2021年7月9日金曜日

新刊『静かな子どもも大切にする ― 内向的な人の最高の力を引き出す』

 訳者の一人で、大学で国語科教育法などを教えている島根の古賀洋一さんが以下の紹介文を書いてくれました。

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 グループワークを中心に進む授業や、単元の最後にプレゼンテーションなどの発表活動を位置づけた授業を頻繁に目にするようになりました。その場面を見ていると、「はたしてこれで良いのだろうか」と不安になることがあります。

一つ目は、グループでの話し合いが声の大きな一部の生徒のみで進んでしまい、根拠のない思いつきの発言の羅列に留まったり、考えの深まりがみられなかったりすることです。なかには他の生徒と違う鋭い考えをもっている生徒もいるのですが、そうした生徒の多くは発言しないまま時が過ぎるのをじっと待っています。二つ目は、グループワークや発表活動の際の教師の指導が、声の大きさや目線といった外面の振る舞いに偏っていることです。そこでは「外向的な振る舞いが良い振る舞いである」というメッセージが発信されていて、じっくり相手の考えを聴いたり、それぞれの違いを整理したり、それをもとに更に考えを深めたりするような「内面の活発さ」は、あまり意識されていないように見えます。

これらの場面に共通しているのは、「内向的な生徒(頭の中でじっくり考え、観察力が鋭く、一人でいることを好む生徒)」の価値がクラス内で認識されておらず、本人も自分を価値ある存在だと見なすことができていないということです。これだけでも大きな問題ですが、私たちの3050%は内向的な人であると言われています。また、世界にイノベーションを起こしてきた偉大な人物の多くは、実は内向的な人であったと言われています。クラスでの学びを実り多いものとしていくためにも、世界に変革を起こすかもしれない生徒の芽を摘んでしまわないためにも、私たちは内向的な人への見方を改め、強みを理解し、それを教室でいかしていくための工夫を考えていく必要があります。

『静かな子どもも大切にする―内向的な人の最高の力を引き出す―』には、内向的な人の個性と強み、彼らの置かれた息苦しい状況が生々しく描かれています。また、意欲・態度面の評価やICT活用の視点、生徒と教師・生徒相互の信頼関係の構築方法、教室環境の整え方、グループワークの工夫、教師が「待つ」ことの大切さなど、内向的な生徒が最高の力を発揮できるための多様な方法が紹介されています。本書は、教師がほんの少し工夫するだけで、内向的な生徒が輝けることを教えてくれます。また、他の生徒がそうした強みを学ぶことで、教室の学びが一層実りあるものになっていくことを教えてくれます。

なかでも本書で注目していただきたいのは、「内向的な生徒は配慮すべき弱い存在ではなく、外向的な生徒とは異なる強みをもった存在である」という見方が一貫して強調されていることです。内向的な生徒をいかす方法をいくら学んだとしても、彼ら/彼女らへの見方を変えることができなければ、教師の意識しないところで「外向的な人こそが理想である」というメッセージを発してしまうことになりかねません。それは結局のところ、「内向的な人は弱い存在である」という見方を生徒の内に強化してしまうことにつながるのです。

以上のような内容について、難解な用語や理論ではなく、著者の家族や同僚、生徒とのいきいきとしたエピソードをもとに述べられている点も、本書の大きな魅力です。読者は自身の経験と照らしあわせながら、イメージ豊かに読み進めることができるでしょう。

 

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