新年度、担当学年が決まったら、20分〜30分ほどで「読書家の時間」の年間計画を作ります。
従来通りの国語の授業を考えると、年度が始まったときにはすでに各教科の年間計画はできあがっています。多くの場合、教科書の単元配列通りの計画になっているのではないでしょうか。4月時点での教師の考えの中心は、「1年間をかけてどんな読み手を育てるか」というよりは、「最初の単元の授業をどうするか」ということにあるような気がします。このままでは、単元をどうこなすかが最優先事項になってしまい、子どもたちが夢中で本を読んだり、文章を書いたりするために「何を」「どう教えるか」ということは後回しになりがちです。
年間計画を立てる際に大切にしたいのは、学び手である子どもたちが読んだり書いたりすることを楽しみ、夢中で取り組めるような授業を考えることです。私は年度当初の段階では、教師にとっても、子どもたちにとっても「こなさなければならない」授業ではなく、「学ぶこと・教えることが楽しい」授業―理想の授業を行うための、「理想の計画」を立てることに重点を置きたいと思います。
したがって、教科書の単元配列や、担当学年が決定したときにはすでに完成している年間計画は後で確認することにして、「1年後に子どもたちにどんな読み手になってほしいのか」「自分は子どもたちに何を学んでほしいか」を明確にしていきます。自分が思いつくままに書き出したことをもとに、年間のユニット★の配列を考えます。
ここでのポイントは最初から欲ばり過ぎずに「ざっくり作る」ことです。
大まかな見通しさえもつことができれば、後からいくらでも修正可能なので、
どんなに時間をかけても1時間以内で終わるようにします。細かい部分は、月単位、週単位で見直していくというように気楽に考えるようにします。
★ ユニットは、単元と似ており、「括り」を意味しています。単元がどちらかというと一つの教材を中心に考えられることが多いのに対して、ユニットは目的、読み方の方法、ジャンル、作家、あるいはRWを成功させるために必要なことなどで括られます。
4月
最初の時間の読み書かせ
自分に合う本を選ぶ
学校でも家でも根気よくたくさん読む
5月
フィクションを読む
友達と読む ペア読書
読んで考えたことを友達と話し合う
6月
詩を読む
ミニ・ブッククラブ(詩や絵本、短編でのブッククラブ)
7月
ブッククラブ(全員で同じ本を読む)
ブックプロジェクトの計画を立てる
8月
ブックプロジェクト(自分のテーマを決めて読む)
9月
ノンフィクションを読む
10月
本を紹介する。
自分が好きなジャンルを選び、お薦めの本を紹介する。
11月
読んだことを生活に生かす
12月
ブッククラブ(ノンフィクション)
冬休みの読書計画を立てる
1月
これまで学んだ読み方を生かして、よりよい読み手になる
2月
ブッククラブ(フィクション)
3月
読書生活のまとめ 自分の成長を振り返る
ここまでで大体20分。ユニットが概ね決まったら、「評価方法」とミニ・レッスンを考え、表に書き込んでいきます。1時間以内というルールを決めているので、できるところまで年間計画の表に書き込むようにします。1学期分のユニットとミニ・レッスンの計画ができると、授業をスムーズに進めることができます。残りの計画は、授業を進めながら付け足していくようにします。
ミニ・レッスンで使う絵本や、ブッククラブで読む本の選書候補を計画に付け足しておくとよいでしょう。このときに、教科書を手元に置き、「教科書を使ったミニ・レッスン」も考えるようにします。多くの学校で、教科書を使わずに国語の授業を行うという選択肢は考えにくいと思われます。「教科書をこなす」ではなく、「教科書を利用する」という考えをもつことができれば、「理想の年間計画」の中での教科書を使ったミニ・レッスンの可能性は大いにに広がると思います。
○教科書(国語 六 創造 光村図書)を使ったミニ・レッスンの例(6年生):
・「カレーライス」という作品で「質問を考えながら読む」のミニ・レッスン
・「カレーライス」で「自分とのつながりを考えながら読む」のミニ・レッスン
・本物の本でのブッククラブを行う前に、教科書に掲載されている詩や短い物語などでミニ・ブッククラブを行い、話し合いの方法を学ぶ。
○同じく教科書のユニットの例:
・重松清の作品を中心に、同年齢の子たちが主人公の本を読む
・星野道夫の本を中心に、ノンフィクション作品を読む
・宮沢賢治の作品を中心に、童話やファンタジーを読む
今月末に発売される『読書家の時間』(新評論)の第9章には、年間計画の作り方が、詳しく紹介されています。ぜひご覧ください。
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