ライティング/リーディング・ワークショップにおけるミニ・レッスン。私の知人は、それまで授業の大半をクラス全体に向かって講義していたので、まず「ミニ」という言葉にビックリしたと言っていました。『イン・ザ・ミドル』(三省堂、2018年)の著者アトウェルも、教師になったころは「ミニ」ではなくて「特大の」レッスンを生徒たちに行っていたそうです(In the Middle 第2版 、148ページ)。
たしかに「ミニ」レッスンを導入すると(60分の授業であれば、5分から15分程度の時間を使うことが多いと思いますから)、授業全体の時間のとらえ方、使い方が変わります。
『リーディング・ワークショップ』(新評論、2010年)の著者、カルキンズは「ミニ・レッスンの難しさは、単に教える内容を決めることではなく、教えたことを子どもたちに定着させ、それを将来も使えるようにするためにはどうやって教えたらいいのかを考えることにあります」(『リーディング・ワークショップ』84ページ)と言っています。そしてミニ・レッスンを教えるときに、「導入」「提示」「実際に試す」「つながる」「フォローアップ」という要素を入れるように勧めています。(『リーディング・ワークショップ』84~93ページに、実例をあげて詳しく説明されています。)
実践者が実践を積み重ねるなかで、ミニ・レッスンを「どうやって」教えればよいのか、それぞれに考えていることを感じます。
さて、ワークショップを始めるようになり、「特大」のレッスンをやめて「ミニ」レッスンをするようになったアトウェルですが、当初は、ミニ・レッスンは、読み書きに役立つ有益な知識を生徒に伝える場だと考え、しっかり準備した知識を、しっかりリハーサルして語り、そして、書く時間/読む時間に生徒を送りだしていたそうです(In the Middle 第2版、150ページ)。
そんなアトウェルもミニ・レッスンを行うなかで、知識を単に与える以外に、ミニ・レッスンでは多くのことができることに気づき、ミニ・レッスンでの教え方にも幅がでてきます(In the Middle 第2版、150~153ページ)。
その中で印象に残ったのが、ミニ・レッスンは、生徒が知っていることを共有し、クラスで一緒に、知っていることを確認し、考え、知識を作り出す場であり、クラスで共通の枠組み、語彙、基準、手順を作り出す場でもある(In the Middle, 第2版、150ページ)と考えたことです。
この考えは、その後、『イン・ザ・ミドル』でかなりのページを割いて紹介されている、以下の二つの事例につながっているように思います。
ひとつは「教師が書くプロセスを見せる」と「教師が自分の書いた詩を使って教える」というセクション(166~174ページ)。
もう一つは、過去の生徒の書いた優れたレター・エッセイを集め、生徒が優れたレター・エッセイを分析し、その特徴を名づけていく(305~311ページ)です。
もう一つは、過去の生徒の書いた優れたレター・エッセイを集め、生徒が優れたレター・エッセイを分析し、その特徴を名づけていく(305~311ページ)です。
どちらも時間がかかります。1日で終えるのも無理です。
前者は、最終的にはクラス全体で作成した「よい詩を書くために詩人がしていること」という長いリストになり、生徒のワークショップ・ノートに貼り付けられます。時間はかかりますが、「ほぼすべての生徒が、最初の3か月で最重要なものの一つと認識」するものになり、「このようなミニ・レッスンの効果は計り知れません」と、アトウェルは記しています(173ページ)。
後者からは、「優れたレター・エッセイで批評家がいつも行うことは何か」と「批評家が他にもコメントできることは何か」というリストが生まれます(308~310ページ)。
一度リストができれば、それを翌年以降、印刷して渡せばあっという間に終わる、と、せっかちな私は思ってしまいます。でも、誰かが作り出した知識をただ与えるのではなく、「実際の事例から生徒が見つけ、それを名づけ、今後に使えるリストにしていく」、そんなミニ・レッスンも時には必要なんだと思わされます。
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