2024年3月1日金曜日

「メタ認知」って何?

 これまでいい授業と捉えられてきたのは、教師が事前に教材(ほとんどの場合は、教科書教材)研究をしっかり行い、それを踏まえて考えた指導案(あるいは、指導書)通りに授業を展開することです。

 読み(例えば、物語・短編や説明文)の指導の場合、最初に、特定の教材を扱う目的(ねらい)が提示されます。次に、タイトルや作者の肩書や背景等からどんな内容(あるいは、テーマ)が書かれているのか予想します。実際に読んだ後には、何が書かれているか要約することを求めます。この事例のなかだけでも、目的を明確にする、予想する、要約する、の読む際に大切な方法が三つ扱われています。

しかし、この授業でそれらの方法は教師が生徒に投げかけて、教師の指導の下に生徒たちは従って考えているだけで、自分たちが主体的に考えてはいません。この種の授業では、メタ認知を使っていませんし、生徒が主役となって学ぶ(自分の責任で何をどう考え、そして選択する)機会も提供していません。すべては教師によって、事前にベストのシナリオが描かれており、生徒たちはそれにお付き合いするだけです。

 このような教師主導の授業ばかりをしていると、メタ認知=自分が主役となって学ぶ(自分の責任で何をどう考え、そして選択する)力は身につきません。いくら教師が努力しても、下の表の右側の状態に生徒たちをとどめてしまいます。しかし、求められるのは左側です。

 左側を実現する効果的な方法の一つ★★が、リーディング・ワークショップ(読書家の時間)です。

 すでに、上の事例で紹介したように、読む際に使う方法は表4(出典は、『読書がさらに楽しくなるブッククラブ』の81ページ)にあるような方法★★★です。違いは、これらを教師主導で扱い(生徒は、言われたとおりに使い)続けるのか、それとも生徒がそれらを自ら選択して使いこなせるように学ぶのか、です。

 ちなみに、表4では、三つのレベルで分けて整理してありますが、実際に読む時は、読む前・読んでいる間・読んだ後に使う方法としても分類可能です。そのほうが、生徒たちにとっては自然に受け入れられると思います(というよりも、実際に使っている生徒たちが、それを指摘してくれるはずです)。なお、方法は読む前・読んでいる間・読んだ後の複数に分類されるものもあるのでご注意ください。

 読むことの事例で紹介してきましたが、同じことは書くことでも、話す・聞くでも言えますので、「教材を教師主導でこなす授業」から「生徒が選択しながら学ぶ授業」への転換を図る参考にしてください。★★★★

 

I Think, Therefore I Learn!以外に、メタ認知に関しては、『「考える力」はこうしてつける』『言葉を選ぶ、授業が変わる!』『「学びの責任」は誰にあるのか』がおすすめです。選択のない(選択を提供しない)なかで、メタ認知というのは難しい気がします。逆に言えば、強制(ないし従順・服従・忖度)とメタ認知は相性が悪く、ほとんど思考停止をもたらすだけかもしれません。★★★★★

★★他の効果的な方法は、『ようこそ、一人ひとりを大切にする教室へ』『一斉授業をハックする』『教科書をハックする』『教育のプロがすすめる選択する学び』などで紹介されていますので、ぜひ参考にしてください。また、『「考える力」はこうしてつける』は、メタ認知と振り返りの関係を分かりやすく説明したうえで、メタ認知を取り入れた授業づくりを紹介していますので、ぜひご一読を!

★★★これらについて詳しくは、『「読む力」はこうしてつける』と『理解するってどういうこと?』を参照してください。これらが欧米でも知られるようになったのは、1990年代の半ば以降です。どのようにしてこのようなリストになったのかというと、ある研究者たちが、自称「優れた読書家」数百人に、読んでいる時に使っている方法を出してもらい、それを整理しただけなのです。その意味では、教室のなかでも同じことができてしまいます!

★★★★最後まで書いてきて、一方で読む(書く、話したり・聞いたりする)際に使う効果的な方法が身につく形でどれだけ授業は行われているのだろうかという疑問とは別に、扱う内容と同じか、それ以上に大切なhttps://bit.ly/3XZmfbhSELhttps://wwletter.blogspot.com/2023/02/sel.html)は身につけなくてもいいのだろうかとも考えてしまいました。いったい、これらはいつどこで身につけるのでしょうか? 誰もがスマホを持っているいま、教科指導で押さえることが求められているもののほとんどは、教科書で扱うこと自体に疑問が噴出しているなかで。

★★★★★今回の書き込みをブログに貼り付ける前に最終的な読み返しをしている時に、ここの文章を読んでいて思い出したのが『教育のプロがすすめる選択する学び』でした。まさに、選択を提供する授業とメタ認知は相性がいいのです! 本のタイトルにあるように、この本はいかに選択を生徒に提供するかが書かれた本です。目次を見ると、第4章のタイトルが今はやりの「生徒に学び方を教える」です(「学び方を学ぶ/身につける」=メタ認知と言えるでしょう!)。

 この章のなかから、最も大切だと思った部分を以下に貼り付けます。(少し長くなりますが、大事なことが書かれているので訳注も含めて紹介します。)

メタ認知のスキルを身につける

 「魚を与えれば一日生かすことができるが、魚の捕り方を教えれば一生生きることができる」という諺を聞いたことがあると思います。メタ認知スキルを教えるということは、魚の捕り方を教えることの教育版と言えます。それには、生涯を通じた学習者になるために必要となる、自己認識、振り返り、正直な自己評価のスキルを身につけることが含まれています。★注・この三つをテーマにしているよい本があります。『増補版「考える力」はこうしてつける』です。多様な方法が紹介されていますので、ぜひ参考にしてください。また、ブログ「PLC便り」の二〇一八年一二月二三日号でも「メタ認知」を特集していますし、左上の検索欄に「メタ認知」を書き込むことでほかのたくさんの記事も読めます。

今日の学校では、慌ただしいペースで次から次へと活動が移り、自らの学びを振り返ることもなく★注・ここ4~5年ぐらいは、授業の最後に行う「振り返り」がブームになっています。しかし、残念ながら生徒が自分の学び方を学ぶようには組まれていません。単に形式として、振り返りのシートが渡されて、それを埋めるだけになっています。生徒には選択が提供されていませんから、ほとんどの場合、無駄な時間になっています。振り返りを活かすヒントは、『SELを成功に導くための五つの要素』の第3章「自己を見つめる」を参考にしてください。★、いま行っていることだけに注意を向けさせて生徒をこのうえなく忙しくさせています。しかし、教師が選択肢を提供さえすれば、学びのパワーとコントロール(学びの責任)が生徒と共有されることになるので、生徒のメタ認知スキルはいっそう重要性を増すことになります。逆に言えば、生徒はメタ認知のスキルを身につける機会を必要としているということです。あるいは、前出(23ページ)のジュディー・ウィリスが言うように、「(まだ)自覚していないものを自覚する」ことが求められているのです。

 ほかのすべてのスキルと同じように、メタ認知も教えられ、練習でき、そして身につけられるのです。あなたは、生徒たちが学習者としての自分を知り、役立つ学習方法を把握し、そして自らの学習を改善するために、自己認識を活用することで行動ができるように助けることができるのです。

もちろん、選択肢を与えることは、メタ認知のスキルを高めるためのよい手段になります(とくに、第6~8章で紹介している「選ぶ-やってみる-振り返る」という枠組みを使った場合)。「選ぶ」と「振り返る」の二つの段階が、生徒たちにとってはメタ認知を練習するために最適なものだからです。じつは、これらの段階から最大限の効果を得るために、あなたが生徒たちにメタ認知スキルを教えて、サポートする方法はほかにもあります。(同、125~6ページ)

 なお、最後の「メタ認知スキルを教えて、サポートする方法」としては、実演する(「考え聞かせ」をする)、オープンエンドの質問をする、振り返りジャーナルを書いてもらう、正直な自己評価をしてもらう、発達の最近接領域(ZPD)について教える(https://projectbetterschool.blogspot.com/search?q=ZPD)、成長マインドセットを教え、促進するなどが含まれており、この章で紹介されています。

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