2011年11月12日土曜日

執筆者への問いかけ

私たちは、教科書にしても、本にしても、雑誌にしても、与えられたテキストを鵜呑みにする傾向があります。
 「書いてあることに間違いがあるはずはない」「正しいことが書いてあるはずだ」という思い込みです。果たして本当にそうでしょうか?

 今回紹介する「執筆者への問いかけ」は、テキストには欠陥もあるという前提に立って、意味を作り出す/理解するための手段として活用します。
 その際、一人だけでするのではなく、クラスメイトと個々人が考えたことについて話し合いができれば、意味/理解はより一層深まり・広がります。

 執筆者(作家)に問いかける/フィードバックするためには、批判的に読むことが求められます。
 具体的には、
・ 内容と書き方を分析する
・ 気に入ったところとそうでないところをはっきりさせる
・ わからない(わかりにくい)ところは質問する
+ 改善のための提案をする
などを意識ながら読みます。

 これは、読むことと書くことを、切り離せない形で扱う方法でもあります。

 子どもたちにとっても、教師にとっても一番身近な本である教科書を例にとって進め方を紹介します。

1) 教科書の一部を分析的・批判的に読む
 理解は、「書き手と読み手の協同作業」であることを説明した上で、「理解できないのは、読み手だけの責任ではなく、書き手側に落ち度がある可能性もあること」を伝えたうえで、テキストを評価する/修正する人の目で読みます。
その際、プラス面とマイナス面の両方をしっかり把握しながら読むことが大切です。書き手のスタイル(書き方)が、理解を促進させたり、妨げたりしていることだってあるからです。
 以下のような質問を考えながら読むといいでしょう。
① 書き手が伝えようとしていることは何か?
② 書き手はなぜそれ(ら)を伝えようとしているのか?
③ 書き手はそれ(ら)をはっきりわかる形で書いてくれているか?
④ もっと理解しやすい方法で書くにはどんな方法が考えられるか?
⑤ あなたが書き手だったら、どんなふうに書いたか?

2) 実際に、①~⑤の質問に対する考えと、気に入った点や疑問点なども踏まえながら、「執筆者への問いかけ」=手紙を書きます。
 ここまでするだけでも、十分に価値がありますが、実際のアクションとして、その手紙を執筆者に送れたら、言うことありません。
 しかし、似たような手紙が20通~30通も届いたら、受け取る側も大変です。個別に回答してもらうことは期待できませんから。
そこで、(1)もっとも説得力のあるものをいくつか選ぶか、(2)何人かが集まってチームとしての問いかけ=手紙にする形★で、参考/修正に活用してもらうために教科書会社や執筆者に送ってみるのです。子どもたちをガッカリさせないために、送ることを事前に伝えて、受け取ってもらえることを確認してからのほうがいいと思います。

 教科書や作家の文章を批判的に読み、修正をすることは、自分の文章を批判的に読み、そして修正するのに役立ちます。
 読みにくい/わかりにくい教科書も、子どもたちの手で少しは読みやすい/わかりやすいものにすることができるかもしれません。

 教師の役割は、それを可能にするためにいい問いかけをしたり、子どもたちが質の高いやりとりをできるようにサポートすることです。もう一つは、子どもたちと「やらせる」「やらされる」の関係ではなく、モデルで示し、自分たちもやってみたい関係を築きたいものです。★★


参考資料: Questioning the Author, by Isabel L. Beck他著、International Reading Association発行、1997年


★ 小学校段階から、このような形で選択したり、協同で執筆する練習をしておけば、大人になってから大分楽です。9月30日に研究紀要や研究発表会の要綱について書いたところを参照


★★ 私事ですが、この「執筆者への問いかけ」という方法を頻繁に実行しています。主には、いい点を指摘するのと、疑問点を問いかける形で。(残念ながら、それに値する本に対してですから、95%は英語の本です。そのうちの何冊かは、翻訳するということまでやってしまいました。その際、執筆者への質問攻めは半端ではありません。質疑応答だけで新たな本が書けるぐらいになってしまったこともありました。)

1 件のコメント:

  1. 「執筆者への問いかけ」がちょっと難しいと思われる方は、「次年度に同じ教科書を使う子たちへのアドバイス」という形でアプローチしてみるといいかもしれません。

    対象(読者)を設定することは、とても大事です。それのあるなしは、「本当のこと」をしているか、教師から言い渡された単なる「課題」をしているかの違いですから。

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