教員研修には、過去40年ぐらい興味をもち続けていますが、ここ10年ぐらいは多様にある方法(40以上はあります!)のなかで確実に一番効果的かつ効率的だと思うようになっているのがブッククラブです。★
ブッククラブ(読書会)は、その対象が教師だろうと、生徒だろうと、次のような流れで行われます。
①何冊かの本のなかから「これ!」というものを各自が選択し、②事前に読んで、③話し合いに参加し、読み終わった後は、④自分とは同じ本を選ばなかった人たちに向けて本の宣伝(書いて紹介)をします。
最後の成果物をつくる義務があることを、ブッククラブを始める前に示唆しておくのとおかないのでは、結構本の読み方の質が異なる場合はありますから、気をつけてください。自分が何らかのアウトプットをしなければならないことが分かっていたら、それ相応のインプットが必要になりますから当然です。
①選べる本は、参加者の興味関心がもてるものであることは言うまでもありません。子ども対象の場合は、教師や大人の思いこみの選書や、教師対象の場合は、企画者(ないし講師)の思いこみの選書では、参加者がかわいそうです。真に「自分が選んでよかった」と思えるものがあることが、参加者がエイジェンシー/エンゲージメント/コミットメントを発揮しながら参加できる条件です。
②および③は、無理のない範囲で、読み進めます。本の分量/厚さにもよりますが、一回で全部をカバーするよりも、何回かに分けて読み進んだ方が、中身の濃いやり取りができます。また、その過程で人間関係も築けます。
④互いが読み合った本を紹介し合うのは、自分たちが読んだ内容について再確認し、そのいい点を他の参加者に知ってもらう機会です。成果物をつくることで、自分が読んだ内容を再度考える機会が提供されるだけでなく、他の参加者に伝えるために、特に大事な点をまとめる必要もあります。「達成感」を味わう場です。「お祝い」の場というか。雰囲気がよかったなら、次の本を選択して、新しいグループでブッククラブが再度スタートするかもしれません。
教師対象の場合は、③の本に内容についての話し合いをするところは、いくつかの工夫がこらせます。
みんな忙しいので、会える時間を調整する代わりに、オンラインで筆談をするのをおすすめします。これなら、各自が考えたことも(話し合いでは流れて消えてしまいますが)すべて記録に残りますし、話す以上に考えて書きます。メンバー構成によっては、話し合いよりも中身の濃いやり取りも可能です(ここの部分が、他の教員研修の方法よりもおすすめする理由です。相互に濃密なフィードバックが相互にある研修は、そう多くはありませんから)!
可能なら、できるだけ知り合いだけでメンバーを構成しない努力をすることもおすすめします。知った人同士だと、言えること/書けることに限界がある(というか、互いに自己規制をかけてしまう)からです。言いたいことが言えないと、中身の濃い(継続的な)やり取りは期待できません。教師のブッククラブは、基本的に自分の実践をよくするために行いますから、本音で言いたいことが言える(書きたいことが書ける)中身の濃い継続的なやり取りが不可欠なのです!
さらに、ブッククラブは教師が(生徒も!)いろいろな新しいテクノロジーを試してみる機会も提供してくれます。特に教師の場合は、やり取りをして、お互いの実践を少しでもよくすることが目的ですから、授業でも使えるアプリ等を、自分たちのブッククラブでまずは実験してみることができます!
これなら、産休の先生や一時休業している人も、参加しやすいと思いませんか。オンラインで書くやり方なら、時間や場所すら関係ありません!
④の終わり方も、単に成果物を紹介し合って終わりでなく、自分の本ないし他の参加者のアイディアをもらって、実際に自分がとる行動計画を立てるところまでやることもできます。この方が、子どもたちのためになることは間違いありませんので、ぜひ挑戦してみてください。それは、個人レベルでも、チーム・レベルでもできます。
この最後のアクション・プランを立てる要素を組み入れることで、読んで終わり(知識としては知ったが、行動しないの)ではなく、自分たちの常に究極の目的であるよりよい授業や活動を生徒たちに提供することを実現できるのです。
一冊一冊の本は(選書がよければ、なおさらですが)、新しい情報と実践への扉を開いてくれます。一人ひとりの参加者は、本の内容に関連した多様な経験や知識等を提供してくれます。そして、数人(3~5人でのやり取りがおすすめです)でのやり取りは、一人で読むのでは考えられない新しい気づき、発見、そして実践をもたらしてくれます!
★ 逆に、一番効果と効率がよくないのが、研究授業+研究協議アプローチです。効果的な22の研修の方法を紹介されている『「学び」で組織は成長する』(光文社新書)には、これは含まれていません! 確実に、いい授業の普及よりも、悪い(してはいけない)授業の普及に過去何十年も貢献し続けている方法と言えます。そして、指導案がその目玉の一つと位置づけられているように、教師主導の授業の見本のようなものでもあります。
参考: https://www.edutopia.org/article/5-steps-book-studies-teacher-professional-learning
『読書がさらに楽しくなるブッククラブ』
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