メートル。間は約40メートル)の屋上に鋼鉄の綱を結びつけ、綱渡りをしてしまったフィリップ・プティについて書いた絵本です。
フィリップはまったく躊躇しませんでしたが、『読書家の時間』の執筆者の中には躊躇した人もいました。ビルから綱に足を踏み出すべきかどうか。それは、いまも主流の読解教育のアプローチとはあまりにも違いますから(第10章を参照)。一方で、フィリップと同じように何の躊躇もなく、踏み出した人もいました(第9章を参照)。
両方のタイプの教師がいましたが、大切なことは、綱渡りはシンドイけれども、楽しんだ、ということです。マスターカードの宣伝ではありませんが、「プライスレス(価格はつけられない)」体験だったと言った人もいます。要するに、読書家の時間の実践は、これまでの教員生活の中で、もっとも価値ある体験だったというわけです。こういう実践=学び=研修ができれば、授業も学校も見違えるほどよくなっていくことでしょう。
綱渡りは、実際にそれをしているところを見てもらえば、それですみますが、読書家の時間はそういうわけにはいきません。(いまは、Youtubeなどの映像媒体の可能性もあるのかもしれませんが、一方でプライバシーもうるさくなっているので、そう簡単にはいきません!) 従って、書くしかありません。
一人で書くのは大変ですが、仲間がいることで、書き上げられた部分がとてつもなく大きいです。一人ではなえそうになってしまうのを、他のメンバーの励ましやフィードバックで前に進むことができました。
そして、このプロジェクトでは、チーム・メンバーの共同執筆という形態をとりましたが、伝統的な分担執筆という形はとりません。前者は、それぞれの原稿をメンバー全員が異論が出ないまで読み込みます(つまり、相互にフィードバックしあう、ということ)。それに対して後者は、学校の先生たちがまとめた研究紀要や報告書の類であろうと、大学の先生たちが書いた本であろうと、分担執筆の形態をとったもので読める内容のものは極めて稀であることを知っているからです。分担執筆は、基本的に実績を残す/作ることが目的で、読ませる部分は二の次、三の次です。また、分担執筆の多くは、執筆者同士の学び合いもありません。互いが、領分を侵さないという暗黙了解が成り立っている形式ですから。プロセスで学ぶことを目的にしている私たちが、そういう選択をとることはできません。(メンバーの中には、2人ほど英文のリーディング・ワークショップとライティング・ワークショップをはじめ、教育分野の本に広く精通している者も含まれており、最近10年以上の傾向として、共同執筆の形態で書かれた本の方が個人執筆で書かれたものよりも、読み応えがはるかにあることを知っていたこともあります。) 綱渡りも、一人でするよりも、みんなで一緒にした方がはるかに楽しい、ということになりましょうか?
以下の目次の変遷を見ると、メンバー間のやり取りを通じて、ドンドン変化したことがわかります。
●2010年9月4日時点の目次案: ~ まだ項目を出しただけ!
*はじめに
◎RW(リーディング・ワークショップ)とは? 読書のサイクル(枠組み)
保護者との連携
カンファランス
子どもの変容
教師の変容
ミニ・レッスン
本のリスト
本の確保の仕方
年間計画
+新学期のスタートの仕方(選書など)
掲示物・写真
読書ノート、メモ等
評価
共有
ソフトのクラスづくり
ミニ・レッスン→カンファランス→共有 の子ども
読みのバリエーション(ガイド読み、ペア読書、ブッククラブ・ブックプロジェクトなど)
Q&A
●2011年1月8日時点の目次案: ~ 執筆の主担当の確認。大分、本の骨格が!
はじめに
RWとは?
教師の変容
子どもの変容
ミニ・レッスン
カンファランス ~ ひたすら読む
共有
ソフトとハードのクラスづくり
年間計画
評価
本のリスト
◆読みのバリエーションは、
ガイド読み →カンファランスに移動
ペア読書 →共有に移動
ブッククラブ → 共有に移動
●2012年7月1日時点の目次案: ~ さらに、本の形に近づく!!
もくじ
まえがき
パート1 RWで子どもも教師もこう変わる
第1章 RWとは?
第2章
子どもも、教師もこんなに変わりました → 第2章 子どもの変容
第3章 教師の変容
パート2 RWの主な要素
第1章 こうすればできる「リーディングワークショップ」
第2章
ミニ・レッスン
第3章
カンファランス
第4章
共有の時間
第5章
ガイド読み
第6章
ペア読書・ブッククラブ ⇒ 本仲間 → 読み仲間
パート3 こうすればできるRW
第1章 読書環境を作ってみましょう (ハード面とソフト面)
第2章 年間計画を作ってみましょう
第3章 RWにおける評価とは
資料
A おすすめ本のリスト
B Q&A(よくある質問、よく起こる問題とその解決)
C ワークシート
●最終目次
http://wwletter.blogspot.jp/2014/04/blog-post_16.html
★今はない理由は、2001年9月11日のテロにより、2機の飛行機がそれぞれのビルに突っ込んで、倒れてしまい、多くの人の命を奪いました。あんな悲惨なことは映画やテレビの世界でしか起こるはずがないと思っていたことが、実際に起こってしまったのです。そして、悲劇はそれで終わらずに、アメリカ(というか当時の大統領のブッシュ氏)は往復措置として、イラクとアフガニスタンで長期にわたる「テロとの戦争」を起こし、9.11の死者をはるかに上回る人の命を奪いました。(現在も進行中!)
なお、フィリップのすごいところは、「あの建物の頂上で綱渡りができたらいいだろうなー」と思って、それを早速実行に移してしまったことです。すばらしい遊び心!! ぜひ、見習いたいものです。彼が、そんなことができた理由については、詳しく絵本で紹介されています。
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