「モデル」と思うと、「いい例を見せたい!」という気持ちになったりもします。実際、「読み手のモデル」という目で、自分を振り返ると、「詩が面白い」と初めて思わせてくれた詩、引き込まれて夢中で読んだ本、読めないと思っていたジャンルの本が楽しめたときのこと等々、成功体験に関わる本や出来事にまず目がいきます。
しかし、考えてみると、読み手としての失敗をはっきり示している本や出来事があること、そしてその失敗から学習者に語れることも多いことに、気付きます。
ですから「読み手としての失敗を語れる本も、自分のミニ・レッスンの引き出しにいれておこう」と思います。「なぜ読めないのかということ」を、教師が実感に基づいて語れるミニ・レッスンがつくれるからです。時には、失敗(お薦めできないこと)を使って、お薦めしたい読み方を語るのは、いかがでしょうか?
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以下は私が読み手としての失敗を語れる本です。
私は英語を教えているので、どうしても英語の読み物に目が行きますが、読み手としての自分の失敗が語れるのは、『ナルニア国物語』の最終巻(『さいごの戦い』)の英語版です。★
これは30年以上前にもらった本です。内容どころか、読んだのかどうかさえも覚えていません。開いてみると、見覚えのある自分の字で、分からない単語の下に意味が書き込んでありますから、30年以上前に、読もうとはしたようです。ただ、その書き込みも、半分ぐらいまでしかありませんから、そこからあとは挫折したようです。
30年と少し前の私は、「これじゃあ、読めるはずがないよね」という読み方で読んでいたのがよく分かります。
例えば、『ナルニア国物語』について何も知らずに、いきなり最終巻(『さいごの戦い』を読もうとしています。また、自分のレベルでは読めない本を、時間がかかりながら読んでいたのでしょう。これでは話も忘れるし、楽しくなかったと思います。「1ページ目から、単語を調べて書き込む」という「一つの読み方しか知らなかった」のだろう、ということも簡単に想像できます。
150ページ以上ある本を1ヶ月かけて挫折するのでなくて、まずは「短い本をどんどん読み終わる経験を積んで、少しずつステップを上げていくこと」、「1ページ目を読む前に読み手が行うこと」、「長い本を読むときに助けになること」等々、この「失敗を語れる」本から教えられることは多そうです。おそらく、この本は、私のクラスでは、来年度、比較的早い時期でのミニ・レッスンに登場するのではないかと思います。
★ 手元にあるのはPenguin Books から出ている、C. S. Lewis の The Last Battleで、1956年のものです。なお、 RWに関わってからしばらくして『ナルニア国物語』は7巻とも英語で夢中で読みました。そういう意味では、読み手としての成長も後日、感じられた本でもあります。
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