2023年11月11日土曜日

子どもたちが自分でジャンルを選択する創作活動 〜先生の先を行く生徒たち?

 「自分が何について書きたいのか」よりも、「自分がどういうジャンルで書きたいのか」の方に心を惹かれる、そんな子どもたちの姿を教室で見ることはありますでしょうか。例えば、ファンタジーを書き続ける子どもは、「ファンタジー」というジャンルが持っている力に惹かれているのかもしれません。自由な世界を作り出し、現実ではあり得ない方法で登場人物を活躍させることができるという、このジャンルの特性から、力を得て、ファンタジーを書き続けているのかもしれません。また、ビデオゲームのガイドを書くことが好きな子どもは、友だちに自分の知識を伝えられることが楽しいのかもしれません。最近読み始めた本『Craft and Process Studies: Units That Provide Writers with Choice of Genre』(3ページ)の中に、上記のような内容を見つけ、たしかに、あるジャンル/タイプの持つ力を見つけてしまった子どもはいるだろうなあと思いました。

 ある4年生の教室でも、自分の書きたいタイプの作品について尋ねると、「パロディ」「(出版されているものの)続編」「実際にあるテレビ番組の自分なりのエピソード」等々が出てきて、先生が「それは自宅で書いているの? それとも学校で?」と尋ねると、子どもたちは「自宅で」と答えるという場面があります(2ページ)。教室外で、教師の知らないところで、実は子どもたちは、熱心な書き手だった、ということもあるようです(3ページ)。そして、自分がのめり込むジャンル/タイプの作品を作り出すことに時間も忘れて熱心に取り組むにもかかわらず、そのような創作活動は、「教室の学び」の中には存在しないように感じる子どももいるようです。「意見文」「回想録」「詩」「フィクション」など、「ジャンル学習」でジャンル別に単元を組んでいても、子どもたちが興味のあるジャンルを全て取り上げていくのは不可能ですから、そこに入らないジャンルは「学習ではない」と感じてしまうのかもしれません。

 この本の著者のグラヴァー氏(Matt Glover)は、「子どもたちが自分でジャンルを選択する」ことを取り入れるメリットとして、以下の6点を記しています(6ページ)。

・本当の目的と読者を選ぶことを後押しする

・子どもたちが、ジャンルの概念をより理解できるようになる

・その分野での学びを加速させ、深める

・書き手としてのアイデンティティを強める

・ジャンル、トピック、読者、目的の4つを一緒に活用する

・生徒を書き手として理解するための大切な情報を教師が知ることができる

 上記で挙げた中の下から二つめ「ジャンル、トピック、読者、目的の4つを一緒に活用する」の好例が紹介されていました。5年生のジェレミー君です。先生がカンファランスで、「読者は誰を考えているの?」と尋ねたとき、以下のような答が返ってきました(15ページ、以下の説明も、全て15ページより)。

 「猫を家族に迎え入れた時のことを書いている。書き終わったら、複写して、猫の保護施設の人に渡すつもり。そうすれば猫の保護施設の人が、そこに来た人に僕の話を渡せるので、猫を家族に迎え入れようと思う人が出てくるかもしれない」

 先生は、カンファランスで読者を決めることについてサポートしようと思っていたようですが、ジェレミー君は先生の遥か先を行っていたようです。

 グラヴァー氏は、猫を家族に迎えた話であれば、あらかじめ単元として予定されている「回想録」というジャンル学習の時に書くこともできる、しかし、「回想録」のような、あらかじめジャンルが指定されている単元の場合、他のジャンルの可能性を考えることはできないことを指摘しています。

 子どもたちが自分でジャンルを選択できる場合、いろいろなジャンルを頭に浮かべながら、自分が伝えたいこと(題材、目的)と読者に最適と思えるジャンルを選択できる、つまり、トピック、目的、読者、ジャンル全てを、統合的に考えられるというのは、大きなメリットになりそうです。

*****

 まだ、この本の全体像は見えてこないのですが、ミニ・レッスンの定番で出てきそうなクラフト(作家が使える技)やプロセス(さまざまな書く段階)の中でも、多くのジャンルに共通するトピックは多く、題材の選択だけでなくジャンルの選択をどのように加えたり、位置付けたりするのかを引き続き考え、また紹介できればと思っています。

★1

Matt Glover著

Craft and Process Studies: Units That Provide Writers with Choice of Genre

Heinemann社より 2020年


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