2022年8月5日金曜日

新刊の『不安な心に寄り添う』(クリスティーン・ラヴィシー-ワインスタイン著)では、学校という場で生徒も教師も安心して過ごせるようにするために、教師として意識できるさまざまなことが述べられています。例えば、生徒に対する言葉かけであったり、授業の展開の仕方であったり、生徒の状況に合わせた活動を選択をする時間をつくったりするというようなことです。不安は誰にでも起こりうることなのです。そのことを認めながらも、より安心できる場とはどのような所なのかを考えるための一冊となっています。

これまでの教え方(いわゆる講義型や教科書ありきの授業)では、教師がリードし、教師の意図に沿った授業が多く行われてきました。この授業のスタイルでは、毎回の授業で生徒は何が起きるのかわからず、教師の発問に対していつ指名されるのかという不安に駆られ、自分の興味関心を活かした学びにはなりません。また、定期テストでは点数というもので他人と比較されることが多くなり、自信を失い、生徒によっては「よくできる」と言われることによって、毎回その期待に答えるために不安が増幅して行くことになります。

では、教師としてどのようなことを意識することで生徒の「不安」を軽減できるのでしょうか、『不安な心に寄り添う』からいくつかを取り上げてみようと思います。

・生徒の「声」を聴く。

 時に教師は、自分の経験から、生徒の置かれている状況を勝手に判断して声をかけたり、最悪の場合には強く叱ったりしてしまいます。これは、生徒にとって、話を聞いてもらう機会を与えられず、「不安」が増幅してしまうだけなのです。『不安な心に寄り添う』では、生徒を「よく見て」、生徒の状況を「尋ねる」ことを通して、生徒の「声」を聴くことが不安を抱えている生徒と接する際に大切だと述べられます。

・他人と比較せず、自分のペースですすめることを促す。

 生徒が不安になることの一つに、他人と比較してしまうということがあげられています。定期テストの点数や、評価があることは学校として避けることが難しい課題だと思います。『不安な心に寄り添う』ためには、不安を抱えている生徒に対して、自分のペースで取り組むことを伝えていく必要があるとされます。苦手と感じているものに対しても、自分のペースで進めながら、教師やクラスメイトと話をしながら、学びを進めていくことが大切なのです。そのことで、生徒の不安は和らいでいきます。

・コミュニティーを築く。

 一方通行の授業では、生徒がお互いにコミュニケーションをとる機会がほとんど与えられず、授業というものを通してクラスが一つの目的をも持ったコミュニティーとなることができません。一人でいるということが「不安」や孤立感を生み出してしまうのです。『不安な心に寄り添う』では、孤立感を取り除くために、課外活動への参加を奨励します。これは現在、日本の学校では部活など多くの取り組みがなされていると思います。これに加えて、授業もこれまでのあり方にとらわれず、クラスメイトのみならず他学年や地域などを巻き込んだようなコミュニティーを気づくような授業をおこなうことが孤立感を軽減し、「不安」を和らげると述べられています。

これらは一部ですが、『不安な心に寄り添う』を読んでふと思うことがありました。それは、このブログで取り上げられる「読書家の時間(RW)」や「作家の時間(WW)」の実践と重なる部分が多いということです。

例えば、WW/RWでは、カンファランスで生徒の「声」を聴くことができます。教師は生徒をよく見て、尋ねることでその生徒が必要としているサポートをしていきます。選書や読み方、書く内容など生徒一人ひとり一人にあったサポートができるのです。

さらに、WW/RWでは、自分のペースで自分の興味関心に基づいて読み書きを実際の経験を通して学ぶことができます。単元ごとのテストで比較するのではなく、それぞれが何を読んだか、何を書いたかを紹介しあうことでお互いの個性を認め、お互いから学んでいくことができます。

そして、WW/RWの大きな目的は、書き手や読み手のコミュニティーを築くことが挙げられます。クラスみんなが読み手や書き手になることで、自分たちが読んでいる本や書いた作品についてむ事の話が始まり、ひとつのコミュニティーとしてつながりができていますくはずです。

このように、WW/RWの実践は単に国語科として読むことや書くことの力をつけるだけでなく、学校がより安心で楽しい場となることにもなるのです。つまり、『不安に寄り添う』に述べられることと合わせて考えることで、WW/RWの実践が、多くの生徒にとって本当に必要なものなのだとさらに確信を強めることになるはずです。

タイトルからは一見、国語とは違った視点からの一冊に思えますが、皆様の実践にさらなる意味を与えてくれる一冊だと思っています。(執筆・小岩井僚)

 

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